[世界経済]
(1)日米欧、国債にマネー滞留(7/27) ***
日米欧で、マネーの滞留が鮮明になってきた。企業や家計の資金需要の弱さに金融機関のリスク回避が重なり、銀行の貸出残高が減少した。余ったマネーが国債へと向かい、銀行の国債保有額が各国とも過去最高の水準にある。中央銀行が大量に資金供給しても、成長分野に行き渡っていない。国債価格の下落で銀行が損失を被るリスクも高まっており、財政悪化の影響が金融機関の経営に連鎖しかねないとの見方も出ている。
日本では、国内銀行143行の5月末の国債保有額が、前年同月比23.5%増の138兆円となった。昨年5月から過去最高を繰り返し更新している。米国は、6月時点で14.6%増の1兆4800億ドル(約129兆円)、ユーロ圏は5月時点で9.8%増の1兆5600億ユーロ(約175兆円)となり、いずれも過去最高の水準にある。
日本では、国内銀行の5月末の貸出残高が前年同月比で2.9%減少した。企業の収益回復にもかかわらず、設備投資の拡大には慎重な姿勢を崩していない。米欧の貸出残高も企業や家計が過剰債務の圧縮を進める中で伸びが急速に低下し、昨秋にはそろって減少に転じた。
欧州の信用不安を受け、銀行がリスクの高い融資に消極的になっているのも見逃せない。その代わりに現金化しやすい主要国の国債を購入している格好だ。
一方、国債購入の増加が銀行の経営を圧迫するリスクもある。日米欧の財政は、リーマン・ショック後にいずれも悪化しており、自国の国債消化に不安が広がれば、価格の下落(長期金利の上昇)につながりかねない。欧州の銀行は、資産査定により国債の保有残高を自主的に開示した。主要10行が保有する南欧3カ国(ギリシャ、スペイン、ポルトガル)の国債残高は合計1540億ユーロにのぼる。財政不安を抱える南欧の国債が値下がりし、銀行の資産内容が悪化するリスクも残る。
[EU経済]
(1)欧州銀、公的資金で増資(7/24) ***
欧州の金融監督当局で構成する欧州銀行監督委員会(CEBS)は、欧州系金融機関91行の資産査定で、7行を資本不足として改善を要請した。これを受け、7行は公的資金などにより資本増強に動き始めた。しかし、査定基準の甘さを指摘する声もある。欧州の金融安定にはなお不透明感が残っており、週明けの市場動向が注目される。
査定は10〜11年に欧州経済がマイナス成長に陥り、債券価格が大幅に下落することを想定し、銀行の自己資本がどの程度低下するかを調査した。スペインで5行、ドイツとギリシャでそれぞれ1行は、普通株などの中核的自己資本比率が6%を下回り、危機的対応力が低いと判定された。資本不足額の合計は、35億ユーロだった。
欧州系の大手銀行の大半が問題なしとされ、資本増強を求められたのはもともと公的管理化に置かれていた問題金融機関だけであった。ドイツでは、査定対象の14行の内、資本不足となったのは政府主導で再建中のヒポ・レアルエステート社のみで、同社は「公的資金の注入が完了すれば、資本不足は解消する」という。
今回の資産査定は、資本不足を認定されるのが10行を超えるなどという事前の観測を大幅に下回る結果となった。だが、欧州の信用不安が解消に向かうかどうかはなお時間がかかるという見方もある。つまり、今回の査定は、ギリシャ国債などで懸念される「満期に全額が返済できない事態」は除外されている。欧州は既にユーロ導入国が国際金融市場から資金を調達できなくなったときに備え、総額で7500億ユーロの緊急融資制度の創設を決定した。それゆえ、債務不履行はありえないというのがEUの言い分だ。だが、査定では、経営基盤が脆弱とされるドイツの州立銀行ですら「問題なし」とされ、査定が甘すぎるとの懸念が投資家の間で高まる可能性がある。