[国内景気動向]
(1)景気、自律回復へ試練(7/5) ***
09年4月からの景気回復が微妙な段階に差しかかった。欧州の信用不安や米中景気の先行き懸念が響き、不透明感が強まっている。輸出の拡大による企業部門の改善にブレーキがかかれば、家計の持ち直しにも水を差す可能性がある。自律回復の実現に向け、外需頼みの日本経済は、試練のときを迎える。
金融危機後の景気回復を牽引するのは、企業だ。急速な円高・株安がその収益を圧迫する可能性が出てきた。
しかし、改善の動きが途切れたわけではない。新興国の成長に支えられ、企業の輸出や生産が伸びる。
収益の拡大が設備投資の再開を促し、雇用や賃金を家計にもたらす。そんな好循環が動き出したのは間違いがない。
贈与税の非課税枠拡大や住宅版エコポイント制度は、住宅投資の底入れ感をもたらしたといえる。積水ハウスの一戸建て住宅の受注額は、2〜5月に前年同期より22%増えた。
問題は、景気回復の持続力だ。ギリシャ危機に端を発した欧州の信用不安は根深い。火消しに追われるEUを尻目に、世界の市場ではユーロ安や株安が進む。
第二に、外需の下ぶれリスクだ。中国では、不動産バブルの膨張を警戒する政府の規制が効き、住宅の買い控えが広がっているという。アメリカでは、株価が9ヶ月ぶりの安値をつけ、6月の雇用者数が前月比で6ヶ月ぶりに減り、米景気の先行きに対する警戒感が広がった。
第3の懸念は、国内の政策効果の一巡だろう。一連の消費刺激策の息切れである。5月の鉱工業生産指数は、3ヶ月ぶりに前月より低下した。政府が、自動車、家電、住宅の「エコ対策」に投じた予算は、減税を除いて1兆2500億円だ。エコカー補助は9月末、エコポイント制度は12月末に期限が切れる。
新興国の潜在的な成長力は強い。その恩恵を享受し、景気持続のカギを握る設備投資や個人消費の回復も維持できるとの見方は根強い。だが、日本には25兆円の需要不足が残り、デフレの解消も11年度以降にずれ込む。
強い経済、強い財政、強い社会保障という3つの方程式を解き、不確実性が増す日本経済は、自律回復を達成できるのか。
[企業部門]
(1)クラウド、世界で連携(7/10) ***
富士通とマイクロソフト(MS)は、インターネット経由で利用者にソフトや情報システムを提供する「クラウドコンピューティング」事業を共同開発する。両者の各国のデータセンターを共同利用し、MSのソフト開発力と富士通の顧客支援体制を組み合わせ、企業への提案力を高める。連携により、先行する米セールスフォース・ドットコムや米グーグルに対抗する。
富士通は、16カ国、約90ヵ所でデータセンターを運営する。富士通は、自社サービスだけではクラウド需要の海外市場の開拓に限界があると判断し、MSとの協業に踏み切った。また、海外のウィンドウズの利用企業を囲い込んでいく。一方、MSは世界各地でクラウド事業を展開しているが、アフターサービスなど顧客支援体制で手薄なため、富士通の協力を得ていく。また、富士通と組めばグローバル展開している日本企業との契約がしやすくなると判断した。
クラウド専業のセールスフォースは、世界で約7万7000社の顧客企業を持ち、日本でも経済産業省や損害保険ジャパンにサービスを提供している。グーグルは、06〜09年に計7000億円規模を投じてデータセンターなどを整備しており、日本のTOTOなどと契約している。
米欧のクラウド事業で実績を持つセールスフォースやグーグルが日本市場で攻勢をかけ、日本のIT大手にとり脅威になっている。09年に160億ドルだった世界のクラウド市場は、14年に555億ドルとなる見通しだ。