[景気動向]

(1)景気「着実に持ち直し」、デフレ・雇用なお懸念(3/16) ***

政府は3月の月例経済報告で、景気の現状について「着実に持ち直してきている」との表現を盛り込み、基調判断を8ヶ月ぶりに上方修正した。設備投資が7四半期ぶりにプラスに転じ、個人消費も持ち直すなど、低迷していた内需に底離れの兆しが出始めたことが背景にある。ただ、消費者物価はデフレの状態にある上、失業率もなお高水準が続いている。

 民間エコノミストからも「輸出、生産の回復が徐々に設備投資に波及する」との指摘があり、設備投資は先行きもプラスが続きそうだ。家計も1月の消費者総合指数は前月比実質1.0%増で、外食や旅行が好調だ。住宅着工もローン減税効果で持ち直してきた。ただ、1月の失業率は4.9%と高水準で、3月の高校・大学生の内定率は8割程度と過去最悪の水準だ。デフレも依然続き、1月の消費者物価指数は、変動が大きい生鮮食品を除く総合指数で前年同月比1.3%低下した。需給ギャップは約30兆円の需要不足(供給過剰)であり、物価の押し下げ圧力は大きい。

 一方で、企業物価指数は原材料価格の高騰で上昇し、川上の価格上昇を川下に転嫁できずに企業収益を圧迫するリスクが現れ始めた。


[景気動向]

(1)公示地価2年連続下落(2/19) ***

 国土交通省が発表した2010年1月1日時点の公示地価は、全国平均で前年比4.6%下落し2年連続で前年を下回った。08年秋からの世界同時不況の影が全国に広がり、下落率は前年の3.5%から拡大した。

 10年の公示地価は全国の住宅地が前年比4.2%下落し、商業地が6.1%下落するなど、商業地の落ち込みが大きい。下落率が大きい10地点のうち、9地点は新橋や銀座など東京都心の商業地だった。住宅地は83年の水準で、商業地は調査開始以来最低で、ピークだった91年の3割以下にまで落ち込んだ。

地域別では東京、名古屋、大阪の三大都市圏が大きく下落した。三大都市圏は、06年から08年までいったん上昇に転じた一方で、地方圏は18年連続で下落した。

住宅地
[2010年の公示地価の変動率](前年比%)
商業地 全用途
全国平均 −4.2 −6.1 −4.6
三大都市圏 −4.5 −7.1 −5.0
地方圏 −3.8 −5.3 −4.2


[金融情勢]

(1)銀行の国債保有126兆円、過去最高(3/14) **

 国内銀行の国債保有が、過去最高を更新している。今年1月末の残高は126兆4千億円と、08年秋の金融危機から1年余りで1.5倍に膨らんだ。資金需要が低迷し、預金を貸し出しではなく、国債に振り向ける傾向が強くなっている。国債相場の安定にはなるが、銀行本来の役割を果たせていないとの指摘もある。一部の地方銀行では、国債保有が増え、金融庁の金利リスク基準を超えた模様だ。

 日銀によると、リーマン・ショック直後の08年9月末の銀行の国債保有残高は83兆4千億円だったが、その後の増加傾向は鮮明となっている。背景にあるのが、資金需要の低迷だ。企業の多くは業績が回復しても銀行借入には慎重になっている。2月の銀行の貸出残高は400兆円と、3ヶ月連続で前年同月を下回った。

 預金は緩やかに増え、530兆円を超えた。預金がどれだけ貸し出しに回ったかを示す預貸率は、75%程度と過去最低水準で、銀行は貸し出しに回せない預金の大半を国債に充てている。国債はリスクが小さいといわれてきたが、国債保有が大きくなると、金利変動の影響が銀行財務に及びやすくなる。金利が急変動した場合に、銀行の財務に与えるダメージを一定の算式で試算する数値が自己資本の20%を超えた銀行には、聞き取りなどを通して改善策を促す。メガバンクは昨年9月末時点で同基準が10%を下回っているが、20%を超えた地銀もあるもようだ。

