[財政]

(1)骨太09決定−改革後退(6/24) ***

 政府は、臨時閣議で「骨太方針2009」を決めた。財政再建目標は先送りし、社会保障費の歳出抑制方針を撤回するなど後退した。成長力を高める規制改革なども踏み込み不足である。構造改革路線の修正を色濃く映し出した。

 社会保障費の2200億円の抑制は、小泉政権による「骨太方針06」から守ってきた目標だ。実際に達成できたのは07年度予算のみで、事実上の棚上げ状態であった。それでも財務省は特別会計の資金で穴埋めするなど、形の上では踏みとどまってきた。しかし、来年度予算で完全に撤回されることになった。

 成長の基盤作りに向けた青写真も描ききれなかった。たとえば、アジアなど各国との経済連携協定(EPA)は、成長力を保つために重みを増すが、進展はなかった。有望分野と期待される医療・介護では、3年で30万人の雇用創出を盛り込んだが、参入規制の緩和など具体策には踏み込めなかった。

 しかし、選挙後に紙切れとなるかもしれない骨太に力を傾ける必要は乏しいとの声もある。

 骨太09では、財政再建目標も仕切り直しとなった。国と地方の借金を減らし、GDP比を20年代初めには安定的に引き下げるとした。そして、基本目標としてきた基礎的財政収支の11年度までの黒字化を断念した。とりあえず、13年度までに赤字のGDP比を半減との目標に差し替えた。しかし、その道も険しい。目標達成には、消費税を11年度から段階的に7%は引き上げる必要がある。この内閣府が示した財政試算を危ぶむ声もある。前提の名目成長率3%は高すぎ、消費税の道筋は見えず、歳出削減も進まない。目標の実現可能性は高くない。


[規制緩和]

(1)日本郵政、民営化に試練(6/25)  **

 日本郵政が「かんぽの宿」の売却などについての改善報告をまとめ、一連の騒動は一息ついた。しかし、不採算事業を抱えたまま、株式上場への業務改革や経営合理化への取り組みは停滞も予想される。西川社長を支える体制も弱体化する方向だ。郵政は民営化路線を保てるのか。

 総務省は、「かんぽの宿」問題を追求する中で、経営体制批判へと微妙に矛先をずらしてきた。視線の先には西川社長の退任があった。続投で押し切る日本郵政は第三者による「グループ経営諮問会議」と「会長職」の設置という答えを返した。

 旧郵政官僚の間には、西川社長と直接話ができないとの不満がくすぶっていた。ただ、小泉政権時代に鳴り物入りで発足した西川体制だけに、その否定は民営化の否定と無縁ではない。体制見直しが経営革新につながればよいが、旧郵政官僚が巻き返すようなことになれば、更なる混迷も予想される。

 日本郵政が抱える膨大な事業の見直しにも懸念が残る。かんぽの宿は売却すら困難になったというのが、郵政内で一致した見方だ。11年度の黒字化を掲げるものの、今年度25億円を計上する見通しの赤字事業の負担が続く。かんぽの宿は、民営化前に2400億円の巨費を投じて整備された。いわば、官業による負の遺産だ。各地の郵便局に割高な賃借料を払い続けることも似た構図だ。昔ながらの運営を改めるという民営化の目的がどんどん遠のいていく。

 郵便、銀行、保険という本来の郵政事業も回り道を余儀なくされる。10年度にも目指すゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の上場や、日通との宅配便事業統合など、民営化で踏み出した事業にも黄信号がともる。企業価値を高めて株式を公開するという民営化のメリットを、国民が享受する青写真もかすみかねない。