[物価]

(1)消費者物価2.2%低下(8/28) ***

 総務省が発表した7月の全国消費者物価指数(CPI)は、変動が大きい生鮮食品を除いたベースで、前年同月比2.2%低下した。低下は、5ヶ月連続だ。この低下率は、比較可能な1971年以来過去最大で初めて2%台に乗った。昨年夏にガソリン価格が急騰した反動に加え、家電などの価格低下も進んでいる。5月に1.1%低下と、前年同月比の低下率が8年ぶりに過去最大を記録した。その後、6、7月と低下率はさらに広がり、3ヶ月連続の記録更新となった。

 7月は、ガソリン価格の影響を反映するエネルギー価格などを除いた物価指数でも、前年同月比0.9%低下した。衣料やティッシュペーパー、洗剤など身近な製品の値段も下がり、景気低迷に伴う需要減を背景にデフレ圧力が高まりつつある。

 品目別の前年同月下落率は、ガソリンが30.5%、食料価格は0.7%、穀類も下落が続いている。また、家電価格の下落傾向も顕著で、ノート型パソコンは48.4%下落し、エコポイント効果で売れている薄型テレビも30.6%下落するなど、小売店での販売競争激化の影響が出ている。

 原油高が物価を押し上げていた昨年8月までの反動から、前年同月比のCPI低下は8月も継続しそうだ。


[雇用情勢]

(1) 失業率最悪5.7%(8/28) ***

 国内の雇用情勢が、一段と悪化してきた。総務省が発表した7月の完全失業率は、5.7%と前月比0.3ポイント上昇し、過去最悪を更新した。一方、厚生労働省が発表した7月の有効求人倍率は、前月比0.01ポイント下回る0.42倍と、3ヶ月連続で過去最低を更新した。国内経済は景気後退から持ち直しの動きがあるが、生産能力に余剰を抱える企業も多く、雇用調整がさらに進む恐れもある。

 就業者数は、前年同月比136万人減で6,270万人だった。製造業や建設業で、引き続き減少が続く。完全失業者数は、359万人と前年同月比103万人増えた。増加幅は、過去最大で初めて100万人を超えた。勤め先都合による失業者が、121万人と最も多かった。勤め先都合による失業者の増加数は、65万人と過去最大で企業のリストラの影響を色濃く反映している。男女別では、男性が6.1%と初めて6%台に乗せ、女性は5.1%となった。

 過去最低を更新した有効求人倍率は、ハローワークで職を探している人一人当たりに何件の求人があるかを示す。7月は職を探している有効求職者が前月比1.8%増えた一方、有効求人数が0.5%落ち込んだことが倍率低下につながった。 生産には一部で改善傾向が見られるが、失業率は生産から1年程度送れて改善する傾向がある。引き続き雇用情勢は厳しくなると見られる。景気の先行指標といわれる新規求人数は、すべての産業で前年同月を下回った。

(2)最低賃金、大半地域で上げ(8/27) **

 2009年度の最低賃金が、大半の地域で引き上げの見通しとなった。上昇幅は多くが時給1〜3円程度だが、10円を超える地域も相次ぐ。国は35県で現状維持とする目安を示したが、低所得者対策からほとんどの都道府県で引き上げ方針を示している。ただ、景気低迷の中での最低賃金の引き上げは、中小零細企業の経営に影響を与えそうだ。

 最低賃金は、企業が従業員に払わなければならない最低限の賃金で、都道府県ごとに労働局が定める。08年度の全国平均は、時給703円だ。

 厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会が、7月に示した目安では、企業の負担増に配慮して引き上げは12都道府県に限り、残りの35県は現状維持とした。そして、都道府県ごとの地方の審議会が答申をまとめ、それをもとに最低賃金が決定されるが(10月実施)、これらの35県でも多くの地方審議会が引き上げの答申をしている。

 背景には、非正規労働者が増え、所得格差の是正が課題になっていることがある。最低賃金で働いた場合、生活保護支給額を下回る地域もあり、問題になっている。

 今回の地方審議会の答申では、引き上げ幅が数円の地域も多いが、首都圏や近畿圏では10円以上も相次ぐ。東京都は25円、経済情勢が厳しい北海道でも11円、広島県は9円だ。

[地方審議会の最低賃金の引き上げ幅]
引き上げ幅 変更後の時給額
東京 25円 791円
神奈川 23円 789円
大阪 14円 762円
埼玉 13円 735円
北海道 11円 678円
広島 9円 692円

福岡 5円 680円
岩手 3円 631円
福島 3円 644円
茨城 2円 678円
愛知 1円 732円


[アメリカ経済]

(1)FRB議長、出口戦略かじ取り難しく(8/24) **

 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は、世界景気について最悪期を抜け出し、下げ止まりつつあると指摘した。そのうえで、金融機関の不良資産など「困難な課題が残っている」として、回復は緩やかに進むと警告した。FRBは、金融政策を平時に戻す出口戦略を模索しているが、かじ取りの難しさを示唆したものだ。

 同議長は、日米欧中央銀行総裁などが出席する年次シンポジウムで講演した。12日には「最も重要なことは、金融崩壊の恐怖が著しく和らいだことだ」と指摘した。そして、この1年間の危機対応の教訓として、金融機関と市場の流動性が重要と強調した。金融危機時には、十分な自己資本を持ちながら資金繰りに行き詰まるケースが多発するためだ。FRBなど各国の中央銀行が大量の資金供給を実施すると同時に、金融機関が流動性管理を強化すべきだと強調した。

 同シンポに出席したトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁は、景気認識について「少し不安」と、やや慎重な見方を示した。21日には、テキサス州などで4地域金融機関が破綻した。欧州でも金融機関の損失増加懸念がくすぶっている。バーナンキ議長は、世界的に金融市場の緊張は残っているとして、不良資産を抱えたままの金融機関による貸し渋りなどの解消には時間がかかると指摘した。