[物価]

(1)景気「回復局面入り」確認(11/7日経) ***

 内閣府は、9月の景気動向指数で、景気が回復局面にあると表明した。生産や輸出の持ち直しなどにより、一致指数が改善し続けているためだ。ただ、雇用や所得環境などは改善しておらず、回復の実感は乏しい。

 企業の生産や出荷などを表す各指標が改善していることを背景に、一致指数(05年=100)は前月より1.3改善し92.5となった。3月から6ヶ月連続改善した。内閣府は、景気の基調判断を前月までの「下げ止まり」から「上方への局面変化」に引き上げた。4ヶ月ぶりの上方修正となる。

 内閣府の定義によると、景気は「悪化→下げ止まり→局面変化→改善」というルートをたどる。局面変化は、景気の山・谷が数ヶ月前にあった可能性が高いことを示す。エコノミストの多くは、谷を今年2,3月と見る。07年11月に始まった景気後退は、リーマンショックをはさみながら1年半で終わったことになる。

 4〜6月期の実質GDPは、5四半期ぶりのプラス成長だ。7〜9月期も2〜3%程度の増加となる可能性が大きい。とはいえ、水準は低い。鉱工業生産はピーク時の8割弱、輸出数量指数も7割弱止まりだ。9月の完全失業率は5.3%で、冬のボーナスも前年から2ケタ減る見通しで、消費が冷え込む懸念もぬぐえない。生産活動は改善しているものの、政策効果を除けば景気は既に横ばい圏との見方は多い。


[物価]

(1)デフレ圧力抑制重要に(11/1日経) ***

 物価が継続的に下落するデフレの回避が、政府・日銀の重要課題になってきた。9月で消費者物価指数(生鮮食品)は、7ヶ月連続のマイナスとなった。98年度から7年続いた前回のデフレ局面と比べれば期間は短いが、賃金の下落や需要不足は当時より厳しいものがある。

 国際通貨基金(IMF)は、物価の下落が2年以上続く状態をデフレと定義しており、日本政府もその見方をほぼ踏襲している。

 日本は、98年度から04年度にかけ深刻な物価下落に見舞われた。政府は、01年3月にデフレを宣言した。02年2月から戦後最長の景気回復局面(07年10月まで)に入ったものの、物価下落から抜け出すにはさらに2年かかった。現在の物価下落はまだ7ヶ月間で、政府もデフレとは公式に認定していない。ただ、物価下落の圧力は、前回の局面より強いといえる。

 内閣府の4〜6月期の試算によれば、実際の需要から潜在的な供給力を差し引いた需給ギャップはGDP比がマイナス7.8%で、年40兆円が需要不足となっている。前回の局面では、99年10〜12月期のマイナス4.8%がピークだった。賃金やモノの動きからも同じことが言える。09年4〜6月期の賃金下落率は、前年同期比4.7%だ。前回のピークだった02年の7〜9月期の3.9%を上回る。金融危機に見舞われた企業が、人員の削減を抑える代わりに賃金のカットで対応しようとしているためだ。

 変動が大きいエネルギーと食料を除いた消費者物価指数は、9月に1.0%低下し9ヶ月連続のマイナスだった。衣料品や家具・家事用品などが2〜3%低下し、パソコンなど2割下がった。世界的な価格競争が前回より激しくなり、商品の低価格化が一段と進むなどデフレ色が目立っている。日銀は、09年度から3年間は物価が下落すると見ており、デフレの定義に該当する可能性もある。

 緊急の財政・金融支援策には限界があり、民需により経済のパイが増える成長戦略こそ重要と指摘する。


[世界経済]

(1)東アジア経済、ユーロ圏超え(11/7日経) ***

 東アジア地域の経済規模が、10年にユーロ圏を初めて上回る公算が大きくなった。けん引役は中国で、日本の同地域のシェアは低下傾向にある。10年には、中国のGDPは始めて日本を超える見通しだ。

 IMFによると、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と日本、中国、韓国の名目GDPの合計額は、09年に12兆668億ドルとなる見込みだ。世界全体に占める比率は21.1%となり、初めて20%台の大台を超える。そして、10年には09年比6.8%増の12兆8873億ドルとなり、ユーロ圏(12兆7133億ドル)を初めて上回る見通しだ。14年には17兆3445億ドルとなり、経済規模は米国(17兆4193億ドル)に接近する。東アジア圏の、存在感は一段と高まる。

 ただ、IMFの見通しでは、東アジア圏の成長は中国が牽引する面が強く、日本の存在感は低下傾向をたどる方向だ。14年には、東アジアのGDPに占める中国の比率は、ほぼ半分を占める見通しだ。