[景気動向]

(1)外需頼み、景気回復は緩慢(3/29) ***

 日本の景気は、外需主導で回復している。中国を含む新興国の高成長に支えられ、企業の輸出が拡大している。国内の政策効果も手伝って、生産や収益が増え、設備投資や雇用にも下げ止まり感が出てきた。個人消費も持ち直し、住宅投資も最悪期を抜けつつある。しかし、長引くデフレ(物価の継続的な下落)が響き、実感の乏しい緩慢な回復局面が続きそうだ。

(2)3月日銀短観−大企業製造業、景況感4期連続改善(4/1) ***

 3月の企業短期経済観測調査(短観)は、業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス14となり、前回から11ポイント改善した。4期連続の改善で、改善幅は半年振りの大きさだ。水準は、08年9月のマイナス3以来の高さとなった。新興国経済の拡大を受けた輸出と生産の増加を反映した。

 業況判断DIは、景況感が良いと答えた企業の割合から、悪いと答えた割合を差し引いた値だ。 大企業製造業の業種別で見ると、ほぼすべてがマイナスで、景気低迷から脱していない。しかし、新興国の景気拡大や円安傾向を背景に、自動車が前回比19ポイント改善しマイナス2となった。生産用機械はマイナス40と低水準だが、20ポイントの改善をみせ、景況感の底入れを示した。

 大企業非製造業の業況判断DIは、前回比7ポイント改善のマイナス14となった。業種別では、対個人サービス、宿泊・飲食サービス、小売などが改善した。

 企業収益は改善する見通しだが、大企業製造業の10年度の設備投資計画は、前年度比0.9%減だ。過剰との回答から不足を引いた設備判断DIは25となり、4期連続で低下し、08年12月以来の低水準となったが、なお設備の過剰感は残る 雇用人員判断DIは大企業製造業で17となり、4期連続で低下し、08年12月以来の低水準となった。

[業況判断指数DI]
大企業 製造業 −14(11)
非製造業 −14(7)
中小企業 製造業 −30(11)
非製造業 −31(3)


[景気循環]

(1)回復局面09年春から、所得は伸びず(3/29) ***

 内閣府の公式判定はまだだが、今回の景気回復は09年春から始まったとみられる。前回の回復局面(02年2月〜07年10月)との共通項が浮かび上がる。輸出の貢献が大きく、家計の恩恵が乏しい点だ。

[今回と前回の回復局面の比較]
前回 今回
実質成長率 2.0 3.1
名目成長率 0.8 −0.7
給料の伸び率 −2.0 −3.0
輸出の伸び率 10.1 33.6

 前回は、米国の住宅バブルや過剰消費などが世界経済を牽引した。日本経済は外需主導で持ち直し、デフレ下でも戦後最長の回復局面を享受した。期間中の輸出の伸びは、実質ベースの年率平均10.1%で、設備投資の4.2%や個人消費の1.3%を大幅に上回る。しかし、企業は設備、雇用、債務の3つの過剰の処理を急ぎ、成果の果実が家計に行き渡らず、名目雇用者報酬が期間中に2.0%減少した経緯がある。

 今回も同じような軌道をたどるとの指摘は多い。回復局面が09年4月から始まったと仮定し、09年4〜6月以降の数字を計算すると、輸出の伸びは33.6%と圧倒的に高い。一方、名目雇用者報酬は、3.0%減である。

 前回との相違もある。設備投資の持ち直しが遅れていることだ。企業が、日本経済の先行きに自信をもてないのが理由といわれる。また、前回は為替介入もあり円安が続いたが、今回は円高に振れているのも見逃せない。