[雇用情勢]

(1)給与・労働時間最大の減少(2/2) ***

 厚生労働省による毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)では、09年の労働者1人当たり月間給与総額は、31万5,164円と前年比3.9%減り、前年と比較できる91年以来最大の減少率となった。残業を含めた年間実労働時間も、前年比2.9%減の1,733時間と減少率は過去最大となった。世界的な景気悪化による雇用、所得情勢の厳しさを改めて浮き彫りにしている。

 現金給与総額は、調査開始後で最低の水準となった。残業代などの所定外給与が13.5%減、ボーナスなどの特別給与が12.1%減とともに大幅に減ったことが響いた。実質賃金指数も最大の落ち込みとなり、物価下落を超えるペースで収入が減り、可処分所得が増えない状況を示している。

 景気の先行き不透明感から、産業界では人件費を抑制する動きがむしろ強まっており、働く人にとっては10年度も厳しい情勢が続きそうだ。


[金融情勢]

(1)日銀供給オペ、予定の2割(2/3) **

 日銀が金融機関に国債などを担保に資金を貸し付ける共通担保資金供給オペ(公開市場操作)で、落札額が予定額の約2割にとどまる札割れが生じた。主要オペでの大規模な札割れは極めて異例だ。日銀は昨年12月に導入した新たな資金供給手段(新型オペ)などで、潤沢な資金供給を続け、金融機関の資金余剰感が高まっているためだ。

 札割れがおきたのは、3日から10日まで資金を供給する金利入札方式のオペだ。1兆円の予定額に対し、落札額は2,020億円にとどまり、落札金利は事実上の下限となっている0.1%に張り付いた。

 供給開始日となる3日は、法人税などの納付日で、通常なら金融市場の資金が大きく不足する。しかし、「日銀の金融緩和で資金があふれており、期間が1週間程度の短いお金はいらない」と、金融機関がそっぽを向いた格好だ。

 金融機関の手元資金を示す日銀の当座預金残高は、15兆円前後と12月の追加緩和前の11〜13兆円から増加した。企業や家計の資金需要が乏しく、資金を供給しにくくなっている面もある。


[財政]

(1)国・地方の基礎的財政収支、前年度比2.5倍の40兆円(2/6) ***

 内閣府は、国と地方の財政がどれだけ健全かを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)について、09年度の赤字幅が過去最悪の40兆6000億円になるとの推計値を発表した。赤字幅は、08年度比2.5倍に膨らんだ。政府は財政再建策を早急に示す必要があるが、子供手当ての満額支給など歳出増か策は目白押しだ。財政のやりくりは、厳しさを増す一方だ。

 基礎的財政収支は、毎年の政策に必要な経費を借金に頼らずに、その年の税収などで賄えているかを見る指標だ。借金に依存すると赤字となる。

 09年の赤字が膨らんだのは、景気対策で歳出が増加したのに加え、税収が急減したのが主因だ。名目GDP比の赤字の比率も8.6%となり、99年度の6.0%を上回って過去最悪を記録した。10年度も、赤字幅は33兆5000億円とやや縮小するものの、なお高止まりする。

 11年度以降も、歳出増加要因が相次ぐ。民主党は、昨夏の衆院選マニフェストで、子供手当て(月2万6000円)、農家の個別所得補償制度や高速道路の無料化の完全実施などを掲げた。さらに、高齢化により社会保障費も毎年1兆円程度のペースで増加を続ける見通しだ。財政は、一段と厳しさを増していく。


[環境問題]

(1)政府25%目標、温暖化ガス削減へ行程表(2/2) ***

 2020年までに国内の温暖化ガス排出量を90年比25%減らす目標達成に向け、政府が検討しているロードマップ(行程表)案が明らかになった。25%のうち最低6割の15%分を国内削減で実現し、残りを海外からの排出枠で補う。ハイブリッド車の普及率や太陽光発電の導入目標も示した。しかし、企業や家計の負担は大きく、ハードルは高い。主要排出国が参加する国際合意が実行の前提となる。

 政府は、3月上旬にも、25%目標など国の基本的な対策を盛った地球温暖化対策基本法案を今通常国会に提出する計画だ。行程表は同法案をより具体化した位置づけで、3月にもまとめる。

 工程表案は、25%目標について、省エネなど国内の削減努力で実現する真水の割合を15〜25%と設定している。残りを海外からの排出枠購入や、森林吸収分でまかなう計画だ。

 部門別の削減比率も明示した。産業部門は、90年比で現在までに排出を減らしているため、05年比で12〜19%になる。家庭部門や商業ビルなどの業務部門、運輸部門を「日々の暮らし」分野と位置づけ、大幅な削減を進める。90年比で排出が増えているため、05年比では33〜43%減となる。

 対策例として、省エネエアコンの導入や、高効率給湯器を住宅の80%以上に普及させるほか、新築住宅のすべてに最高基準の断熱性能を持たせることを上げた。太陽光発電では、家庭用で現在の30倍以上の1000万世帯に、工場など産業用では100倍以上の4300万キロワットに引き上げる。

 エコカーでは、ハイブリッド車を新車販売の60〜85%に、電気自動車を5〜15%に普及させる。自動車の燃費についても、2〜4割の向上が必要と分析している。

 エネルギー多消費型産業の省エネや、公共交通機関の利用率向上の必要性も訴えた。 しかし、こうした規制でどの程度温暖化ガスを減らせるかは示せていない。財政難で、補助金や税制優遇も思い切った具体策を打ち出せるかは、不透明だ。関係省庁間で議論を進めるが、産業界との調整など実現には曲折がありそうだ。