[景気動向]

(1)政府月例報告、雇用悪化に懸念(9/9) ***

 改善傾向にあった景気判断に、一服感が出てきた。政府は、9月の月例経済報告で「雇用の一層の悪化が懸念される」として、景気判断を2ヶ月連続で据え置いた。内閣府の8月の「街角景気」も、判断指数が8ヶ月ぶりに低下した。失業率が悪化している上、天候不順や新型インフルエンザの影響による個人消費の冷え込みが大きな懸案となっている。

 月例経済報告は、5月から3ヶ月連続で上方修正し、6月には景気底打ちも宣言した。4〜6月期の実質国内生産(GDP)が5四半期ぶりにプラス成長に転じたなどのためだ。ただ、その後も雇用情勢の悪化が続き、7月の完全失業率は過去最悪の5.7%に達した。市場では、失業率が来年にかけてさらに悪化するとの見方が強まっている。年内に6%を超えるとの見方もある。生産・輸出は持ち直しているが、生産・輸出の水準は昨秋の7〜8割程度にとどまっており、経済活動は依然として低い水準にある。企業は、なお過剰な労働力を抱えており、失業率の悪化は簡単には止まらない。

 国内景気は、7〜9月期もプラス成長を続けるとの見方が多い。ただ、原動力は、公共投資などの政策効果と、アジア向けなど輸出の改善だ。雇用悪化と消費の低迷が長引けば、国内の民需を軸にした自律回復は遅れそうだ。

[月例経済報告の判断]
個人消費・・・・持ち直しの動き
輸出・・・・・・持ち直している
生産・・・・・・持ち直している
企業収益・・・・大幅な減少が続くがテンポは緩やかに
設備投資・・・・減少している
雇用・・・・・・一段と厳しさを増している


[企業部門]

(1)企業会計、国際基準の採用拡大、日本も準備(9/7) **

 資本市場のインフラの一つである会計ルールに、国際会計基準(IFRS)を採用する国が広がっている。現在、採用済みもしくは一部導入などを決めた国は、欧州など約110カ国に上り、日米も本格導入に向け着手した。投資家にとり、将来、世界の主要企業を一つの物差しで簡単に比べられる魅力は大きい。一方、日本企業にとり新ルール導入に伴うコスト負担が増えるほか、持ち合い株の保有など経営戦略にも大きな影響を与えそうだ。

 同基準採用により、もっとも大きな違いは「包括利益」の項目が導入されることだ。日本基準は、企業の事業活動のもうけを表す「純利益」に着目してきた。一方、国際基準では、会社が保有する資産の時価変動などのストックの利益も反映させる考え方を重視している。純利益にこのストックの増減益(その他包括利益)を反映させたものが、包括利益だ。

 包括利益は、純利益にその他包括利益を加えたものだ。包括利益を重視するのは、純利益が経営者による操作の余地が大きいとされているからだ。たとえば、利益が足りないときは、持ち合い株を売却して売却益を計上し業績目標を達成することもできる。包括利益には、持ち合い株の時価変動が期末ごとに反映され、利益のかさ上げはできなくなる。

 国際基準では、損益計算書のなかの日本規準の「経常利益」の項目はなく、営業損益の次は税引き前利益となる。また、日本規準では、土地・建物の売却損益やリストラ費用は特別損益に計上するが、国際基準ではすべて営業損益に含まれる。

 その他包括利益の項目の一つに、年金の積み立て過不足がある。日本規準では、貸借対照表に計上しておらず、国際基準を利用すればより透明性が高まる。


[金融情勢]

(1) G20、自己資本規制強化で一致(9/8) **

 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が、国際的に活動する主要銀行の自己資本規制を強化する方針で一致した。2010年に決まる新規制は、銀行に経営戦略の見直しを迫る公算が大きく、邦銀は神経をとがらせている。

 ロンドンで4、5日に開いたG20会議は世界の主要行に対し「自己資本の量と質の向上」を求めることで合意した。景気回復が確実になった時点で自己資本規制を強め、金融危機の再発を防ぐのが狙いだ。ここでの量は現在8%以上の自己資本の比率を指し、質は普通株や剰余金などに限った比率を意味する。各国の金融監督当局は、資本の質の高さとして「狭義の中核的自己資本比率」(普通株中心の資本増強)という新基準の導入を検討している。今回のG20会議は、こうした方向性を確認したといえる。

 市場関係者の間では、早くも規制強化に伴う大手銀行の増資シナリオがささやかれてている。一方、リスク資産を絞りこまなければならなくなるなど、自己資本比率の帳尻合わせが貸し渋りになるという懸念もある。


[競争政策]

(1)郵政民営化、曲がり角(9/9) **

 政権交代で郵政改革が転機を迎えている。持ち株会社である日本郵政と傘下のゆうちょ銀行・かんぽ生命保険の株式売却を凍結するほか、持ち株会社下での4分社化の見直しが柱だ。

 与党3党の見直しでは、政府が保有する日本郵政株式と、日本郵政が持つゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式売却が凍結される方向だ。株式売却の凍結は資本関係を維持し、郵便局経営を安定させる狙いだ。しかし、政府の間接的な郵貯銀行の株式所有は、暗黙の政府保証となり民業を圧迫しかねない。

 4分社化の見直しを巡る議論は、時間がかかりそうだ。国民新党には1社に統合する案もあり、民主党とは温度差があるとされる。総務省には2011年の地上デジタル放送移行や通信・放送融合法案づくりで人手不足という事情もあって、早期の法案提出には及び腰で、再来年の通常国会で成立になりそうだ。

 郵便・貯金・保険という郵政3事業を一体的に運営するにしても、成長につながるかどうかは不透明だ。政府関与が強まることで、いっそう経営が縛られる。将来を展望した上で最適な経営形態を探る必要がある。