デフレが長期化する中、物価の状態が統計から読み取りにくくなっている。日銀は対
応に苦慮しており、ゼロ金利解除のタイミングにも影響が及びそうだ。
来年の消費者物価指数(CPI)の基準改定は、起点を05年から10年に変更する。音楽のダウンロード料を加える一方で、フィルムをはずすなど調査品目を入れ替え、その軽重も調整して直近の家計支出の動きを反映する。問題は、デフレ下ではCPIは基準改定で低下幅が拡大する傾向があることだ。パソコンなど大幅に値下がりした品目は消費増でCPIに占める割合が高まり、CPI全体を押し下げる。各品目の消費の増減は、基準改定時しか反映しないため、下げ効果は5年目の改定時に一気に出る。
CPIが足元の物価指数を反映していないとの疑惑はくすぶる。総務省は公式指標とは別に、前年基準で構成品目の軽重を織り込んだCPIも示している。足元の10月で見ると、09年基準のCPIはマイナス1.0%と05年基準の公式指標より0.4%低かった。
CPIと物価の実態に差が生じれば、ゼロ金利政策の解除時期の判断が難しくなるだけに日銀の危機感は強い。
[米国経済]
(1)米長期金利が急上昇,財政悪化懸念(12/9) ***
8日、ニューヨークの債券市場で長期金利が急上昇した。長期金利の指標となる10年物国債利回りは、前日比0.14%高い3.27%で終えた。オバマ大統領が共和党指導部と大型減税(ブッシュ減税)で合意したことで、財政赤字が拡大するとの懸念が広がっている。景気回復期待から、投資マネーが国債から株式などリスク資産にシフトしている面もある。連動して日本の長期金利も上昇している。
失業保険給付延長など対策の範囲が想定よりも広いこともあり、財政赤字が拡大するとの懸念から、債券を売る(利子率上昇)流れが止まらない。
米長期金利は、連邦準備理事会(FRB)が11月3日に決めた追加金融緩和を織り込む形で2%台半ばまで低下してきた。しかし、需給面でも目先は債券の売却(利子率上昇)を招きやすいとも声が聞かれる。
長期金利の上昇は、住宅ローン金利や企業の資金コストの上昇を招き、景気回復ペースを鈍らせる恐れがある。