[物価・地価]

(1)デフレ懸念再び、7月消費者物価最大のマイナス(9/14) ***

 モノやサービスの価格下落が目立つようになり、デフレ懸念がじわりと頭をもたげてきた。7月の全国消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.2%低下し、過去最大のマイナス幅になった。前年のガソリン高の反動があるものの、不況で、日用品や家電など幅広い商品の価格が下がっている。消費者には好ましいが、企業の採算が悪化し景気を下押しするリスクもはらむ。

 全国の消費者物価指数(CPI)は3月から下落し始め、とりわけデジタル製品の価格競争は激しい。総務省の調査では、7月の価格下落率はノート型パソコンが前年同月比48%、薄型テレビは31%、カメラも31%にのぼる。

 7月のCPIが大きく下がった最大の要因は、前年のガソリン価格高騰の反動だ。CPIの下落率2.2%のうち、約1%分はガソリン価格の影響だ。しかし、食品とエネルギー価格の変動を除いた物価指数も0.9%低下した。今年夏の大手企業のボーナスが2割減るなど、消費者の懐は厳しさを増している。小売店は限られたパイを奪い合うようにして値下げ合戦を繰り広げており、収束する兆しは今のところ見えない。消費者が目にするものの値段は、公表されるCPIよりさらに安くなっているとの指摘もある。統計は実際の購入価格を完全に反映していない。

 1930年代の世界大恐慌時には、日本の物価は(卸売りベース)は2年で3割も下落した。足元ではそこまでではないにせよ、統計数値よりも大きく落ち込んでいる可能性もある。

(2)基準地価下落率が拡大(9/18) ***

 国交省が発表した09年の基準地価(7月1日時点)は、全国の全用途平均で前年比4.4%下落した。下落率は08年の1.2%から拡大した。三大都市圏は、05年以来4年ぶりに下落に転じた。景気低迷で企業のオフィス需要が縮小したほか、リーマンショックで冷え込んだ投資マネーも戻っていない。全国の基準地価の下落は92年から18年連続だ。全国23,000の調査地点のうち、上昇は3地点に留まり、地価下落が全国に広がったことがうかがえる。

 特に、商業地と大都市圏の不振が目立った。商業地の下落率は5.9%と住宅地の4.0%減を上回った。オフィスビルの空室が増えて、賃料が下がり、福岡県では商業地2ヶ所で下落率が30%を超えた。昨年までの反動もあり、三大都市圏では、全用途の平均が6.1%下落し、地方圏の3.8%減より下げがきつかった。

 東京圏では、これまで大きく上昇した銀座や表参道の繁華街で約2割り下落したほか、丸の内のオフィス街も15%下落した。大阪圏では、梅田など大阪市中心部の商業地が約2割下落したほか、神戸市や京都市の住宅地も1割ほど下がった。名古屋圏もトヨタショックの影響で、全用途で振るわなかった。

[09年基準地価の変動率(前年比)](%)
住宅地 商業地 全用途
全国 −4.0 −5.9 −4.4
三大都市圏 −5.6 −8.2 −6.1
地方圏 −3.4 −4.9 −3.8


[財政]

(1)補正凍結3兆円超(9/19) **

 政府が着手した09年度補正予算の一部凍結で、3兆円超の財源が捻出できるとの見方が浮上してきた。政府は、これらを子供手当てなど民主党のマニフェスト(政権公約)実現のための財源にあて、2010年度予算に反映させたい考えだ。

 各省は、10月2日までに所管予算の見直し案をまとめる。政府は、すでに次の3分野の執行停止を決定している。

(1) 自治体向け以外の基金のうち10年度以降の支出分
(2) 官庁や独立行政法人の施設整備費(6千億円)
(3) 官庁が調達する環境対応車と地上デジタル整備費(2千億円)

 このうち、実際に使える財源は2兆円前後と見られている。基金の取り扱いで焦点になるのは、厚生労働省関係と農林水産省関係だ。長妻厚生労働相は。失業者への生活支援を含む「緊急人材育成・就職支援基金」(7千億円)を見直す考えを表明した。農水省の基金事業も7千億円に上っており、民主党は、大規模農家に農地を貸した農家に補助金を出すための「農地集積加速化基金」の廃止を訴えてきた。今後、廃止ではなく縮小にとどまる可能性も出てきた。

 政府は、決定した3分野以外でも1兆円以上の財源を確保したい考えだ。


[EU経済]

(1)ユーロ圏、下期プラス成長(9/15) ***

 欧州連合(EU)の欧州委員会は、09年後半のユーロ圏16カ国の四半期ベースの実質経済成長率が、前期比0.1〜0.2%のプラスに転換するとの見通しを発表した。 08年からの景気後退から脱却し、緩やかな起伏に向かうとの見方を示したが、高失業率 などで回復力はきわめて弱い。

