3月第1週(3/1〜3/7)(最高3つの*)

メインテーマ: 米失業率8.1%に悪化
その他のテーマ: 法人企業統計、10〜12月期経常益最悪の64%減
政策投資銀行、2,000億円規模出資
企業の資金繰り支援、出融資枠最大3兆円
欧州銀行、損失計上15兆円
欧州・英、0.5%利下げ

[企業部門]

(1)法人企業統計、10〜12月期経常益最悪の64%減(3/5)  ***

 財務省によると、10〜12月期の法人企業統計では、企業の経常利益は前年同期比64.6%減り、5兆533億円となった。減益率は、第一次石油危機時の1974年に記録した過去最悪に並ぶ。売り上げの落ち込みが収益を圧迫し、自動車など多くが赤字に転じた。世界経済の急速な落ち込みで、企業部門は歴史的な危機に直面している。

 売上高は、前年同期比11.6%減で、四期連続の減収減益となった。経常利益は、持ち株会社も含めれば、前年同期比64.1%減った。製造業の経常利益は94.3%減と、過去最も大きい減益率だ。資本金10億円以上の大企業製造業は、3,014億円の赤字と、

 比較可能な1957年7〜9月期以来初めてのマイナスとなった。

 設備投資は17.3%減と7期連続で減少し、落ち込み幅は過去最悪となった。先行き懸念から、企業は追加的な設備投資をためらっている。


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[金融情勢]

(1)政策投資銀行、2,000億円規模出資(3/4) **

 日本政策投資銀行は、公的資金を使って企業に資本注入する「危機対応出資」について、2,000億円程度の規模とする方針を固めた。世界的な金融危機で資本不足に陥った企業の要請に答え、一社当たり数百億円単位の出資を想定している。出資による損失を政府が補填する割合は、現在50%が原則だ。財務状態が悪い場合は最大80%まで補填するが、政府は必要に応じて80%以上に高めることも検討する。

 危機対応出資は、多額の赤字を計上し自己資本を損なった企業が対象だ。企業は3年後の収益回復などを盛り込んだ事業計画を提出し、政府による産業活力再生法の認定と政策投資銀行の審査を経て出資を受ける。

 政府は、同制度の創設を盛り込んだ産活法改正案を今国会で成立させ、08年度内に始動させたい考えだ。


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(2)企業の資金繰り支援、出融資枠最大3兆円(3/6) ***

 政府は、企業の資金繰り不安を防ぐため、公的資金を使った09年度の「危機対応業務」の資金枠を拡大する。

 当初予算で年1兆円としたのを、低利融資と出資で最大3兆円まで増額する案を軸に検討し、追加経済対策に盛り込む。すでに実施している低利融資やコマーシャルペーパー購入とあわせ、資金繰り支援は2年間で最大6.5兆円に達する。

 金融危機対応の資金繰り支援策は、政府が昨年12月に発動した。政府系金融機関の日本政策投資銀行を通じて公的資金を指定金融機関に供給し、企業へ低利融資をする仕組みだ。同銀行に年1兆円の低利融資枠と、年2兆円のCP購入枠を設けた。そして、融資枠が不足した場合、財務省の判断で予算額を最大1.5倍まで拡大できる弾力条項を発動して、年1兆円の資金枠に最大で5,000億円を追加する方針だ。

 政府は、さらに09年度当初予算で1兆円としている危機対応の出融資枠を、補正予算案で2兆円に倍増させる。年度末までに枠が不足すれば、最大で年3兆円にまで広げる。この結果、CP枠と合わせた2年間の資金繰り支援額は、6.5兆円になる。


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[アメリカ経済]

(1)米失業率8.1%に悪化(3/7) ***

 アメリカ労働省の2月の雇用統計によると、失業率は前月より0.5ポイント高い8.1%となり、83年12月の8.3%以来、約25年ぶりの水準に達した。非農業部門の雇用統計は、前月比65万1千人減少した。昨年12月が68万1千人減に修正され、同月が約59年ぶりの大幅な落ち込みだったことも明らかになった。

 雇用者数の減少は、14ヶ月連続だ。内外需の不振と金融不安の連鎖で、アメリカ雇用情勢は戦後最悪のペースで悪化が続いている。雇用減は、昨年1月からの合計で約440万人に達した。このうち、半分以上は昨年11月以降の4ヶ月間に集中しており、毎月60万人を超すペースで雇用が失われている。


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[欧州経済]

(1)欧州銀行、損失計上15兆円(3/3) ***

 金融危機が欧州銀行の収益を直撃している。欧州の主要銀行の08年決算は、14行中6行が最終赤字で、残る8行も実質的に減益だった。保有有価証券の値下がりで計上した1,560億ドル(15兆円強)の損失が利益を圧迫した。本業の融資でも中・東欧向けなどの悪化が著しく、収益回復には時間がかかりそうだ。

 保有資産の損失計上が最大だったのは、スイスのUBSだ。信用力が低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)などで、317億ドル(約3兆円)の損失を処理し、07年に続く2年連続の最終赤字となった。スイス政府から約5,000億円の公的資金の注入を受けた。

 14行の最終損益を合算すると400億ドルの赤字で、前年の884億ドルの黒字から悪化した。経営環境の悪化は、保有する有価証券の減損処理など市場関連だけでなく、貸出債権の引当金増加など実体経済の落ち込みを移したものにも広がっている。

 欧州では、高成長の中・東欧でリテール事業を広げてきた銀行が多い。しかし、経済危機により、中・東欧ビジネスは一転して収益の重しになる恐れがある。

 各行の業績は、昨年10〜12月期に大きく悪化したところが多く、年明け以降も収益の落ち込みに歯止めがかかっていない。業績悪化で銀行が既存の融資の回収を急いだり、新規融資の絞り込みに動き出したりすれば、欧州景気を一段と冷え込ませかねない。


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(2)欧州・イギリス、0.5%利下げ(3/6)  ***

 イングランド銀行(英中央銀行)と欧州中央銀行(ECB)は、いずれも政策金利の0.5%引き下げを決定した。さらに、イングランド銀行は、国債などの購入を通じて市場に資金を長期間、大量供給する量的緩和策の導入を決めた。信用収縮を和らげることで、景気悪化に歯止めをかける狙いだ。日本を含めた主要中央銀行の政策金利は、歴史的な低水準となる。

 利下げ後の政策金利は、イギリスが年0.5%、ユーロ圏が年1.5%で、いずれも過去最低水準だ。 イングランド銀行が、利下げと同時に決めたのは、今後3ヶ月間で約750億ポンド(約10兆円)の資産買い取り枠を設定し、その大半を英国債の購入に当てる量的緩和策だ。政策金利がゼロに近づき、利下げの効果が弱まっており、軸足を資金供給量へ移す。

 イングランド銀行の利下げは、昨年10月から6ヶ月連続で、下げ幅は計4.5%に達した。銀行が企業や家計に貸し出しを抑え、設備投資や消費が低迷する厳しい信用収縮が続いている。そのため、資金供給量と与信の増大を目的とする金融政策が実施された。


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