[景気動向]
(1)輸出主導の改善(1/27) ***
日本経済は、輸出主導で改善している。09年7〜9月期の実質経済成長率は、前期比年率1.3%成長だ。輸出は、3.5%の押し上げ要因となった。昨年11月の輸出額を見ると、アジア向けは54%を占め、米国とEU向けの合計29%を上回る。金融危機を経て、アジアで稼ぐ姿が鮮明になったといえる。
しかし、回復は弱く、輸出や生産は、ピーク時の8割程度だ。金融と新興市場を除く上場企業の10年3月期の連結経常利益は、ピーク時の4割程度にとどまる。設備投資や雇用を増やすまでにはつながらない。また、デフレや円高や、日本の法人税率の高さが、外需の恩恵で輸出産業が黒字に転換しても、利益が伸び悩む一因となっている。
厳しいのは、内需型産業だ。たとえば、セメントは、過剰生産能力が業界全体で年800万トンだ。総生産能力の3割に達しており、通常稼動に戻るのが難しい。
企業部門には、他にも様々な下押し圧力がかかる。第一の不安は、経済対策の息切れだ。日本自動車工業会は、「エコカー減税と補助金が10年の国内新車販売を90万台押し上げる」と話す。それでも480万台という異例の低水準だ。政策効果が薄れれば、関連業界の痛みも増す。
第二の不安は、資源高と製品安の板ばさみだ。昨年春以降の原油高で原料価格が上がっており、製品価格はデフレの影響を強く受ける。合成繊維メーカーの東レは、09年4〜9月期決算では、繊維部門の営業利益が前年同期比97%減った。値上げは死活問題だが、実現する保証はない。
目先の障害だけではない。温暖化ガスの25%削減や製造業派遣の原則禁止など、現政権は長期間に渡り重い負担を企業に強いる。設備や雇用の海外流出が加速する恐れがある。
企業は、経済成長のけん引役だ。その推進力が弱ければ雇用や所得という恩恵が行渡らない。
[財政]
(1)財政再建、負担論が焦点(1/26) **
政府は、中期的な財政再建策を検討する「中期的な財政運営に関する検討会」の初会合を開いた。中長期の再建目標を示す「財政運営戦略」と、11年度から3年間の予算を制御する「中期財政フレーム」を作るのが狙いだ。焦点は、膨れ上がる社会保障費の抑制や、消費税率引き上げなどの負担論議だ。ただ、夏の参院選を控え、踏み込んだ数値目標を打ち出せるかは不透明だ。
特に、新政権の財政運営にとり大きなポイントとなるのが、中期財政フレームだ。海外でも導入事例は多く、数年間の歳入見通しを立て、それを前提に歳出分野ごとや、所管官庁ごとなどの3〜5年程度の予算枠をあらかじめ定める仕組みだ。毎年の予算編成での歳出膨張圧力を避け、中長期的な視野に立って予算配分を決められる利点があるとされる。現行の予算編成が毎年予算を作る単年度主義なのに対し、実質的に複数年度で組むことになる。
政府は、夏の参院選を前に増加の一途をたどる社会保障費の抑制や、消費税率の引き上げなどの負担論議は避けたいというのが本音だ。
来年度予算では、歳出規模が92兆円を越えたが、税収で賄えるのは4割程度だ。この状況で、実効性がある財政再建策を打ち出すことが出来なければ、金利上昇などを通じ市場からの圧力が強まる可能性もある。