[企業部門]
(1)企業の公的負担率50.4%(6/8) ***
経済産業省は、法人関係税や社会保険の事業主負担など企業の公的負担に関する国際比較調査を発表した。税引き前の純利益などに対する日本企業の公的負担の割合は50.4%で、国際的にも非常に高水準であると、同省は主張している。米英よりも10%程度高い法人税率が全体を押し上げているのが主因と分析した。
全体的な公的負担は、法人税のほか固定資産税などその他の税負担、社会保険料の事業主負担も含めて算出した。各国の公的負担率は、次のとおりである。
日本 50.4% 米国 42.8% 英国 41.6% オランダ 31%
50.4%の内訳は、国税と社会保険料の事業主負担が合わせて31.8%で、地方税は18.6%である。
固定資産税や社会保険料負担が大きいことを、同省は問題視している。法人税負担の純利益に占める割合を見ると、米国は27.8%、英国は22.4%であるのに対し、日本は35.5%だった。
[EU経済]
(1)市場「欧州不振」ぬぐえず(6/8) ***
欧州に対する市場の不振が収まらない。08年秋の米国発の金融危機に隠れる形で、財政の立て直しと金融の安定を先送りしてきたツケが膨らんでいる。当面の標的は、財政の不安が急浮上してきたハンガリーだが、欧州全体の金融機関には経営の透明度の低さを問う声が根強い。
欧州では、銀行のリスクが見えにくいことに不安がくすぶる。ドイツなど各国は、08年の金融危機後に金融機関に対し時価評価の適用除外を認め、国債など保有資産の評価損が表に出にくくなっている。
今年5月の欧州中央銀行(ECB)による、不安を抱えた南欧各国の国債買い取りも、中身が不透明で疑心暗鬼を招いている。先週「ECBはフランスの銀行を救う目的でギリシャ国債を仏銀から買っている」との憶測で、一部の仏銀の不安が逆に高まり、同行の株価が急落した。
ハンガリーを巡る騒動の中で、南欧向け債券を大量に抱える銀行が、リスク回避のため中東欧向けの貸し出しを控えるとの観測も流れ始めた。このため、ECBは銀行の調達支援策を拡大するとの見方が流れている。
米政府は、昨年5月、大手金融機関19社の資産査定(ストレステスト)の結果を公表し、10社の資本不足を認めた。ECBのトリシェ総裁は、欧州でのストレステストが近く終わるとの見通しを示した。しかし、EU主導で進める資産査定や公表の方法は不明だ。米国の金融界では、個別銀行の査定結果を公表しない限り、欧州銀全体に不安が残るとの声が多い。金融安定化のコストも確定しにくい。
一方で、欧州の「金融監督や検査の基準がバラバラ」と懸念が根強い。EUは金融監督の権限を一元化する改革案を検討してきたが、まだ機能していない。
(2)ユーロ危機−くすぶる金融不安(6/11) ***
欧州の財政赤字、金融機関の不良債権問題への市場の不安が収まらない。その背景には、情報開示の不足で、実態が外からわかりにくいという問題がある。不良債権の開示が送れ、抜本処理に時間がかかった日本の90年代にそっくりだ。
米国が昨年5月に個別金融機関の資産査定の結果を公表し、資本不足の金融機関に資本増強を迫り、市場の不安を和らげるのに役立った。欧州連合(EU)も一応、昨年10月に主要22金融機関を対象にした資産査定結果を総額だけ公表したが「最悪の場合、09〜10年で、合計4000億ユーロ(約43兆円)の損失が出るが、資本増強は不要」というものだった。
「不良債権は総額12兆3000億円」と、92年10月、日本の大蔵省(当時)は大手21行の不良債権の総額だけを初公表した。その後も、不良債権の開示基準はたびたび変わり、最終的には10年以上を費やし大手行だけで処理損失は77兆円に達した。当時も海外の投資家やアナリストなどから、不良債権は公表数字よりはるかに多いはずだという疑念をもたれた。そして、「償却しても償却しても不良債権が増える」と当時の銀行首脳を嘆かせたように、デフレ下では処理したはずの不良債権に二次損失、三次損失が生まれた。
今の欧州の例で言えば、ギリシャなどの南欧国債は欧州金融機関にとりまだ正常債権だ。もし、債務繰り延べなど不良債権化すれば、さらに不良債権が膨らむ可能性がある。90年代の日本のように、情報の正確性にいったん疑問符がつけば市場はなかなか納得しない。
日本では、金融庁の厳しい査定と公的資金による資本注入、一部で過剰引き当てといわれるまでの処理をしないと不安は解消しなかった。最近の信頼低下振りを見ると、欧州もそこまで追い詰められてしまったように見える。