[物価]
(1)サービス価格下落鮮明(12/6) ***
宿泊や娯楽、理美容などサービス分野の価格下落が鮮明になってきた。一般サービスは、6ヶ月連続で前年同月比マイナスとなり、10月は過去最大の0.6%下落となった。米欧も消費者物価は下落しているが、サービス価格がマイナスなのは日本だけである。価格下落が進めば、賃下げ圧力が強まり、内需減退となりかねない。98年から7年間続いた前回のデフレ局面でも外食などの価格下落は鮮明になったが、一般サービスの下落幅は01年2月の0.3%が最大だった。
サービスの利用頻度も減っており、単価の下落幅以上に家計の支出額は減っている。
主要国の10月のサービス物価は、アメリカが0.9%上昇し、ユーロ圏も1.8%の上昇で、日本の下落率は突出している。これは、雇用慣行の違いも影響している。サービスのコストの多くは人件費だ。米欧は需要が減れば人員をカットして供給量そのものを減らし、価格の維持に努める。日本は雇用の維持を優先するため、供給量が減らず価格競争に陥りやすい。
深刻な需要不足も物価下落の要因だ。国際通貨基金(IMF)の試算では、実際の需要と潜在的な供給力の差である需給ギャップは、米欧がマイナス3〜4%台なのに対し、日本は同7%に達する。金額に換算すると、日本の需要不足は年35兆円規模でデフレ圧力は強い。
サービス分野は、国内消費の6割弱を占める重要市場だ。物価下落は賃下げにつながり、デフレを一層深刻化する恐れがある。
[EU]
(1)EU新条約発効、初代大統領を選出(12/6)
欧州連合(EU)の新たな基本条約である「リスボン条約」が1日に発効し、新たに誕生した大統領(首脳会議の議長)が率いるEUの新体制が動き出した。27カ国が加盟するEUは、経済面だけでなく政治面での統合が強まり、一段の拡大にも弾みがつく見通しだ。
EUは、世界最大の単一市場に成長した。総人口は5億人、域内総生産(GDP)は12兆ユーロ(約1600兆円、08年)超とアメリカをしのぐ。93年のマーストリヒト条約の発効により、ECからEUへ移行し、中東欧への拡大も進んだ。98年に欧州中央銀行(ECB)が発足し、99年に単一通貨ユーロが登場した。ユーロ参加国は16カ国だ。
欧州統合は経済主導で進み、通商、通貨・金融政策へと幅を広げてきた。リスボン条約の下での機構改革は、政治面での統合を加速させる節目になる。
今後のEUの課題は、成長力にある。アメリカより低い生産性や高齢化の進展、域内の経済格差などがネックとなっており、より広い分野での政策協調や一段の加盟拡大など新たな成長戦略が問われている。