[財政]
(1)「日本不信」米欧市場じわり(4/25) ***
米欧市場で、日本への不信感が広がっている。格付け会社フィッチ・レーティングスは、「日本国債の信用が中期的に低下するリスクがある」と警告した。財政悪化に歯止めがかからず、鳩山政権も混迷の度合いを深め、日本の成長に道筋が見えないことに、海外からの視線は厳しい。フィッチのレポートでは「政府債務は拡大する一方で、家計の貯蓄率は緩やかな低下が見込まれる」と指摘した。国債の大量発行の受け皿となってきた国内投資家に余力がなくなれば、日本国債の信用力は中期的に低下が不可避だと結論づけた。日本の政府債務は増加を続け、09年の残高は国内総生産(GDP)の約2倍に拡大した。 米のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)も1月下旬に、日本国債の格付け見通しを「安定的」から「引き下げ方向」に見直した。
金融危機を経て、景気のてこ入れや国家の成長戦略など政府の果たす役割は格段に増した。これまで以上に政策運営の手綱さばきが問われるなかで、日本の政治の機能不全を指摘する声は多い。民主党政権の誕生で新しい政治への期待が高まったが、今は失望しかないとの声は多い。デフレ脱却や財政再建を喫緊の課題と位置付けるべきで、高速無料化や郵政見直しばかりを議論すべきではないといえよう。しかし、骨太の政策立案を期待するには、鳩山政権にはリーダーシップが欠如しており、今のままでは政権が崩壊し、政治的な混乱が長引くだけであろう。
「金融情勢」
(1)日銀、環境融資など支援―成長促進へ新貸出制度(5/1) ***
日銀は、政策委員会・金融政策決定会合で、成長基盤を促す新たな貸出制度の創設を決めた。企業の環境・エネルギー関連事業や研究・技術開発に融資する金融機関を対象に、低利の資金を融資する見通しだ。同日発表した「経済・物価情勢の展望(展望レポ−ト)」では、11年度の消費者物価上昇率の見通しをマイナス0.2%からプラス0.1%に上方修正した。
同日の会合では、政策金利を年0.1%に据え置くことも全員一致で決めた。
日銀が想定しているのは、企業にリスクマネーを供給する金融機関への貸し出し制度だ。白方総裁は「技術革新を促進するような研究開発、科学技術の振興、成長分野として期待される環境・エネルギー事業などが対象となる」と述べた。政策金利並みの低利で、期間3ヶ月を超える長めの資金を貸し出す案が浮上している。貸出残高は、数値目標を設けない方針だ。
日銀は、08年12月から現在の超低金利政策を継続してきた。国債などを担保に期間3ヶ月の資金を0.1%の低利で金融機関に供給する「新型オペ」も導入した。だが、企業や個人への融資につながらないのが問題になっていた。日銀は、新制度の導入で成長分野に資金が流れやすくなるとみている。政府も新成長戦略を策定中で、白川総裁は「そうした動きに弾みをつけたい」と強調した。
一方、中央銀行が資金使途を限定した貸出制度に踏み込むのは難しいとの声も出ている。
[欧州経済]
(1)ギリシャ震源、周辺国に飛び火―欧州信用不安(4/29) ***
ギリシャとポルトガルの長期債務の格付け引き下げを受け、ドイツ政府や国際通貨基金(IMF)などは、ギリシャの支援策を確実に進めるため協議に入った。支援策を大幅に拡充するとの観測も流れた。ただ、負担増に国民の抵抗が強いドイツやギリシャなどの対応が遅れれば、欧州全体の信用度を問う空気が再び強まりそうだ。
米格付け会社S&Pが長期債務を投機的水準に格下げしたギリシャの国債に関して、利回り上昇(債券価格の低下)が止まらない。28日の欧州市場ではギリシャ国債10年物の利回りが一時約13%となり、前日に続きユーロ導入後の最高水準を記録した。一方、安全性が高いとされるドイツ国債の相場は底堅く、両国債の利回り格差が一時約10%に達する異常事態となっている。S&Pは、スペインの1段階格下げも発表した。
28日には、IMFがギリシャ支援に関して「3年間で最大1200億ユーロ(約15兆円)必要」と主張したという報道が相次いだ。現状よりも期間も額も3倍近くにする案を掲げることで、市場の不安心理を鎮める思惑も浮かぶ。
足元は、ギリシャ国債が大量償還を迎える5月19日までに、IMFの支援体制が整うかが焦点だ。なかでも当初の融資枠450億ユーロのうち84億ユ―ロを負担するドイツの動きがカギを握る。国民の約7割が反対との世論調査があるためだ。ギリシャ政府は、来週までにIMFと中期的な財政再建策を練る。
一方で、ギリシャの不安はポルトガルやアイルランドにも飛び火しており、国債の利回りが上昇している。特に、ポルトガルは09年の財政赤字がGDP比で9%超と高く、債務の返済能力に疑念が再浮上した。ギリシャや南欧への対応に手間取れば、回復しかけた欧州景気の下ぶれ懸念が増す。