[財政]
(1)社会保障給付費91兆円(10/23日経) ***
国立社会保障・人口問題研究所は、医療や介護、年金などにかかった社会保障給付費の総額が07年度に91兆4300億円と過去最高になったと発表した。前年度比の伸び率も2.6%と高水準で、高齢化が主な原因である。民主党は、子供手当ての創設や高齢者の医療負担の軽減など手厚い社会保障政策を打ち出しており、給付費がさらに膨らむのは確実だ。
社会保障給付費は、年金、医療、介護、福祉などのために、税金や保険料から支払った費用の総額で、病院での窓口負担や介護施設の利用料などの利用者負担は含まない。
07年度の給付費が国民所得(374兆円)に占める割合も24.4%と前年度から0.54%上昇し、過去最高となった。一方で、国民所得の伸び率は0.3%にとどまった。所得の伸び以上に給付費が膨らむ構図が鮮明になった。高齢者関係の給付費は、全体の69.5%を占めた。分野別で最も多かったのは年金で、52.8%を占めた。次は医療で、31.7%を占めた。
08,09年度も増加ペースは続き、子供手当ての創設や高齢者の医療負担軽減を抱える民主党政権では、給付費は今後膨らむのは確実だ。しかし、そのためには、巨額の税金投入が必要で、安易な国費の投入は、国民にツケをまわすだけになりかねない。
[民営化政策]
(1) 郵政、危険な「官業回帰」(10/21日経) **
日本郵政の西川氏が辞任に追い込まれたことは、郵政が官業への回帰を鮮明にしたことを象徴する。巨大な官業体を温存することは、民業圧迫など副作用も残る。政府の基本方針は、前政権の反動の域にとどまっており、あるべき郵政像を描ききれていない。
政府は、20日の閣議決定された新基本方針に沿って、1月の通常国会で「郵政改革法案」を提出する方針だ。4社体制の見直しや、郵便だけでなく貯金や保険にも全国一律サービスを義務付けることなどが柱となる。完全に具体化するまで2年ほどかかる可能性もある。
しかし、全国一律・一体運営を再び掲げたことで、民営化への歩みは徐々に逆方向に動き出す。過疎地で閉鎖された小規模の郵便局は、一部で再開するだろう。過疎地で郵便局員がじかに貯金や保険を受け付けるというサービスも復活しやすくなる。
その結果依存が高まる可能性がある金融事業のうち、ゆうちょ銀行は08年度に3800億円の経常黒字を稼ぎ出したが、貯金残高は減り収益の先細りが懸念されている。それを大きくしようとすれば、民業とのあつれきは増す。集まったお金の使い道も焦点だ。野放図な運用がまかりとおれば、国民から集まったお金を棄損することになる。 政府が100%株式を持ち続けたままで、効率化は進むだろうか。株主の目線は入ってこず、経営の透明性と効率化を進めるという仕組みがなくなってしまう。
郵政省から郵政事業庁、日本郵政公社、そして、日本郵政へと、民間並みを目指してきた郵政が、時計を再び巻き戻す。「昔ながら」をとり戻す代わりに、失うものも少なくない。
[世界経済]
(1) 日欧米、財政悪化の試練(10/18日経) ***
日欧米の財政悪化が急速に上昇している。金融危機で各国が、大規模な景気対策を実施したためだ。アメリカの09年度の財政赤字は、1兆4137億ドルと1兆ドルの大台を初めて突破した。10年度も1兆ドルを超す赤字の公算が大きい。欧州主要国も、財政赤字が拡大する。特に深刻なのが日本だ。税収が減る一方で、10年度予算の規模は要求段階で過去最大の95兆円超に膨らんだ。消費税の増税を含む税収底上げの議論は、避けて通れない。
国際通貨基金(IMF)の予測によると、米欧は政府債務残高のGDP比が危機発生前の07年の60%台から、14年には100%台へと到達する。先進国ではもっとも借金が多い日本は、07年の約188%から14年は約246%に拡大する見通しだ。9月下旬の20カ国・地域(G20)首脳会議は、財政出動を平時モードに戻し、財政再建に転じる出口戦略作りの扱いを協議した。
しかし、鳩山政権では、予算の歳出削減が難航し、10年度の概算要求では、一般会計ベースでの要求総額が過去最大の95兆381億円に膨らんだ。補正予算の一部凍結で確保した約3兆円も、財政再建ではなく公約実現に充てる方針だ。
IMFは、日本の政府債務残高が19年に個人金融資産(約1400兆円)を上回るとの資産をまとめた。国内のマネーだけで政府の借金を賄えず、海外に頼らざるを得なくなる状況だ。
鳩山首相は、「4年間は消費税を上げない」と封印するが、無駄の根絶が思うように進まなければ、増税の先送りも限界を迎える。