[企業・生産部門]
(1)4月鉱工業生産5.2%上昇(5/29) ***
経済産業省によると、4月の鉱工業生産指数は前月比5.2%上昇し、約56年ぶりの上昇率を記録した。輸出の底入れに加え、在庫調整が進んだことが理由だ。一方、完全失業率は5.0%と、前月比0.2ポイント上昇した。有効求人倍率も0.46倍と、過去最低に並んだ。生産が持ち直しに向かう一方、雇用情勢の悪化は続いている。
鉱工業生産指数は2ヶ月連続の上昇で、製造業の生産活動は上向き始めている。4月の出荷指数は前月比2.3%上昇し、在庫指数は2.7%低下した。同省は、生産持ち直しが業種的な広がりを見せていると分析する一方、生産水準が低いことには留意する必要があるとしている。
失業率が5%台に乗せたのは、03年11月以来である。完全失業者数は前年同月比71万人増の346万人で、増加幅は過去最大だった。一方、有効求人倍率は、求職者一人当たり何件の求人があるかを示す。有効求職者が前月比4.2%増えた一方、有効求人数は7.4%落ち込んだ。製造業だけでなく、成長分野の情報通信や医療・福祉業界でも雇用吸収圧力が弱まっている。
[財政]
(1)09年度の過去最大の補正予算成立(5/30) ***
政府は、危険水域に落ち込んだ雇用の改善を、追加経済対策の中心にすえた。雇用調整助成金の拡充により、失業を食い止めるほか、公共投資の増加により今年度の実質経済成長率を1.9ポイント押し上げる作戦だ。
雇用の受け皿となる介護職員の待遇改善にも、資金を充てる計画だ。一連の対策により、今後一年で40〜50万人の雇用創出を見込んでいる。
多くの民間エコノミストは、経済対策による成長率の押し上げ効果は、09年度で1ポイント前後にとどまると見ており、政府の成長シナリオがどこまで実現するかは不透明だ。失業率も、来年には過去最悪の5.5%を突破するとの見方が多い。
今回の対策では、「エコポイント」により省エネ家電の購入を支援するほか、低燃費車の買い替え補助など消費刺激策が盛り込まれた。大きく落ち込んだ自動車生産を押し上げる施策は、雇用を含めた波及効果が大きい。 ただ、対策効果は、今年度で一巡する。国内景気は戦後最悪のマイナス成長から脱しつつあるが、なお不安定なままだ。追加対策は、将来の負担につながる国債増発でまかなわれた。これまで以上に、実効性が問われる。