[国内景気動向]

(1)7〜9月期GDP年率4.8%成長(11/17日経) ***

 内閣府発表の7〜9月期の実質GDPは、速報値で前期比1.2%増、年率換算で4.8%増となった。2四半期連続のプラス成長で、2年半ぶりの高い伸びを記録した。輸出や個人消費が伸び、設備投資も増加に転じた。ただ、国内外の経済対策の効果が大きく、景気持ち直しの持続力には不安が残りそうだ。政府は、物価の下落が続くデフレを警戒しており、09年度補正予算案の具体化を防ぐ。

[7〜9月期の実質GDP
増減率(前期比%)]
GDP 1.2
(年率換算) 4.8

個人消費 0.7
住宅投資 −7.7
設備投資 1.6
政府消費 0.4
公共投資 −1.2
輸出 6.4
輸入 3.4

 実質GDPの水準は、前年同期より4.5%低い。一方、生活実感に近い名目GDPは、0.3%減となった。6四半期連続のマイナスに終わった。

 設備投資は前期比1.6%増で、08年1〜3月期以来のプラスとなった。自動車や商業用建設などが伸びた。個人消費は0.7%増と、2四半期連続で伸びた。エコカー減税やエコポイント制度が効き、自動車やテレビなどの耐久財消費が7.1%増えた。輸出は、大型の財政出動を実施した中国などのアジア向けや米国向けが伸び、6.4%増と2四半期連続で拡大した。

 住宅投資は、7.7%減と3四半期連続で落ち込んだ。公共投資は1.2%減と、経済対策の影響が一服し5四半期ぶりのマイナスとなった。


[物価]

(1)政府「デフレ」を宣言へ(11/17日経) ***

 政府は、日本の物価が持続的に下落するデフレに陥っていると宣言する方向で最終調整に入った。GDP速報値で、国内の物価動向を示す内需デフレーターが51年ぶりの低水準にとどまったためだ。早ければ、20日の11月の月例経済報告に盛り込む。

 7〜9月期の物価動向を示すGDPデフレーターは、前年同期比0.2%上昇した。ただ、国内需要デフレーターは2.6%下落し、1958年7〜9月期の3.9%減以来の大幅な落ち込みとなった。

 内閣府は、デフレを「2年連続で物価が継続的に下がる状態」と定義している。前年同月比で見た全国消費者物価指数(生鮮食品)の低下は、9月まで7ヶ月連続にとどまっているが、国内需要デフレーターの下落幅の大きさなども勘案し、事実上のデフレ状態と判断する。

 政府は、01年3月から06年8月までの月例経済報告で、日本経済がデフレの状態にあるとの判断を示していた。 。


[国内金融情勢]

(1)銀行再編、何を残した(11/20日経) **

 メガ再編の本格的な号砲が鳴ったのは、99年8月の第一勧業、富士、日本興業の3行統合だった。3項首脳が狙ったのは、規模の経済の獲得だ。統合で資本・顧客基盤を拡大できれば、不良債権処理に追われる構図から抜け出せる。欧米のメガバンクのように、巨額のシステム投資に踏み切る体力も培うことが出来る。

 当時の海外を見渡すと、巨大化でシステム投資能力を引き上げ、収益力向上や株価上昇へとつなげていく。こんな競争のルールが、国際金融界では当たり前のように語られていた。

 この大きな潮流を他の邦銀大手も追いかけた。3行統合によるみずほフィナンシャルグループの結成から1年もたたないうちに、住友とさくら、東京三菱と三菱信託も統合を決意した。現在の3メガバンクの原型が出来上がる。

 再編には一定の効果があり、三井住友銀行では、営業経費が合併直前の10年前と比べると7.5%減少し、物件費は半減し、給料などの人件費も約2割減った。

 一方で、規模が大きくなったメリットを顧客に還元しなくてはならない。規模を手に入れた銀行は、今後その生かし方を競い合う局面に入る。


[アメリカ経済]

(1)短期主義、市場から政府へ(11/18日経) ***

 この人物を通してみれば、米企業の経営環境の変わり様が浮き彫りになる。5年前までコカコーラの最高経営責任者(CEO)を務め、今もウォルマート・ストアーズの社外取締役や顧問として米国株式会社の本音を知るダグラス・ダフト氏だ。

 企業は政府の短期主義をもっとも恐れていると、ダフト氏は語る。例えば、金融危機に苦しむ米産業を守る目的で景気対策に盛り込まれたバイ・アメリカン(米国製品優先購入)条項だ。長い目で見れば外国の報復を招き、海外展開に支障が出る。同氏は、かつて別の短期主義に苦しんだからだ。短期の業績予想は、長期的な経営戦略を阻害する。コカコーラのCEOだった同氏が、慣例の業績予想を取りやめたのは02年だ。市場は、四半期決算の行方に注目する投資家であふれ、収益化に10年も要する中国への大型投資を許さないと判断した。

 危機で経済の主役は市場から政府に変わった。銀行や自動車メーカーの救済、政策を総動員しての景気刺激策などだ。今年度の政府支出はGDPの26%と大きな政府といわれたカーター政権時代の20%を大きく上回る。

 市場の短期主義に屈した金融機関や企業は、負債と投資を無理に膨らませバブルと崩壊を招いた。しかし、代わって主役となった政府も短期主義の目を抱えていることを、企業は気づき始めている。

 ダフト氏の懸念は政治がもたらす政策のゆがみだ。政治家は政府管理下のGMを通じ、雇用を増やす事だって出来る。しかし、それは長続きしない。同氏の目には、目先重視の政策が産業構造の転換を遅らせる危うさがちらつく。

 ファンド(基金)を運用するアインホーン氏は、米国の中・長期的な財政破綻リスクを訴え、「任期中の支持を意識するあまり、政府は目先しか考えていない」とする。短期主義の象徴とされたファンドが、今度は長期の視点を武器にばら撒き政策のスキをつく。

 英国も日本も、大型の選挙を来年控えている。政府に忍び寄る短期主義の誘惑も、日英に共通するに違いない。アインホーン氏は、少なくとも日本国債の急落を予想しているが、どうだろうか。