[景気動向]

(1)日銀短観、景況感2期連続改善(10/1) ***

 日銀が発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス33となり、6月の調査から15ポイント改善した。改善は2期連続だ。新興国など海外経済の回復を背景に輸出や生産の持ち直しが鮮明になっており、3ヶ月先の見通しでは一段の改善を見込む。ただ、雇用や設備の過剰感は解消されておらず、09年度の設備投資計画は過去最大の落ち込みとなる前年度比25%減に下方修正された。

 業況判断DIは、景況感が良いと答えた企業の割合から悪いと答えた企業の割合を引いた値だ。大企業製造業のDIは過去最悪だった今年3月のマイナス58を底に改善が続くが、依然マイナスの域を脱していない。輸出環境の改善と、エコカー減税もあって、自動車はマイナス79からマイナス49に大幅改善した。電気機械も19ポイント上向き、マイナス33となった。3ヶ月先の見通しでは、大企業製造業全体でマイナス21と、今回から12ポイントの上昇を見込んでいる。

 大企業非製造業のDIはマイナス24となったが、前回からは5ポイントの改善にとどまった。雇用・所得環境への不安を背景に消費は弱く、外需に比べ内需の弱さを反映している。中小製造業の業種判断DIはマイナス52と、7期ぶりに改善した。中小非製造業は11期ぶりに改善した。

 景気が持ち直しつつある足元の基調が確認できた一方で、設備や雇用の過剰感は残る。大企業製造業で、設備が過剰との回答から不足を引いた設備判断DIは34で、前回から4ポイントの改善にとどまった。雇用判断DIも7ポイントの改善にとどまっている。

[DIの動き]
今回(前回比) 先行き(今回比)
大企業製造業 −33(15) −21(12)
大企業非製造業 −24(5) −17(7)
中小企業製造業 −52(5) −44(8)
中小企業非製造業 −39(5) −40(−1)


[物価]

(1)物価下げ最大、4ヶ月連続(9/30) ***

 総務省によると、8月の全国消費者物価指数(CPI)は、変動が大きい生鮮食品を除いたベースで100.1となり、前年同月比2.4%低下した。下落率は比較可能な1971年以降で過去最大となり、4ヶ月連続で記録を更新した。昨年のガソリン高の反動に加え、身の回り品の値段も下がっており、物価下落が長期化するとの見方も出ている。

 CPIが前年比を下回るのは、6ヶ月連続だ。食料とエネルギー価格の影響を除いた物価異数も前年同月比0.9%低下しており、石油関連製品だけでなく洗濯用洗剤やティッシュペーパーなど幅広い製品の値段が下がっている。

 生鮮食品などすべての物価を含んだ指数は、前年同月比2.2%低下した。うち、ガソリン価格は31.4%低下し、指数全体を1.01ポイント押し下げた。

 電気代、都市ガス代も下がり、指数をそれぞれ0.16ポイント、0.06ポイント押し下げた。


[企業部門]

(1)8月鉱工業生産1.8%に上昇、6ヶ月連続プラス(9/30) ***

 経済産業省が発表した8月の鉱工業生産指数は84.1となり、前月比1.8%上昇した。6ヶ月連続の上昇だ。鉄鋼や輸送機械などが生産の伸びを牽引している。経産省は、基調判断を「生産は持ち直しの動きで推移」として7月の判断を据え置いたが、なお全体の水準は低いため「注意していく」としている。

 鉱工業生産指数は、世界経済危機により急速に悪化したが、主要国などの需要喚起策を受けて3月に回復に転じ、6ヶ月連続で上昇している。


[財政]

(1)破綻懸念21市町村を認定(10/3) **

 総務省は、4月に完全施行された地方財政健全化法により、地方自治体の08年度決算の健全度を示す指標(健全化判断率)を公表した。財政が破綻状態にある「財政再生団体」に夕張市、破綻の懸念がある「早期健全化団体」に21市町村を認定した。該当する自治体は外部監査を受け、増税や歳出の削減を柱とする財政再建の計画を09年度内に策定するよう義務付ける。公共料金の値上げなど、住民のサービスにも影響を与えそうだ。

 同法は、夕張市の財政破綻をきっかけに整備された。4種類の指標を使い、第3セクターなどを含めた連結ベースで自治体の財政を把握する。そして、上記のように破綻状態にある団体か、破綻の懸念がある団体かを判定する。07年度決算から指標を公表しているが、08年度決算から健全化計画の策定などを義務付ける。

 再生団体の夕張市は、一般会計などの赤字額の割合を示す「実質赤字比率」が約704%と、再生団体入りの基準となる20%を大きく上回っている。

 健全化団体は21市町村あるが、北海道の7市町、沖縄県の3村が目立っている。リゾート事業の失敗など、過大な公共投資で負債を抱えた自治体が多い。47都道府県と18政令市は、基準をクリアした。

 再生団体と健全化団体に認定されたのは、07年度の決算より43市町村減少した。 総務省は「各自治体が健全化に努力した結果」と受け止めている。ただ、人口減少による税収減など、取り巻く環境は厳しさを増している。

 再生団体は、年度内に再生計画を策定し、国と協議し同意を得なければならない。そして、達成度合いに応じ国が予算の変更などを勧告する。

 健全化団体は、年度内に健全化計画を作成し、地方議会で議決し国に報告する。公共事業の中止や増税、公共料金の引き上げなどを検討する。


[中国経済]

(1)中国、来月1日建国60周年(9/28) ***

 中国は、10月1日に建国60周年を迎える。胡指導部は、連日60年間の経済発展や国際的地位の向上をアッピールしている。天安門事件などの負の歴史に触れることはない懸命な宣伝工作からは、今後も一党支配を維持できるか確信をもてない、共産党の強い危機感が浮かび上がる。

 「08年の都市に住む人口は約6億人で、全体に占める割合は1949年の7.3%から45.68%に上昇し、生活水準は根本的に改善した」と、人民日報は60周年の特集号を相次いで発刊し、実績を強調している。外交面でも「中国が国際舞台で果たす役割は、ますます重要になっている」と自負をにじませた。中国にとり、60周年は還暦という節目だけでなく、「共産党と胡主席を持ち上げる巨大な演出の場」という政治的意味を帯びる。

 官僚腐敗、農民暴動、少数民族の反乱・・・などは、現在の中国にとどまらず過去の歴代王朝の衰退を招いた歴史と似通う。

 胡主席も08年12月に「党の執政地位は永遠にあるものではない」との認識を示し、有識者の間では共産党政権の寿命が真剣に語られている。今月に閉幕した党第17期中央委員会第4回全体会議での「永遠に人民の信頼と期待に背かない」という宣言は、党に対する不振の広がりへの危機意識を鮮明にした。

 60周年の「上」からの熱狂ムードの中、国民には冷めた声もある。ネットなどの普及で党主導の宣伝工作の限界もあり、党の求心力回復への道筋は描けていない。