[ユーロ圏経済]

(1)ユーロ圏経済、正念場に(2/26) ***

 ユーロ圏経済は、競争力の弱いギリシャやスペインなど南欧諸国が域内経済の足を引っ張り、景気回復が足踏みする「踊り場」の懸念が強まっている。財政赤字拡大でユーロの信任が揺らぐリスクも抱えており、外国為替市場ではユーロが売り込まれている。

 欧州委員会の経済予測では、外需を11月より上方修正したにもかかわらず、投資は大変弱く内需低迷により、全体の成長率を据え置いた。欧州委は、10年1〜3月期から7〜9月期まで3四半期連続で0.2%増と、年率1%にも満たない低成長が続くと想定している。

 景気回復が足踏みする第一の理由は、失業率が10%に上昇し雇用不安が止まらないことだ。カルフールやオペルの大規模リストラが目立ち、雇用情勢の悪化は、個人消費を大きく下押しする。第二に、南欧の構造的問題がある。もともと輸出競争力が弱く、スペインでは不動産のバブルが崩壊し、住宅、建設投資の減少が続き、10年もマイナス成長になる見通しだ。ギリシャも景気の落ち込みで、財政危機に直面し、財政再建が危ぶまれている。

 ユーロ圏の財政赤字のGDP比率は、09年の6.4%から10年には6.9%に上昇する見通しだ。3%以内という欧州連合の安定・成長協定(財政協定)の規準を、ユーロ導入16カ国すべてが上回る異例の事態となる。特に、南欧諸国の国債利回りが上昇しており、金融市場は不安定で、深刻なリスクとなっている。

 ユーロの信任を保ち市場を安定させるには、財政再建を着実に進める必要がある。そのため、歳出削減や増税を迫られ、さらに景気低迷が続く。ユーロ圏が直面しているのは、こんなジレンマだ。

[国際通貨基金(IMF)の成長率見通し]単位%

2010年
ユーロ圏 1.0
日本 1.7
米国 2.7
中国 10.0

世界 3.9


[電力産業]

(1)次世代送電網、米GEが参入(2/25) **

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、日本のスマートグリッド(次世代送電網)(1) 市場に参入する。富士電機ホールディングスと合弁(富士電機が過半出資)で基幹部品のスマートメーター(通信機能を備えた電力計)を日本で開発・生産する。GEは、富士電機と組み、スマートグリッド関連の設備投資を始める日本の電力会社への販売ルートを確保する。日欧米では、2030年までにスマートグリッド関連の累計投資が1兆2500億ドルに達するとの予測があり、巨大市場の争奪戦が始まっている。

 スマートメーターは、家庭や事業所で使う電力の使用状況を電力会社に伝えるための装置だ。電力消費をリアルタイムで把握し、発電量を最適化するスマートグリッドの中核部品であり、グーグル、IBM、シスコシステムズなども参入している。

 日本では、東京電力など電力大手がスマートグリッド関連の設備投資に約1兆円を投じる。20年までに、全国約5000万世帯の電力計がスマートメーターに置き換わる見込みだ。

 スマートグリッドを構築するには、スマートメーターのほか、専用の変圧器やケーブルも必要だ。各国でこれらの事業を手がけるGEは、日本でもメーター以外の関連事業を狙うと見られる。富士電機は、GEとの共同開発で最新技術を取り込み、今後は自社の変電設備などと組み合わせて海外のスマートグリッド市場で受注を目指す。

 日欧米の各国では、地球温暖化防止のため、スマートグリッド導入を計画している。関連投資は、日欧米で1兆2500億ドルに累計で達するとみられる。

注(1)スマートグリッドとは、ITを使い電力の流れを制御する送電網のことである。スマートメーターを家庭や工場に設置し、電線や通信回線を介して電力使用量を把握する。これに合わせて、発電量や蓄電量を調節することで、発電量が不安定な風力や太陽光などの自然エネルギーの比率を高めることが出来る。メータだけでなく、送電網に使われる機器が置き換わるため、世界各地に巨大市場が出来るとみられている。