[景気動向]

(1)政府、景気底打ち宣言(6/18) ***

 政府は、6月の月例経済報告で、景気の基調判断を2ヶ月連続で上方修正した。一部に持ち直しの動きがみられるとして、7ヶ月ぶりに悪化の表現を削除した。生産や輸出の持ち直しを受けて、主要先進国の中で最も早く「景気底打ち(悪化を続けていた景気が上昇局面に転じた状態)」を宣言した。

 底打ち判断の主因は、生産の持ち直しだ。企業の生産活動を示す鉱工業生産指数は、4月に前月比で5.9%上昇し、56年ぶりの高い伸び率を記録した。与謝野財務・金融・経済財政相は、輸出・生産は明らかに1〜3月が底だったとしている。内需の柱である個人消費も、エコカー減税の効果などで、4月以降は自動車の新車販売台数が前月比で増加に転じており、一部に下げ止まりの兆しとして2年ぶりに上方修正した。実質成長率が戦後最悪のマイナスを記録するなど、深刻な打撃を受けたが、約半年で最悪期を脱したことになる。

 ただ、生産・輸出とも、水準自体は昨年秋の7割程度に過ぎない。雇用と生産設備の過剰感は強く、民間需要の柱の一つである設備投資は、「大幅に減少」として、6ヶ月ぶりに下方修正した。また、4月の完全失業率が5%台に乗せるなど、雇用悪化には歯止めがかかっていない。内閣府は、景気が悪化する二番底のリスクはまだかなり高く、景気回復には届いていないと見ている。


[財政]

(1)税制、住宅取得を後押し−経済関連法成立(6/20) **

 経済関連の重要法が、相次いで成立した。税制改正では、個人が住宅を買ったときに贈与税を軽減するほか、企業の研究開発の税負担を軽くする。

 家計への影響が大きそうなのが、贈与税の軽減だ。もともと年110万円までの贈与は非課税だが、この超過分については10〜50%の累進税率がかかる。今回は個人が住宅を購入したり増改築するときに限って、期間中に無税で贈与できる500万円分の枠を新たに設ける。今年1月にさかのぼって適用し、中古住宅やマンションも対象になる。

 もう一つの目玉が研究開発減税だ。通常は、企業が1年に支払った法人税額の最大20%を上限に、研究開発費の一部を税額から差し引ける。法人税ですべて引ききれない場合には、翌年度まで繰り越して減税を受けられる。今回は2年間に限って、繰越期間を最長3年に延長した。税額控除の上限も、支払った法人税額の30%に拡大することになった。4月以降に始まる事業年度が対象となる。

 また、地方の飲食業界が求めていた中小企業の交際費の損金参入の拡充も認められた。9割までを損金に参入できる交際費の対象額を、年400万円から600万円に増やす。

(2)国民年金、国庫負担上げ(6/20) ***

 国民年金法などの改正では、基礎年金の国庫負担割合を36.5%から2分の1に引き上げる。同法が成立しなければ、国民年金の積立金が20年代後半に枯渇する恐れがあった。引き上げに必要な財源は、約2兆3千億円だ。09年度から2年間は財政投融資特別会計の「埋蔵金」を、つなぎの財源としてしのぐことになった。11年度以降は、消費税を含む税制の抜本改革により安定財源の確保を目指す。同法の成立により、保険料の減免措置を受けている低所得の加入者は、将来受け取る年金額が増えることになる。これまで、全額納付した場合に比べ3分の1の受給額であったが、2分の1となるためだ。


[アメリカ経済]

(1)米金融政策、財政との連携、正念場に(6/17) **

 異例の資金供給策を展開してきた米連邦準備理事会(FRB)は、金融政策で微妙な舵取りを迫られている。景気底入れ期待から市場が実質ゼロ金利の出口を探り始める一方、長期金利上昇への懸念から長期国債購入の増額を求める意見も根強い。膨れ上がる財政赤字の懸念も浮上し、財政との連携も正念場を迎えている。 先物市場から見た今年12月時点でのフェデラルファンド金利(現行の誘導目標は0〜0.25%)予想は、6月上旬に0.565%まで上昇した。市場は、実質ゼロ金利政策の解除を視野に入れ始めた。ただ、地区連銀経済報告の総括判断は、「景気は弱いか悪化」との認識を維持した。家計の負債残高は02年の1.6倍の水準だ。債務調整はまだ入り口段階で、個人消費の本格回復は望みにくい。デフレ圧力は残っており、FRBがゼロ金利政策を脱する公算は小さい。

 焦点は、上昇基調にある長期金利をめぐる対応だ。3月に2%台後半で推移してきた米国債10年物の利回りは、先週一時8ヶ月ぶりに4%台に上昇した。23日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、国債買い入れ増額により金利上昇に歯止めをかける方向に動く可能性もある。この長期金利上昇が景況感の改善を反映した正常な動きなら、良い金利上昇といえる。だが、財政赤字への懸念によるものならば、経済が回復していないにもかかわらず金利が上昇していることになる。これは悪い金利上昇となり、経済回復の阻害要因となる。

 FRBは、政府の借金を中央銀行が肩代わりするマネタイゼーションも避けたいが、長期金利上昇が景気回復に悪影響を与えるのも避けたい。3月から半年間と限定した長期国債の買い入れ期間延長など、さまざまな案が浮上しそうだ。

 昨年末の実質ゼロ金利政策導入、今年3月の長期国債買い入れは、経済危機により全会一致であった。しかし、景気底入れ期待が浮上する中で、メンバーの認識は拡散し始めた。大量の資金供給でインフレ懸念が浮上する一方、デフレへの警戒感も残る。