[雇用情勢]

(1)失業率5.4%、最悪に迫る(7/31) ***

 雇用情勢の厳しさが増している。総務省によると、6月の完全失業率は5.4%と前月比0.2ポイント上昇し、03年4月に記録した過去最悪の5.5%に迫った。厚生労働省による6月の有効求人倍率は0.43倍と、2ヶ月連続で過去最低を更新した。雇用・所得への懸念を背景とした消費低迷なども影響し、6月の消費者物価は前年同月比で過去最大の低下幅を記録した。企業の雇用調整はさらに進む可能性があり、日本経済の不透明感を強めている。

 完全失業率の上昇は5ヶ月連続で、5.4%の男女別内訳は、男性は5.7%、女性は5%だった。就業者数は前年同月比151万人減と過去最大の落ち込みで、6300万人だった。製造業や建設業で落ち込みが激しい。一方、完全失業者数は348万人と83万人増で増加幅は過去最大となった。勤め先都合の失業者が121万人と最も多く、定年や自己都合を上回った。

 ハローワークで求職者一人当たりに何件の求人があるかを示す有効求人倍率は、6月に前月比で0.01ポイント低下した。有効求職者数が1.7%増えた一方、有効求人数は0.5%落ち込んだことが影響した。

 景気の先行指標といわれる新規求人数は、すべての産業が前年同月を下回った。昨秋以降の景気後退で、企業は国が従業員の休業手当の一部を補填する雇用調整助成金を活用するなどして雇用を維持してきた。人員の余剰感は強く、エコノミストの間では、失業率は過去最悪になるとの見方が多い。


[欧州経済]

(1) 欧州景気、もたつく回復−遠い金融正常化(7/26) ***

 ドイツのシュタインブリュック財務相は、銀行に書簡を出し、企業向け貸し出しを増やすように事実上命令した。欧州中央銀行は、政策金利を年1.0%に下げ、6月には4420億ユーロ(約59兆円)もの1年物資金をユーロ圏の銀行に提供した。だが、融資残高は横ばい圏で、企業にお金が回らない。

 同じころ、隣国フランスでも銀行が融資条件を厳しくした。金融市場庁のジュイエ長官は、「銀行は、もっと危機脱出に貢献できるはずだ」と不満をぶちまけた。

 ユーロ圏の製造業の売上高は、5月まで8ヶ月連続で減少した。企業業績の悪化が止まらず、欧州各行は融資焦げ付きを恐れ貸し渋りを続けている。ユーロ圏の輸出の2割を占める中・東欧の成長が、急低下したことも銀行の重荷だ。

 欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏全体で2010年までに2830億ドルの不良資産の追加処理が必要と試算する。銀行が安易に貸し出しを増やすと処理額がさらに膨らみ、信用不安が広がりかねない。しかし、貸し渋りを放置すると、倒産が増え失業率が上昇する。そのジレンマが、景気の明らかなリスクである。

 09年は、EU加盟27カ国のうち、財政赤字をGDP比で3%以内に抑えるという安定・成長協定に20カ国超が抵触する見通しだ。市場では長期金利の上昇や単一通貨ユーロへの信認低下の懸念が台頭し、ECBのトリシェ総裁は「歳出を絞るべきだ」と域内政府の過剰な景気対策に釘を刺した。

 銀行の資産劣化と財政悪化、その裏で進む企業倒産と失業率の上昇という構図は、景気が低迷した02〜03年に似ている。当時、それを解決したのは外需だが、頼みの綱の米中ロともV字回復は望み薄だ。

 トリシェ総裁は、欧州景気の先行きの回復の鍵は「信認回復」と断言する。銀行が不良資産処理を進めて金融正常化を急ぐ一方、政府も財政健全化に向け危機対応を平時に戻すことがまず求められる。


[環境問題]

(1) グリーンインダストリー、走り出した電気自動車(7/28)

 「グリーンニューディール沖縄プロジェクト」とは、太陽光や風力発電で作った電力で電気自動車を走らせるというものだ。県内で走る1万4000台のレンタカーを電気自動車に切り替え、太陽光や風力の自然エネルギーと組み合わせれば、5年でCO2を20%減らせる。200キロに満たない連続走行距離は電気自動車の弱点だが、島の多い沖縄ならば問題はない。発電、送電、充電、蓄電のインフラ整備やその管理は、新たな産業や雇用を生む。

 住生活グループ傘下のトステム研究所が、4月に発売したアイフルホームの電気自動車対応住宅は、屋根の太陽電池で発電した電力をガレージの電気自動車に供給する。そして、近い将来、車から電力を取り出す技術も生まれると予想される。電気自動車は、住宅が消費する電力をためる蓄電池になる。太陽電池と割安な夜間電力を組み合わせれば、車の燃料代と家の光熱費を現在の10分の1に下げられる。

 7月9日、コスモ石油が横浜市内の2ヵ所のガソリンスタンドに急速充電器を設置し、試験運転を始めた。当面は無料で利用できるようにして、充電器の利用状況や性能などを調べる。電気自動車は、スタンドにとりありがたくはない。満タンにしても、電気代は500円程度だ。充電には15〜30分間もかかるので、客の回転は悪い。充電だけで採算が取れる見込みは薄い。  電気自動車は、ガソリン車を前提にした産業構造や街の風景をがらりと変える。ニューディールが、静かに始まった。