[環境問題]

(1)国内排出量取引、制度設計政府内で綱引き(4/23) **

 排出量取引は、企業などに温暖化ガスの排出量の上限を設け、企業が自らの排出削減により上限との過不足分が生じた分を売買する制度だ。削減が進まない企業は、余剰が出た企業から排出枠を購入する。

 政府は、2020年までに国内の温暖化ガス排出量を1990年比25%削減する目標達成に向けた決め手と位置づけている。今国会で成立を目指す地球温暖化対策法案にも「1年以内をめどに成案を得る」と明記し、早ければ来年の通常国会に関連法案を提出する方針だ。

 だが、政府に司令塔は不在、環境、経済産業省が別々に制度の検討に着手する。両省は「まず各省で案をまとめ、それから政府全体で議論すればよい」との考えだ。だが、両省案には一長一短があり、一本化は難航しそうだ。

 環境省は、有識者などの意見を聞いたうえで今夏にも独自案をまとめ、政府内での調整に入る考えだ。同省が想定するのは、政府が国全体の総排出量の上限を決め、企業ごとに排出枠を割り当てる総量規制方式だ。

 一方、経済産業省は、エネルギー効率の改善を義務付ける「原単位方式」を議論の中核に据える。同省は総量方式について、生産量が増えれば生産活動を制限せざるを得ないと指摘する。原単位方式は、生産量に関係なく企業に不断の省エネ努力を促せる利点がある。ただ、原単位が改善しても、生産量が増えれば総排出量も増える。経済産業省は、その場合、環境税などを元に基金を設け、海外から排出枠を取得し、不足分を補う構想を持つ。

 政府内の議論には、もともと理念先行との指摘がある。実際に制度を活用する産業界との調整が手付かずのままだ。鉄鋼業界には「強引に導入するならば、排出制減のない海外に生産拠点を移す」との強硬意見もある。温暖化ガス削減には、官民一体の取り組みが不可欠だ。政府内の動きがバラバラでは、25%削減目標の達成もおぼつかない。


[世界経済]

(1)金融規制の論議加速―G7・G20(4/21) **

 米ワシントンで今週後半に開く7カ国財務相・中央銀行総裁会議など一連の国際会議で、金融規制を巡る論議が加速しそうだ。米証券取引委員会が大手金融ゴールドマン・サックスを証券詐欺の疑いで提訴した問題も、新たな論点として浮上してきた。危機対応のための負担金の検討に着手する20カ国・地域(G20)会議の流れに、影響を与えるとの見方が広まっている。

 23日には、新興国も加えたG20の財務相・中央銀行総裁会議を開く。G20会議は、リーマンショック後の世界金融危機への対応で主な舞台となった流れを引き継ぎ、今回も金融規制の再編成が主要なテーマとなる。銀行の破たん処理に費やすコストを銀行から集める負担金について、国際通貨基金(IMF)の報告書を踏まえて議論を始める。

 欧州連合(EU)は非公式財務相会議で、金融機関に特別課税をすべきだとの認識で一致した。課税方式は、金融機関の資産・負債規模に応じたものや、為替など国際取引を対象にする案が出ている。米国では、先の金融危機に費やしたコストを大手金融機関から回収する負担金など複数の案が出ている。G20参加国の中でも、金融機関の傷みの小さい新興国などは負担金導入に慎重と見られる。積極派の米欧との議論がどれだけかみ合うか不透明で、着地点はまだ見えない。

 バーゼル銀行監督委員会が進める銀行資本の質・量を高める新規制や、銀行経営者の報酬体系に制約を設ける案なども話し合う見通しだ。性急な規制強化には慎重意見も残るが、ゴールドマン問題への世論の受け止め方しだいで、規制強化論が勢いを増す可能性もある。

 また、G7会議やG20会議では、回復を示す世界経済の現状を点検し、先進国と新興国それぞれの課題を確認する見通しだ。G20会議では、各国が中期経済予想と政策方針を示し、互いに評価し合うとともに、世界経済の全体図を共有する手法を導入する。


[アメリカ経済]

(1)米政権、金融規制強化に意欲(4/18) **

 オバマ米政権が、金融規制改革に本腰を入れ始めた。上院で改革法案の早期採決に向けた調整が続く中、米証券取引委員会(SEC)は、大手証券ゴールドマン・サックスを証券詐欺罪で訴追した。世論の批判を追い風に、野党や金融界の抵抗を押し切る構えだ。実際に厳格な規制が導入されれば、バブルを助長した金融機関の収益モデルは見直しを迫られる。

 オバマ大統領は、17日、金融規制の強化の必要性を改めて強調した。「金融危機の再発防止へあらゆることをする必要があり、ウォール街の改革と消費者保護のため戦う」と語った。リード上院院内総務(民主)は、ゴールドマン訴追について「だからこそ金融界の改革に向けた強力な法案が必要だ」との声明を発表した。訴追対象のようなデリバティブ(金融派生商品)取引の規制を一段と強化する案も検討に入った。金融界の反対を封じ込め、5月初めにも上院本会議で法案を採決する道筋を探っている。


[EU経済]

(1)EUとIMF、ギリシャに金融支援へ(4/24) ***

 ギリシャ政府は、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF),欧州中央銀行(IMF)に対し、資金支援を要請した。信用不安が収まらず、国際金融市場でのギリシャ国債の安定発行が困難になったと判断した。これにより、EUとIMFは、迅速な対応を表明した。1999年の通貨統合後、初めて参加国を支援するという異例の事態を迎える。

 ユーロ圏16カ国とIMFは、最大450億ユーロ(5兆4000億円)の緊急融資の枠組みで合意している。ギリシャのパパンドレウ首相は、「支援枠組みの発動が不可欠だ」と語った。EUもIMFも「要請により迅速に対応する」と表明した。融資総額の3分の2にあたる最大300億ユーロ拠出するユーロ圏の各国政府は、国会承認の手続きを急ぎ、財政再建の着実な実行などを条件にギリシャを支える姿勢を鮮明にした。

 ロイター通信によれば、ギリシャ政府首脳は「国債の大量償還がある5月19日までに融資を受けたい」と述べた。同日、償還期限を迎える国債は約90億ユーロのため、 第一弾として約100億ユーロが緊急融資されるのではとの見方が出ている。

 ギリシャが支援要請に踏み切った背景には、財政再建策を公表したにもかかわらず、国債の発行条件が悪化したことがある。22日には、09年の財政赤字がGDP比で13.6%と見込みより拡大したことが明らかになり、金融市場での混乱が拡大していた。大口の機関投資家が国債の追加購入を手控えるようになったことに加え、投機筋の取引が活発になり、高金利でないと自力で資金調達できない状況に追い込まれていた。

 支援を受けると、ギリシャ政府は公約した財政再建を着実に実施することが不可避となる。