[景気動向]

(1)4〜6月期実質GDP3.7%成長(8/17) ***

 内閣府発表の4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%増、年率換算で3.7%増となった。プラス成長は、5四半期ぶりだ。アジア向けの輸出が伸びたほか、追加経済対策による公共投資も成長に寄与した。エコカー減税などの追い風を受け、GDPの6割弱を占める個人消費も3期ぶりに増えた。ただ、実質GDPの水準は、ピークをつけた昨年1〜3月期と比べると7.5%小さく、戦後最悪のマイナス成長から持ち直すには時間がかかる。

 生活実感に近い名目成長率は0.2%減と、5四半期連続でマイナス成長に陥っている。

 内閣府は、過去の成長率も改定した。この結果、戦後最悪の落ち込みは、08年10〜12月期の前期比3.5%減(年率13.1%減)となった。2番目が1974年1〜3月期(年率13.1%減)で、3番目は前期である09年1〜3月期(同11.7%減)となった。

[2009年4〜6月期のGDP増減率の内訳](前期比%)
実質 名目
GDP 0.9 −0.2
(年率換算) (3.7) −0.7

個人消費 0.8 0.3
住宅投資 −9.5 −10.9
設備投資 −4.3 −5.5
政府消費 −0.3 −1.2
公共投資 8.1 6.4
輸出 6.3 5.5
輸入 −5.1 −2.5

 設備投資は、前期比4.3%減と5期連続でマイナスが続いている。住宅投資は、マンション着工の低迷が響き、前期比9.5%減と2期連続で減少した。この2つの投資の落ち込みは、個人消費のプラスの効果を打ち消し、実質成長率を1.0%押し下げた。


[財政]

(1)財源論、「埋蔵金」に不安(8/21) ***

 衆院選の各党のマニフェスト(政権公約)の実現に必要な財源の確保に、国の特別会計の余剰資金を活用する「埋蔵金」が焦点となっている。4年間の消費税率引き上げを封印した民主党は、代役の財源として埋蔵金に着目している。自民党も、消費税率引き上げまでの「つなぎ財源」として着目している。草刈り場となっているのが、財政投融資と外国為替資金の両特別会計だ。しかし、財源として頼るには課題も多い。

 民主党マニフェストは、財投と外為の両特会の埋蔵金や、09年度補正予算で天下り法人などに乱立した基金の取り崩しで、計4.3兆円を確保する考えを示した。民主党が埋蔵金として期待するのは、特会の運用益などで毎年生じる剰余金だ。財投特会の場合、08年度決算ベースで約2.4兆円だった。しかし、運用利回りは低下傾向にある。過去の高金利時代の融資の償還が本格化しているためで、09年度は1.3兆円にまで落ち込む。

 財投特会が金利変動リスクに備えて積み立てている準備金を取り崩して、財源にする考え方もある。だが、政府は経済対策の財源として既に準備金を活用し、07年度末に約20兆円あった残高は09年度末に3.4兆円まで急減する見通しだ。この3.4兆円も、10年度予算で使い切ることが決定済みだ。基礎年金の国庫負担引き上げに2.4兆円、減税措置による税収減の補填に0.5兆円、地方交付税の増額に0.5兆円が充てられるためだ。

 外為特会は08年度の剰余金が、約3.4兆円だ。このうち、約2.4兆円は、09年度予算ですでに国の政策の財源に充てられている。外為特会の剰余金は、海外との金利差や為替相場に左右され、09年度は1.8兆円まで減る見込みだ。10年度予算では、剰余金から政策財源に回せる額が今年度よりも減少する公算が大きい。外為特会には、為替リスクに備えた積立金が6月時点で20.3兆円あるが、円高による為替差損で1.4兆円の積み立て不足が生じている。積立金を取り崩し、「赤字」の会計から財源をひねり出すことには疑問の声も多い。さらに、積立金は、地方自治体向けの財政融資などで長期運用しており、すぐには取り崩せない。取り崩す場合は、国債の一種である財投債を発行し調達する必要がある。国債残高が膨らむ中、市場での増発には金利上昇リスクがつきまとう。埋蔵金に依存した財政運営は、不安定にならざるを得ないのが実状だ。

[外国為替資金]
剰余金  3.4兆円(08年度決算)  1.8兆円(09年度末見込み)
積立金  20.3兆円(6月末時点)
[財政投融資]
剰余金  2.4兆円(08年度決算)  1.3兆円(09年度末見込み)
金利変動準備金残高  3.4兆円(09年度末見込み)