 10年度の国債発行は、財投債や借り換えも含めて162兆円に膨らむ見通しだ。国債発行残高は09年9末月時点で680兆円だ。10年発行額の4割近くは、郵貯銀行を含めた銀行部門が引き受けることで発行に支障は出ていないが、地銀の一部では国債の買い入れ余力は小さくなってきた。

 債券市場では、同基準が相場に影響を与える影響は限定的とされるが、預金を有望な事業に振り向け経済成長につなげるという銀行本来の役割が弱まっているとの指摘は多い。

(2)新型オペ、資金供給20兆円に倍増(3/17) ***

 日銀は、17日の金融政策決定会合で追加的な金融緩和を決めた。期間3ヶ月の資金を年0.1%の固定金利で金融機関に貸し出す「新型オペ」の供給枠について、現在の10兆円程度から20兆円程度に拡大する。金融市場に出回る資金の量を増やし、やや長めの金利を押し下げる効果を狙う。景気は持ち直しているが、デフレの克服に強い姿勢を示すべきだと判断した。一方、政策金利は、現行の年0.1%に据え置いた。

 現在の新型オペは、週1回実施し8千億円ずつ資金を供給してきた。今後は週2回に増やし、1回あたり8千億円ずつ供給する。

 3月には、企業金融支援特別オペが期限を迎える。特別オペの供給残高(2月末で5兆8千億円)以上の資金を供給し、長めの金利をさらに押し下げる。食料やエネルギーを除いた消費者物価の下落率はなお拡大傾向にあり、デフレ長期化への警戒感が強まっていた。日銀内では、物価下落が企業や家計の行動に悪影響を及ぼすのを避けるために、積極的に動くべきだとの意見が優勢となっていた。新型オペの供給額は2月末で目標だった10兆円にほぼ到達している。やや長めの金利に低下圧力がかかれば、金融機関から借りやすくなり、円高を抑制する効果も見込まれる。

 ただ、物価下落の裏には大幅な需要不足があり、金融政策だけでは力不足であり、政府が中長期的な経済成長に向けた具体案の策定を急ぐように促す狙いもあるとみられる。

 景気情勢については、新興国経済の回復を背景に生産や輸出の増加が続いており、現状判断を「持ち直している」に据え置いた。設備投資や雇用・所得への波及が十分ではなく、民間需要の自律的な回復の動きは弱いとの認識で一致した。


[ユーロ経済]

(1)ユーロ圏財務相会合、ギリシャ支援基本合意(3/16) ***

 欧州連合のユ−ロ圏16カ国は、15日の財務相会合で財政危機に直面するギリシャの資金繰り難に備えた支援策で基本合意した。各国が、緊急時に2カ国間でギリシャに融資する仕組みと見られる。ユーロ圏各国の信用力を後ろ盾に、ギリシャの資金調達を確実にするのが狙いだ。ギリシャのデフォルト(債務不履行)リスクの解消を狙っている。

 ユーロ圏各国は最大250億ユーロ(約3兆1千億円)と見られる支援の総額や方法などの詳細を詰め、25,26両日に開くEU首脳会議で正式に決める見通しだ。ユーロ導入国への支援策は、ユーロの発足以来始めてだ。

 ギリシャは、4〜5月に約200億ユーロの国債償還を控え、市場での借り換えが次の焦点になっていた。巨額の財政赤字によるギリシャの信用不安は、大きな山場を迎えた。ただ、支援策を実施するのは、ギリシャが自力で国際金融市場から資金調達できない場合に限られるのが原則とされる。

 ユーロ圏財務相は、付加価値税率の引き上げを含むギリシャの追加的な財政再建計画を承認した。ギリシャ政府は、財政赤字のGDP比を09年の12.7%から10年に8.7%に下げる計画だ。欧州委員会は、「追加策は野心的な内容で、赤字削減の目標の達成は十分可能」と判断した。