 アルムニア欧州委員は、景気の底入れを宣言する一方、来年にかけさらに景気対策を実 施し、金融部門の健全化を加速する必要があるとの認識を示した。09年のユーロ圏の実 質成長率はマイナス4%と、今年5月の時点での予測を据え置いた。EU27カ国の実質 成長率もマイナス4%で据え置いた。

 景気後退は、2四半期連続で成長率がマイナスになるのが目安だ。ユーロ圏は、08年 4〜6月期から09年4〜6月期まで5四半期連続でマイナス成長だった。

 自動車の買い替え促進などの景気対策が功を奏した独仏は、すでに4〜6月期にプラス 成長に転換した。7〜9月期以降もプラス成長を保ち、域内経済をけん引する。一方、英 国は09年の成長率を下方修正し、スペインは年内いっぱいマイナス成長が続くとしてい る。

 欧州委員会は、ユーロ圏が景気後退局面を脱しても、回復ベースは緩やかにとどまると 見ている。

 第一に、失業率が高止まりし、個人消費を下押しする。7月の失業率は、9.5%と約 10年ぶりの高水準だ。

 第二に、個人消費と並ぶ民需の柱である設備投資が振るわない。7〜9月期の設備稼働率は69.5%と過去最低水準だ。過剰設備と住宅市場の調整が、企業の投資を慎重にさせている。  輸出はアジアの景気回復を背景に持ち直しつつあるが、金融機関による貸し渋りは、企業や家計に影を落とす。欧州中央銀行のトリシェ総裁は、「危機が終わったとはいえない」との見方を示した。

[欧州委員会による実質経済成長率予測]
1〜3月期 4〜6月期 7〜9月期 10〜12月期
ユーロ圏16カ国 −2.5 −0.1 0.2 0.1
EU27カ国 −2.4 −0.2 0.2 0.1


[中東欧経済]

(1) 最悪期脱す(9/15) **

 欧州復興開発銀行(EBRD)のミロー総裁は、「中東欧地域の経済は最悪期を脱した」と述べた。2010年の実質成長率がユーロ圏を上回るとの見方が強まっていることから「緩やかな成長局面に入った」との認識を示した。

 中東欧地域は、08年秋に信用不安が広がり通貨急落に見舞われた。一部ではなお危機再発を懸念する声があるが、ミロー総裁は「各国政府が危機から脱却したことをきちんと示すことが重要だ」と語り、財政・経済情勢を金融市場に説明することが不信感の

 払拭に必要だとした。ただ、「高成長をすぐに回復できるわけではない」と先行きへの楽観論はけん制した。


[ロシア経済]

(1) ハイリスク市場構図残る(9/16) ***

 今夏ロンドン市場で注目を集めた銘柄がある。ロシアの天然ガス独占企業ガスプロムだ。7月に、ロシア企業としては今年最大となる総額25億ドルの社債発行に踏み切った。注目の理由はその規模ではなく、ガスプロム社の社債の取引利回りは、年初に一時ロンドン銀行間取引金利プラス20%とかつてない水準にまで上昇するなど、危機を受けロシア企業を見る市場の目が一変するなかでの発行だったからだ。

 政府系のガスプロムにさえ、ロシアプレミアムともいえる上乗せ金利がつくのには理由がある。年末にかけて、金融危機の第2波が来るかもしれない。ロシアの金融機関の不良債権比率が、現在の11%から年末に20%まで上昇する可能性が高いといわれる。背景には、ロシア企業の返済能力が低下しているにもかかわらず、借り入れ金返済のため資金需要は旺盛なところがある。ロンドン市場でガスプロムにかかわらず社債発行が増えているのはそのためだが、ロシアの金融機関への影響は深刻だ。

 ロシアを代表する民間企業の業績は軒並み悪化し、政府は金融機関に対し企業救済のため追加的な資金供給や債務返済の繰り延べなどに応じるように求めている。しかし、返済が計画通り進む保証はない。

 そんな中、海外投資家が見守っている発行体がある。10年以上行っていなかった海外市場での資金調達を来年再開するロシア政府だ。ロシア財務省によると、想定している調達額は、来年以降3年間で580億ドルに及ぶ。石油価格の下落で歳入が減少し、今年10年ぶりに財政赤字に転落する上、危機対策のため原油輸出代金の一部を積み立て一時は1400億ドルを越えた「準備基金」も来年には底をつくからだ。

 米格付け会社S&Pは、公的債務が大幅に増えれば、ロシア国債を「トリプルB」からそれ以下に格下げする可能性があると発表した。また、ルーブルは年末にかけ、15%下落する可能性があるといわれる。

 経済危機は、投資家にロシアが新興市場の中でも特にハイリスク・ハイリターンの市場であることを再認識させた。その構図が変わる気配はない。