[景気動向]

(1)日本、回復遅れた1年(12月29日) ***

日本経済は、2010年は回復間の乏しい1年となった。11月の鉱工業生産指数と完全失業率は、いずれも年初より悪化した。円高の進行やエコカー補助金の終了などの政策効果の息切れで年後半の景気が停滞したためで、GDPも08年9月のリーマン・ショック前の水準に戻れない。

日本の鉱工業生産指数は、10年に入り約3%減っている計算だ。米国とユーロ圏は、10年に約4%増えた。韓国も約5%増えている。日本はリーマン・ショック後に生産が大幅に落ち込み、その後の景気回復で米欧より急速な反発を見せた。しかし、10年は後半になり生産が再び停滞し、米欧に水をあけられる結果になった。

背景にあるのが、為替相場の違いだ。通貨の総合的な実力を示す実効為替レートをみると、10年に入りユーロが8.9%、ドルが2.5%下落したのに対し、円は9.4%上昇した。日本の貿易は自国通貨建ての割合が低く、円高の影響を受けやすい。それが生産の停滞にもつながった。

IT関連製品の世界的な在庫調整も逆風となった。日本企業は積み上がった在庫の処理を優先し、生産の抑制に動かざるを得なくなった。内閣府によると、生産全体に占めるIT製品と自動車の割合は、日本が4分の1程度、韓国が3分の1程度で、米欧より高い。韓国は、ウォン安が一定の緩衝材となったとの見方が出ている。

米国の名目GDPは、リーマン・ショック前後の08年7〜9月期の水準を超え、ユーロ圏もほぼ同じ水準に並んだ。日本はまだ4%近く下回っており、回復力の弱さは否めない。

10〜12月期の実質GDPは、5四半期ぶりのマイナス成長に転じる公算が大きい。しかし、11年1〜3月期は、わずかなプラス成長に戻るとの予測が大勢だ。4〜6月期以降も1%前後のプラス成長が続くと見る向きが多い。米中経済の回復が主な背景となっている。 

ただ、円高基調の持続や資源価格の上昇は、今後のリスク要因となりかねない。