[経済成長]
(1)日本経済、世界での存在感低下(8/1) ***
この20年、日本は、緩慢なる衰退を続けている。バブル崩壊後の不良債権処理を長引かせた末、いまだにデフレから抜け出せない。金融危機に見舞われた欧米は、長期停滞を避けようと日本の失敗に学ぼうとしている。世界経済の歴史的転換の中で、日本は失われた20年から脱却できるか。戦後最大の岐路を迎えている。
最大の問題は、日本人の多くがこの危機に危機感を覚えなくなっているところにある。
冷戦終結でグローバル経済が大転換した時代に、日本国内では不良債権処理がもつれにもつれていた。92年8月、宮沢首相が打ち出した公的資金投入は、経済界、大蔵省などに反対され、お蔵入りになる。これが最初のつまずきとすれば、第2のつまずきは、住宅金融専門会社の処理であった。98年10月、日本長期信用銀行の破綻に直面する。金融危機の収拾を巡り、政府内は対立する。竹中金融再生担当相が、金融危機回避の瀬戸際で取ったのは現実主義だった。03年5月、厳格な会計処理で資本不足があらわになった「りそな」に対し、公的資金を注入する。「大きすぎてつぶせないというルールに沿った」と竹中氏は述懐する。りそな救済を機に、株価は反転し、好循環が始まる。
こうして、不良債権処理は13年かかった。日本がもたつく間に、グローバル経済は回転速度を上げていた。
マクロ政策の失敗も大きかった。速水日銀総裁の時代は、ゼロ金利解除をあせり、結局未踏の量的緩和に足を踏み入れた。デフレ脱却に非伝統的手段は当然だが、金利機能が働かない金融政策が日本経済の構造改善を遅らせたのも事実だ。
一方、企業がバランスシート調整を急ぎ、財政の下支えが必要になる中で、繰り替えされる財政頼みは先進国最悪の長期債務残高として積み上げられた。
何より本格的な税制改革を実行できなかったことが、経済の活力と財政の健全性を損なった。先進国最低の消費税率5%と、最高水準の法人税率40%は何を物語るか。これは、政治の怠慢に尽きる。
[消費支出]
(1)LED電球、普及加速(8/7) **
発光ダイオード(LED)電球の普及が加速している。全国の家電量販店での電球販売に占めるLEDの数量比率は、7月に19.7%となり、8月には2割に達する見通しだ。LED電球は昨年7月に本格販売が始まり、3月にシェアが1割を超えたばかりだ。平均価格が年初から2割下がり3000円を切った上、品揃えも多くなり、普及に拍車がかかりそうだ。
LED電球は、現在主力の白熱電球に比べ寿命が約40倍で、消費電力が7分の1程度で済むのが特徴だ。LEDが急速にシェアを高める一方で、白熱電球の7月のシェアは56.6%で1年前から10.2%下落した。電球蛍光灯も9.2%下落し23.7%となり、近くLED電球とシェアが逆転する見込みだ。
普及が進んだ最大の要因は、低価格化だ。7月の平均単価は約2900円で、1月から2割強下落した。100円程度の白熱電球と比べると依然高額だが、交換の手間や消費電力を考慮すると手を出しやすくなってきた。LED電球は金額シェアで7月に64.2%となり、市場の3分の2近くに達している。
家電量販店は、割安な中堅メーカーなどの扱いを増やしている。これらの中小メーカー製は2300〜2500円程度が多く、2000円を切るものもある。
政府は、温暖化ガスの排出削減のため、12年までに白熱電球の生産中止を求めている。東芝が3月にやめたほか、今後大手各社も順次中止する見込みで、LEDがさらにシェアを伸ばすのは確実だ。
(2) 住宅エコポイント、最長1年延長へ(8/6) ***
国土交通省は、省エネにつながる住宅の新築・改修時に商品と交換できるポイントをもらえる住宅エコポイント制度について、12月末までの適用期間を最長で1年延長する方針だ。景気は回復傾向にあるが、先行きは慎重な見方が根強く、継続して住宅市場の活性化と消費喚起が必要だと判断した。
住宅エコポイント制度は、国交省、経済産業省、環境省が共同で取り組んでおり、三省合計で1000億円の予算を組んだ。同制度でもらえるポイントは、省エネ住宅の新築が一律30万ポイント、改修では断熱窓が2000〜1万8000ポイントなどだ。1ポイント当たり、1円分の商品などと交換できる。新築の場合は、昨年12月8日〜今年12月31日に着工したもので、3月8日に受付が始まった。6月だけで発行ポイントは約43億円分を発行するなど、制度の認知が高まりつつある。
省エネ家電の購入時にポイントがもらえる家電エコポイントも、合計約1年7ヶ月に延長した経緯があり、住宅エコポイントも6ヶ月〜1年延長する方向で協議する。ガス給油機「エコジョーズ」など、省エネ給油設備の設置を対象に加えることも検討する考えだ。
[企業部門]
(1)経常益5倍、新興国効果(8/1) ***
上場企業の収益が急回復している。4〜6月期決算は、全産業の経常利益が前年同期比5倍に増加した。新興国需要とコスト削減を支えに、自動車や電機など製造業の回復が鮮明となった。経常利益は08年のリーマン・ショック前の9割の水準に回復している。 だが、円高や欧米の景気動向など懸念材料は多く、下期業績については慎重になる企業が多い。
3月期決算企業の559社を対象に、日本経済新聞社が集計した。株式の時価総額で62%を占める。
リーマン以降の世界不況に直面し、企業はコスト削減を推進し、収益構造がスリム化したところに新興国需要の拡大などで売上高が増え、事業や財務活動などで稼いだ利益を示す経常利益は3兆8000億円と、1年前の5倍に膨らんだ。1〜3月期と比べると46%増だ。経常利益の改善額の60%を電機と自動車が占めた。
[金融市場]
(1)長期金利低下1%目前(8/4) ***
日本の長期金利の低下が止まらず、1%に接近してきた。指標である新発10年物国債利回りは、3日、1.020%に低下(債券価格は上昇)し、連日で約7年ぶりに低水準を記録した。1%を割れば、03年8月以来になる。日本に加え、米欧でもデフレに陥る懸念が浮上し、安全資産とされる国債が買われている。長期金利の低下は、住宅投資や設備投資につながるが、景気の先行き不安から経済の刺激効果は限られそうだ。
米欧では物価上昇率が縮小傾向にあり、日本に続いてデフレに陥る懸念が浮上している。日米欧で共通するのは、巨額の需要不足に直面している点だ。国際通貨基金によると、2010年の経済全体の物やサービスの需要と供給力との差(需給ギャップ)は日米欧でマイナス約1兆ドル(約86兆円)に及ぶ。
金融危機後、米欧では家計や企業が過剰な負債を抱えて新たな需要が生まれにくくなっており、バブル崩壊後の日本型デフレに陥る懸念がくすぶり始めた。市場では、米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和を強化するとの観測が浮上するなど、債券が買われやすくなっている。米国の10年債利回りは3%割れが定着し、ドイツの長期金利は一時よりも上昇しているが統一後の最低に近い水準だ。