[物価]

(1)価格破壊、新たな潮流(9/24) ***

 景気は最悪期を脱したが、ちまたには低価格品があふれ、物価下落が止まらない。需給ギャップの拡大に加え、プライベートブランド(PB)やインターネットの普及といった構造変化が新たな価格破壊を起こしている。

 リーマンショックから1年経ち、過剰能力を抱えた工場が低価格品を生むほか、地価下落で価格破壊は幅広い分野で進んだ。 今回の価格破壊は、90年代に比べネットの役割が高まった。瞬時に情報が広がり、価格と在庫調整を進める。価格比較サイト「価格・com」の8月の利用者数は、前年同月比43%増の1907万人と伸びは著しい。


[世界経済]

(1)G20サミット、経済政策相互に監視(9/26) ***

 20カ国・地域(G20)首脳会議(ピッツバーグサミット)は、25日午後、米国の消費に過度に頼る世界経済の不均衡を是正するため、各国の経済政策を相互監視する枠組みを創設するとした首脳声明を採択して閉幕した。回復の兆しを見せつつある世界経済をより安定した成長軌道に乗せるため、各国が協調する姿勢を示した。

 声明は、米国の住宅・消費バブルの崩壊を踏まえ、「世界経済のより均衡ある成長パターンへの移行のための協調が必要」と指摘した。各国の経済政策を相互に監視する「強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み」を新たに設け、11月までに始動させる考えを表明した。すなわち、G20のメンバーが経済の不均衡是正のための中期的な政策を設定し、各国の政策が妥当か、目標が達成できているかどうかを評価し、監視する。中国など経常黒字国が内需拡大、米国など経常赤字国が貯蓄率の向上に取り組む。日本も、思い切って内需振興に転換する考えだ。

 金融規制では、銀行の自己資本の質と量を改善することなどで合意した。ルールを10年末までに策定し、12年末までに実行に移すことを目指す。

 G20サミットは、昨年11月、今年4月に続いて3回目の開催だ。声明では、G20サミットを「国際経済協力に関する第一のフォーラム」と位置づけ、今後毎年開催する考えを示した。


[アメリカ経済]

(1)米景気回復へ「家計」関門(9/25) ***

 米連邦準備理制度理事会(FRB)は、「経済活動は上向いてきた」と認めた。財政・金融両面の政策が一定の効果を上げ、アメリカの景気後退は2年弱で終わる可能性が出てきた。ただ、内需の柱である個人消費は不安を抱え、雇用の悪化も続く見通しだ。家計部門の立て直しが関門であり、FRBの低金利政策が長引く公算もある。

 今回の後退局面は、07年12月に始まった。景気後退の終わりの判定には、最終的にさらに時間を要する。これに関連して、バーナンキFRB議長は「後退は終わったと見られるが、景気はしばらく弱い」と語った。判断を前に進めたのは、住宅市場だ。8月の住宅着工件数が前月比1.5%伸び、4月を底に緩やかな回復基調にある。価格などの指標も徐々に明るさが増してきた。8月の鉱工業生産指数も、前月比0.8%上昇した。

 一方、家計の支出は安定しつつあるが、雇用悪化、所得の伸び悩み、低水準の住宅投資、金融の厳しさの4点が懸念材料に上げられる。これは、個人消費が本格回復する環境が整っていないことを反映する。 特に、雇用の不安が大きい。8月の失業率は前月比0.3%高い9.7%となったが、まだ上昇するとの見方が多い。

 FRBは、設備や労働力など、資源の余剰感が大きい状態が続くとも分析している。住宅市場の底入れなどを背景に経済活動が多少活発になっても、余剰設備や労働力で吸収でき、簡単にインフレにつながらないとの見立てだ。そのため、政策金利は、当面現行の年0〜0.25%の水準で据え置く局面が長引きそうだ。


[EU経済]

(1)EUルール、世界を揺さぶる−産業・環境などで独自規制(9/25) ***

 環境、金融などで企業の活動をしばる欧州連合(EU)の独自ルールが、世界を揺さぶっている。5億人の巨大市場を背景に、欧州企業に有利な域内標準をつくり、事実上の国際ルールにする狙いもうかがえる。他国の市場参入を難しくしている面もあり、保護主義に陥りやすいという指摘も出ている。

 家電製品のリサイクル比率を上げるWeee(ウィー)指令、広範な化学物質の使用を規制するREACH(リーチ)規則、消費者に環境対応型の製品を明示するラベル表示などである。EUで相次ぐルールの追加は、コスト要因になる。これらは、域外企業に不利な傾向は否めない。

 また、欧州委員会は、EUで販売される新車にIT(情報技術)を使った事故通報システムの搭載を義務付ける規制を検討中だ。10年の導入を目指すが、EUが定める仕様に対応するには3年程度はかかるというのが日本自動車工業会の言い分だ。搭載が義務付けられると、事前に使用や規格などの詳細な情報を入手できる欧州勢が先行する可能性が高い。

 そして、EU域内の空港を使う航空会社に、12年をめどにCO2の排出量に上限を設定される。上限を超えた航空会社には一定のコストを払って、EU市場で排出量を購入せざるを得ず、欧州路線への参入を手控える会社も出かねない。

 一方で、EUのルールが浸透する現実もある。最近は、中国など新興国がEUに沿って規制を導入する動きも出ているという。

 日米などと調整もせずに域内ルールを次々と定めるEUの政策運営は、域内産業を守るための保護主義と映りかねない。その影響力は小さくない。