[国内景気動向]

(1)1〜3月期実質GDP年率4.9%成長、4期連続プラス(5/20) ***

 内閣府によると、1〜3月期の国内総生産(GDP)の速報値は、実質で前期比1.2%増、年率換算で4.9%増となった。プラス成長は、4四半期連続だ。輸出、設備投資、個人消費が堅調で、住宅投資も5期ぶりに伸びた。物価変化を示すGDPデフレーターの上昇率は0.01で、5期ぶりのプラスに転じた。着実な回復を示しているが、ギリシャ危機を発端とする市場の混乱といった下ぶれリスクは残っている。

[2010年1〜3月期GDP
増減率内訳](前期比%)
実質 名目
GDP 1.2 1.2
(年率換算) 4.9 4.9

個人消費 0.3 0.1
住宅投資 0.3 0.9
設備投資 1.0 1.3
政府消費 0.5 1.2
公共投資 −1.7 −1.0
輸 出 6.9 8.1
輸 入 2.3 6.3

 前年同期と比べた実質GDPは4.6%増となり、8期ぶりに拡大した。ただ、ピーク時08年1〜3月期より4.7%少なく、金融危機の後遺症がなお残っている。

 GDPデフレーターの上昇は、野菜や資源の値上がりの影響が大きい。前年同期比では3.0%下落し、4期連続の低下であり、過去最大のマイナス幅となった。

 前期比でみた実質成長率1.2%のうち、内需は0.6%、外需は0.7%の押し上げ要因となった。エコポイント制度などの政策効果と、アジア向け輸出の拡大が寄与した。

 働く人の手取り総額を示す名目雇用者報酬は、前年同月比0.3%減り、6期連続で落ち込んだ。前期比では1.6%増え、8期ぶりに拡大した。


[国際収支]

(1)中国人観光ビザ緩和(5/19) **

  政府は,中国人向け個人観光ビザ(査証)の発行用件を7月1日から大幅に緩和する方針を決めた。富 裕層に限定していた発行対象を、一定の消費力がある中間層にも拡大し、発行地域も内陸部や東北部に広げる。日本の家電量販店や温泉地では、中国人観光客による消費拡大の効果への期待が大きい一方、不法滞在など不安を指摘する声もある。

 外務省は、要件緩和で発行対象がこれまでの約10倍にあたる1600万世帯程度に増えるとみる。通商白書によると、中国では世帯の可処分所得が年5001〜3万5000ドル(約46万〜320万円)の中間層は、08年時点で約4億4000万人おり、全人口の3分の1を占める。

 訪日外国人観光客の拡大は、金がかからない景気対策という側面もあり、政府は16年に全体で2000万人を目指す。


[EU経済]

(1)危機教訓にEU再結束を(5/17) ***

 ギリシャのソブリンリスク(政府債務の信認危機)に端を発したユーロ圏の混乱は、欧州発の記入危機に連鎖しかねなかった。瀬戸際で、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が7500億ユーロ(約89兆円)もの緊急支援を打ち出し、欧州中央銀行(ECB)が「最後の貸し手」として国債の買い入れに動き、最悪の事態は避けられた。

 しかし、危機が収まったわけでhない。ギリシャが財政再建を断行できるか。なにより、EUがこの危機を教訓に、統合の次の段階へ踏み出せるかだ。

 第二次大戦後、欧州統合が進展してきた背景には、経済大国であるドイツの懐の深さがあった。ドイツの譲歩は、欧州統合の原動力となり、結局ドイツの国益にもつながった。

 しかし、今回は、ドイツを先頭とするEUのギリシャ支援がもたつく間に、市場に火が回りギリシャ国債の利回りは急上昇した。緊急支援の額を大幅にかさ上げされてしまった。しかも、ユーロは事実上IMFの参加に置かれた。

 問題は、国民の抗議行動の中で、ギリシャが増税と歳出削減による厳しい財政再建を実行できるかだ。

 不況下の超緊縮は悪循環をもたらす危険があるだけに、極めて狭い道である。ギリシャ危機が飛び火しかねないスペイン、ポルトガルも財政緊縮に動いている。

 巨額の緊急支援は「息つくいとま」を与えたに過ぎず、肝心なのは、露呈したユーロの構造問題を解決することだ。第一に、金融政策は、欧州中央銀行(ECB)の下に一つだが、財政政策はばらばらという問題である。単なる仲間内の圧力を超えて、財政監視の枠組みを強化するしかない。欧州委員会が提案したEU各国予算の事前評価は、一案だろう。

 第二に、ECBの機能強化だ。危機管理のためには、金融監督を含め守備範囲を広げ、日米欧の中央銀行並みの機能を備える必要がある。

 第三に、政治統合への道に再挑戦することだ。通貨統合を機能させるには、金融、財政など経済の収斂だけでなく、政治統合が欠かせない。

 EUの再結束には、ユーロ非加盟の英国の役割も重要だ。キャメロン新首相率いる保守・自民の連立政権は、財政再建が緊急課題である。5年間はユーロに参加しない方針だ。しかし、英国はユーロ圏との連携なしには生きられない。サッチャー流の反EU路線は、もはや通用しない。