2月第3週(2/15〜2/21)(最高3つの*)

メインテーマ: 10〜12月期実質GDP成長率、年率マイナス12.7%
その他のテーマ: 日銀社債買い取り1兆円、企業資金繰り支援強化
アメリカ、72兆円景気対策法案成立へ
WTO,対日審査

[景気動向]

(1)10〜12月期実質GDP成長率、年率マイナス12.7%(2/16) ***

 内閣府が発表した08年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比3.3%減、年率換算で12.7%減となった。マイナス成長は、三・四半期連続だ。減少率は、第一次石油危機だった74年1〜3月期の年率13.1%減に続き約35年ぶりの大きさだ。世界不況により輸出が過去最大の落ち込みとなり、個人消費、設備投資も大きく減った。日本経済は欧米に比べても落ち込み幅が大きく、内外需総崩れの状態だ。政府・与党は、追加経済対策の検討を急ぐ。

 三・四半期連続のマイナス成長は、ITバブル崩壊の不況以来だ。10〜12月期の実質成長率への寄与度を見ると、輸出マイナス輸入の外需が3.0%のマイナスで、外需はかつてないスピードで落ち込んだ

 内需の寄与度は、0.3%のマイナスだ。GDPの5割強を占める個人消費は前期比0.4%減った。リーマンブラザーズ証券破綻以降、株価の下落などから消費者心理が大きく悪化した。設備投資は5.3%減と、IT不況以来の落ち込みだ。企業が投資を中止したり、先送りしたりした。住宅投資は、5.3%増だった。

 生活実感に近い名目GDPは、前期比で1.7%減、年率6.6%減だ。原油の値下がりでGDPから差し引く輸入品の価格が下がり、付加価値を減らす効果は弱まった。このため、名目が実質を下回りデフレにあるとされる名実逆転は、八・四半期ぶりに解消した。

 08年暦年ベースのGDPは、実質で0.7%減、名目で1.6%減だ。実質は9年ぶり、名目は5年ぶりのマイナス成長だ。


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[金融市場]

(1)日銀社債買い取り1兆円、企業の資金繰り支援強化(2/20) ***

 日銀は、金融政策決定会合で金融支援の強化を決めた。社債やコマーシャルペーパー(CP)などを担保に、金融機関に年0.1%で資金を供給する制度を9月末まで半年  延長し、3ヶ月以内としていた期限を一律3ヶ月とする。企業が実際に資金調達するやや長めの金利の低下を促すのが狙いだ。企業が発行する社債は1兆円を上限に3月から買い取り、CPの買い取り期間も9月末まで延長し、企業の資金繰り支援策に一段と踏み込む。年0.1%の政策金利は、全会一致で据え置いた。

 半年延長を決めたのは、1月から始めた「企業金融支援特別オペ(公開市場操作)」と呼ぶ制度だ。入札の期限を3月末としていたが、年度末を越えた後も資金繰り懸念が強いことを考慮して、中間決算の9月末まで延長し、事実上年内は潤沢な資金供給を続ける。政策金利である無担保コールレート翌日物金利は0.1%だが、3ヶ月ものの指標である東京銀行間取引金利(TIBOR)は、年0.7%台に高止まりしている。銀行が年0.1%の低利で安定的に調達できる機会を増やし、短期金利全体をさらに低下させる。

 社債の買い取りは、格付けの低い銘柄の発行が難しいことに対応した措置だ。社債市場の機能不全は、企業金融全体の逼迫につながる。買い取りにより、金融機関の貸出余力を高め、企業の資金調達を後押しする姿勢を示した。

 FRBなど15主要中央銀行が協調して取り組んでいるドル資金供給も、4月末の期限を10月末に延ばし、市場のドル資金不足に対応する。

 金融機関が日銀におく当座預金に年0.1%の金利をつける「補完当座預金制度」も4月中旬までの期限を半年延長した。潤沢な資金供給で翌日物が誘導目標から下ぶれするのを防ぐ。


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[アメリカ経済]

(1)アメリカ、72兆円景気対策法案成立へ(2/15) ***

 一度の規模としては、世界でも過去最大の財政出動が動き出す。上下両院が13日に約7,870億ドル(約73兆円)の景気対策修正法案を可決し、景気対策はオバマ政権発足から一ヶ月足らずという異例のスピード決着を見た。減税や給付金でさらなる景気悪化を防ぎつつ、全体の約6割を占める歳出追加で需要を刺激し、2年間で350万人の雇用創出を目指す。

 修正法案は大統領の署名を経て成立する見通しで、アメリカ政府は実質国内総生産(GDP)を3%以上押し上げると見込んでいる模様だ。一方、民間の見通しを集計した調査では、09年の実質成長率は対策を考慮してもマイナス1.9%である。

 米議会予算局は、10年9月までに減税を含めて全体の74%を支出する見通しだ。景気情勢が深刻化する今年9月末までの執行は、全体の23%にとどまる見通しだ。年央にかけても景気回復の兆しが表れないと、前倒し執行が求められる可能性がある。

 アメリカ製品の優先的な購入を求めるバイアメリカンを残したことや、財政出動による財政赤字の膨張を無視できないことなど懸念材料はあるが、アメリカ経済再生のプロセスは最初の難関を突破した。オバマ政権は、金融安定化やアメリカ自動車大手三社の救済問題など、次に控える課題に臨む体制を整えた。


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[WTOとFTA]

(1)WTO対日審査(2/19) **

 世界貿易機関(WTO)は、日本の貿易政策に関する二年に一度の審査報告を発表した。政府がイギリス投資ファンドのJパワー(電源開発)株の買い増しを中止させたことなどを例示し、海外投資の受け入れ姿勢に課題があるとの見方を示した。農業分野も「労働生産性は国内平均の4分の1以下」と改革の遅れを指摘した。一方、「世界的な金融危機下でも保護貿易措置を導入しなかった」として、自由貿易を堅持する姿勢は評価した。

 海外投資に関しては、特に、投資の受け入れが経済協力開発機構(OECD)諸国の中では低水準にとどまっていると、問題視した。

 報告によると、08年の日本の関税の平均実効税率6.1%で、06年比で0,4ポイント下がった。鉱工業品は3.5%で、「国際競争にさらされて関税も低い」という。一方、農産物は17.1%で、「海外との競争から保護されたままだ」と批判した。さらに「政府による補助金はOECD諸国の平均を大きく上回る」と指摘した。結果として、労働生産性が上昇しないとの見方を示した。


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