1月第4週(1/18〜1/24)(最高3つの*)

メインテーマ: 08年貿易黒字80%減
その他のテーマ: 大統領の経済学
米大手銀3行、不良債権処理損4兆円
合併審査、大型に限定

[国際収支]

(1)08年貿易黒字80%減(1/22) ***

 財務省の2008年の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出マイナス輸入の貿易収支の黒字額は、前年比80.0%減の2兆1,575億円と急減した。世界的な景気減速で、自動車などの主要品目の輸出に急ブレーキがかかったことが背景にある。外需頼みの成長の道筋が見えなくなっている。

 08年の輸出額は前年比3.4%減の81兆492億円で、輸出が減少するのは7年ぶりだ。地域別には、アメリカ向けが15.8%減と過去最大の下落率を記録した。欧州連合(EU)向けも7.8%減少し、アジア向けの1.0%減少した。

 08年の輸入額は原油など資源価格が上昇したのを受け、前年比7.9%増の78兆8,917億円膨らんだ。

 輸出環境は厳しさを増している。併せて発表された08年12月の貿易収支は、3,207億円の赤字だ。輸入額は原油価格の下落で前年同月比21.5%減少したが、輸出額は35.0%減で、比較可能な80年以来で最大の下落率だ。赤字は3ヶ月連続で、拡大傾向となっている。


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[アメリカ経済]

(1)大統領の経済学(1/19) ***

 昨年ノーベル経済学賞を受けたクルーグマン教授は、大統領選直後、オバマは戦前の恐慌時のルーズベルト大統領の成功と失敗に学ぶべきだとするコラムを新聞に書いた。そのなかで、失敗とは、(公共事業を大盤振る舞いしたと思われているが)財政拡大を徹底しなかったことであるとする。景気が上向くと歳出削減や増税で、37〜38年の不況を招き、失業率は二桁に戻った。経済を救ったのは、第二次大戦時の財政拡大だったというのだ。

 同教授は、アメリカ経済は恐慌の領域に入り、金融政策は限界で、思い切った財政拡大しかないと説く。恐慌再来の危機に「ケインズに帰れ」の声が高まる。

 去り行くブッシュ大統領は、「私はずっと揺るがぬ市場の信奉者だ。最近取った政策と矛盾するようだけどね」と、自嘲気味に漏らした。百年に一度の危機は、グリーンスパン議長だけの責任ではない。ブッシュ政権は、ケインズに帰ったのである。

 オバマ氏は、公共投資や減税で2年間に8,000億ドル(約70兆円)規模の財政出動を表明している。変動相場制下の財政刺激への疑問も、主要国が一斉に踏み切れば話が変わる。それは、1ヶ月前のG20金融サミットで確認した「新ワシントン・コンセンサス」だ。しかし、基軸通貨国のアメリカの財政赤字膨張は、ドルの信認を揺るがすリスクもはらむ。

 「オバマノミクス」は、その成否にかかわらず、世界に新しいパラダイムをもたらしそうである。


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(2)米大手銀3行、不良債権処理損4兆円(1/19) ***

 シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェースの三行が、昨年10〜12月期決算で計上した不良資産処理に伴う損失は、計445億ドル(約4兆円)と、サブプライムローン問題が本格化した07年半ば以降で最高水準となった。各行の株価下落が続いており、損失拡大に歯止めをかけるため、金融機関から不良資産を切り離すなどの抜本的対策が必要になりそうだ。

 サブプライムローン焦げ付きに端を発する「突発型」から、経済全体の悪化に応じて貸倒引当金を積みます「不況型」に変化しつつある。

 三行が07年7〜9月期以降の6四半期に計上した不良資産処理をはじめとする関連損失は、1,600億ドルを超えた。米政府が金融機関の不良資産を買い取る専門銀行(バッドバンク)設立の検討に入るなど、金融安定化へ向けた抜本策を模索する動きもあわただしくなっている。

 銀行側では、今後実際に投融資を処分する直接償却が加速する見通しだ。不良資産を完全に切り離すことで、追加損失の発生を防げる。これは、一方で与信先の資金繰り悪化につながる可能性があり、デフレ圧力をいっそう強めかねない。


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[競争政策]

(1)合併審査「大型」に限定(1/20) **

 公正取引委員会は、合併・経営統合前の企業に公取委への報告を課す「届け出基準」を見直す方針を固めた。国内外での大型のM&A(合併・買収)の急増を受け、大型の合併審査を重視する方針に転換する。審査機関の短縮も見込まれ、企業再編を通じた構造改革を後押しすることにもなりそうだ。

 現在は、総資産の合計が百億円以上の会社が、総資産十億円以上の会社や事業部門を合併・買収する場合、公取委に届け出て承認を受ける必要がある。欧州連合(EU)に比べ、小規模な案件まで対象にしており、独禁法に違反する恐れが低いものも多く含まれる。公取委の事務負担も過重などとの指摘があった。公取委は、昨年、基準の緩和を盛り込んだ独禁法改正案を国会に提出した。企業の競争力を測るのに適当な売上高を用い、合併する側は国内売上高二百億円以上のグループ会社、合併される側は同二十億円以上の会社にそれぞれ改めた。しかし、改正案が廃案になったため、基準の見直しを検討し、合併される会社の売上高を五十億円に引き上げることにした。

 公取委はこの改正案を今通常国会に再提出する。届け出件数は、07年度の1,284件から半数以下に減る見通しという。売上高二十億円〜五十億円の基準に該当する企業で独禁法違反を指摘された例はなく、引き上げは問題ないと判断した。


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