[企業部門]
(1)生産下げ止まりの兆し、3月鉱工業生産1.6%上昇(5/1) ***
急減していた生産に下げ止まりの兆しが出てきた。経済産業省によると、3月の鉱工業生産指数は(05年100)は70.6となり、前月比1.6%上昇した。6ヶ月ぶりの上昇だ。背景には、輸出の持ち直しと在庫調整の進展があり、4〜6月期は五・四半期ぶりに前期比プラスに転じる可能性が高い。
1〜3月期は、前期比22.1%の低下と過去最大の落ち込みを記録しており、同時期の国内総生産も大幅なマイナスが不可避である。
しかし、先行きには明るさも出てきた。昨秋以降、急激に生産が落ち込んだのは、世界的な需要減に伴い輸出が急減したことが大きい。3月はその輸出がやや持ち直し、生産指数を押し上げた面が強い。4月以降も生産増を続けるには、輸出の上向き基調が続くかどうかが最大の焦点になる。
[雇用情勢]
(1)雇用、急激に悪化、失業率4.8%に(5/1) ***
失業率は、15歳以上の働く意思のある人のうち、全く職についていない人の比率だ。4.8%に乗せたのは、04年8月以来だ。完全失業者数は、335万人と前年同月比67万人増え、5ヶ月連続の増加となった。
企業は、従業員に支払う休業手当の一部を国が補填する雇用調整助成金に殺到している。3月の申請件数は、前月比28%増の237万9千69人にふくらんだ。同助成金が失業率の上昇を緩和しているが、景気低迷が長引けば、失業率は上昇を加速させる可能性が高い。
また、3月の有効求人倍率は、0.52倍と、02年4月以来7年ぶりの低水準となった。3月は、有効求職者が4.6%増え、企業の求人である有効求人が7.9%も落ち込んだ。
景気の先行指標といわれる新規求人数は、前年同月比22.3%減だ。2月に比べてマイナス幅は縮まったものの、なお低迷が続く。
[アメリカ経済]
(1)1〜3月のGDP,前期比年率6.1%減(4/30) ***
アメリカの1〜3月の実質GDPは、前期比年率で6.1%減となり、二期連続マイナス6%成長となり、三期連続のマイナス成長を記録した。民間設備投資が同37.9%減と大幅減となるなど、企業部門が収縮した。一方、内需の柱である個人消費は、プラスに浮上し薄日も差してきた。企業の在庫調整は進展しており、アメリカ景気には下げ止まりの兆候も見られる。
1〜3月期のGDPを押し下げたのは、同37.9%の大幅減となった民間設備投資であった。これだけで、成長率を約4.7%押し下げた。国内外の需要の落ち込みから、企業は先行きに一段と慎重になっている。住宅投資も同38.0%減とマイナス幅が拡大した。在庫積み上がりから住宅投資反転には至っていない。
一方、GDPの7割程度を占める個人消費は、前期の同4.3%減から同2.2%増に浮上した。三期ぶりにプラスに転じ、反転の兆しが出てきた。最近の指標でも消費者心理は好転しており、消費が急降下を続ける情勢ではなくなっている。
民間在庫投資の減少も、2.8%成長を下げる要因となった。ただ、これは、企業の在庫調整の進展を反映しており、生産増に転じるタイミングをうかがっている段階と見られる。
政府支出が減少するなど、1〜3月期は景気対策の効果がGDPにまだ加わっていない。金融安定化を含め、公共事業の積み増しや減税などオバマ政権の政策がかみあえば、景気は底が見えてくる可能性がある。