[世界金融情勢]
(1)日米欧「物価目標」割れ続く(1/17) ***
日欧米で、物価が中央銀行の掲げる目安や目標を下回る状況が続きそうだ。各中銀の予測によると、実際の物価が望ましい上昇率に届くのは、11〜12年ごろの見通しだ。金融危機後の需要減退を背景にした物価の下押し圧力が根強いためだ。物価動向からは、緩和的な金融環境は長期化する可能性がある。
日銀は、2%以下のプラスの領域を物価安定の目安としている。欧州中央銀行(ECB)は、2%未満でその近辺を物価安定の定義にしている。イングランド銀行は、インフレ目標を2%に置いている。
先進各国では、危機によりモノやサービスの需要が減退し、物価が上がりにくくなっている。本格的な金融引き締めには、時間がかかる可能性が高い。
日本は、米欧と異なりデフレに直面しているので深刻だ。日銀は、昨年12月「物価のマイナスは許容しない」と克服姿勢を明確にしたが、昨年10月の予想では、11年度まで3年連続の物価下落が続く。景気しだいでは、金融政策の緩和圧力がかかりやすい状況は続きそうだ。
もっとも、中銀の間でも「物価だけをみて金融政策を運営する」考えは薄れてきたとの指摘もある。03〜04年に物価安定化で利上げが遅れ、バブルを引き起こした反省があるためだ。
米国などは、資産価格や金融機関のリスクを見極め、物価が目安を下回る段階でも、予防的な利上げに踏み切る可能性もある。
[中国経済]
(1)中国、09年8.7%成長、目標達成(1/22) ***
中国経済の回復が鮮明になっている。09年10〜12月期の国内総生産(GDP)成長率は、実質で前年同期比10.7%と6四半期ぶりに2ケタ台に乗せ、09年通年では8.7%成長となった。雇用と社会安定の維持に必要とされる8%成長の実現に向け、積極財政と金融緩和という2つのエンジンをふかした結果だ。中国は今年も成長優先の政策運営を続ける構えだ。しかし、こうした姿勢が国内外にひずみも生み始めている。
景気を回復軌道に乗せたのは、政策効果だ。08年11月、中国政府は、世界的な金融危機に対応して総投資額4兆元(約53兆円)の景気刺激策を打ち出した。金融政策も緩和策へと転換した。
09年前半まで、中国政府が盛んに唱えたスローガンが「保八(8%成長を守れ)」だ。中国では、毎年2000万人以上が新たな職を求める。党・政府は、これだけの雇用を作り出すには8%成長が欠かせないと見る。成長率が1%下がれば、100万人の失業者が生まれるとの試算もある。これは、政権基盤の不安定につながる。8%成長は、社会安定のために譲れない一線だ。
広がる一方の貧富の格差を縮める上でも、成長路線をやめるわけにはいかない。都市と農村の収入格差は、3倍以上に広がっており09年も拡大が続いた。現在、中国の貧困層は、1億5千万人に上る。胡主席は、成長を通じた貧困の撲滅で自己の正当性を守ろうとしている。
少々無理をしてでも成長率を押し上げる。そんな政策運営の副作用も顕在化しつつある。人民元相場の上昇抑制、温暖化ガス削減義務の拒否、天然資源の大量買付けなど、成長を優先するあまり、国際社会と摩擦を起こす場面が増えている。
国内でも、金融緩和や元売り・ドル買い介入であふれ出たマネーは、資産バブルやインフレの芽を育てている。安定成長のためには、中国人民銀行(中央銀行)は、18日預金準備率を引き上げ、銀行の過剰融資を抑える構えを示した。
しかし、本格的な金融引き締めに転じれば、成長の勢いをそぎかねないジレンマを抱える。成長持続へ政策運営は正念場を迎える。