[金融情勢]

(1)CP・社債購入「役割後退」−日銀総裁

 日銀の白方総裁は、14日の金融政策決定会合後の会見で、コマーシャルペーパー(CP)や社債の買い取りについて、「低格付け債を除いて良好な発行環境にあり、政策で支えらている面は後退している」と述べた。金融危機後に導入した企業の資金繰り支援策の一部で、年末の打ち切りを検討する意向を表明した。別の支援策である「企業金融支援特別オペ」も廃止を視野に協議する考えを示唆した。

 しかし、特別オペの存廃では意見が割れた。特別オペは、CPや社債の買い取りと違って金融機関に活発に利用されている。CPなどの担保さえあれば、翌日物の政策金利(年0.1%)と同じ水準で期間3ヶ月の資金を無制限に借りられるためだ。総裁は、短期金利を低く抑えるなど市場の安定確保に大きな効果を発揮してきたと評価した。一方で、CPの利回りが国庫短期証券を下回る逆転現象という副作用が見られると述べた。しかし、政策委員の間では、年度末の企業の資金繰りの万全を期すべきだとの声も残っており、今後は委員間の調整を急ぐと見られる。

 「時限措置の扱いにかかわらず、超低金利や潤沢な資金供給などきわめて緩和的な環境を維持し、経済をしっかり支えていきたい」として、金融緩和の出口については遠いと繰り返した。

 日銀は、14日景気の現状判断を上方修正し「持ち直しつつある」と指摘したが、先行きの不確実性が大きいとの見方は変えておらず、当分利上げはないとの姿勢を今後も強調すると見られる。


[アメリカ経済]

(1) 米財政赤字130兆円(10/17) ***

 米政府は、09会計年度(08年10月〜09年9月)の財政赤字が1兆4,171億ドル(約130兆円)になったと発表した。前年度比3.1倍にふくらみ、初めて1兆ドルの大台を突破した。GDP比で見ると10%に達し、1945年以降で最大となった。大規模な景気対策に加え、景気低迷により歳入が落ち込んだためだ。

 日米欧で同時に深まる財政難は、国債の増発を通じ長期金利の高止まりを招きやすく、各国の中央銀行は景気を冷やしかねない金利上昇への対応を迫られそうだ。

 09年度の米財政は、歳入が前年度比16.6%減の2兆1,046億ドルだった。一方、歳出は財政出動の拡大により18.2%増の3兆5,217億ドルとなった。そして、政府の累積の借入残高は、6兆7,110億ドルとなり、GDP比で47%まで上昇した。米政府は、オバマ政権が発足以降にとった経済対策などの支出は09年度の財政赤字の24%に過ぎないと説明し、責任の大半は現政権にないとの認識を強調した。その上で、景気が回復した際には、財政再建に取り組む姿勢を強調した。

 一方で、景気対策による財政の歳出は10年度も続き、アフガニスタンなどでの戦費も懸念材料になる。さらに、議会で審議中の医療保険制度の改革は、今後10年単位で大幅な歳出増を伴う見通しだ。民需主導の景気回復が実現しなければ、財政の悪化に歯止めがかからない恐れもある。