4月第2週(4/5〜4/11)(最高3つの*)
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「追加経済対策、景気下支え56兆円」 |
(1)縮む景気、底入れへ試練(4/5) ***
2007年から続く日本の景気後退が、重要な局面に入った。在庫調整の進展や中国の景気対策を背景に、企業の生産に下げ止まりの兆しが出てきたためだ。しかし、世界的な金融危機の出口は見えず、輸出が本格的に回復するめどは立たない。信用収縮が設備投資の足を引っ張り、雇用情勢の悪化が個人消費を下押しする恐れもある。景気底入れのハードルはなお高い。
危機のあおりで、内・外需とも蒸発した企業部門に、一部かすかな光が差し込んできた。自動車や化学などの在庫調整が進み、ピーク時の6割の落ち込んだ生産に、下げ止まりの兆候が見られる。民間の経営努力と各国・地域の財政出動が相まって、空前の収縮にブレーキがかかりそうだ。
だが、不況脱出の展望が開けたわけではない。09年1〜3月期の実質GDP成長率は、08年10〜12月期の前期比年率12.1%減と同程度のマイナス成長に終わったとみられる。生産が本当に下げ止まったとしても、4〜6月期以降マイナス成長を和らげる力しかないだろう。
心配なのは下振れのリスクだ。危機の震源地であるアメリカの景気後退は、長引くのか。第一の不安はそこにある。住宅の値下がりや職場のリストラにおびえる家計の貯蓄率は、4%台だ。過去10年で最高の水準だ。景気対策に盛り込んだ所得税減税は、3月からスタートしたが、GDPの7割を占める消費を刺激する保証はない。
ユーロ圏やイギリスの景気後退も、10年まで続くとの見方も多い。世界経済全体の底入れが遅れれば、輸出依存度が高い日本経済への打撃は大きい。
第二の不安は、信用収縮の広がりだ。政府・日銀が企業の資金繰り支援策を次々と打ち出し、社債やコマーシャルペーパーの市場は、落ち着きを取り戻しつつある。しかし、3月期決算の公表が相次ぐ4月から5月にかけて、危機が再燃するとの懸念は消えない。
実体経済の冷え込みと金融の目詰まりが連鎖すれば、企業部門にまた強い収縮圧力がかかる。
前例のない規模と速度の調整を迫られた企業部門に比べ、家計部門の落ち込みはまだ限られていた。5万円パソコン、プライベートブランドの衣料品など、安いもの、必要なもの、付加価値の高いものなら買う余力が消費者には残っていた。だが、雇用・所得環境の悪化という第三の不安が、消費を総崩れの状態に追い込む恐れがある。失業率が今の4.4%から大きく跳ね上がるようなら、家計部門の生活防衛行動は一段と強まる。
世界銀行の09年の経済見通しによれば、世界全体の実質GDP成長率は、マイナス1.7%と戦後初のマイナス成長に転じる。日本はマイナス5.3%で、アメリカやユーロ圏より落ち込み方が激しい。日本の需要不足は、最大50兆円まで広がる可能性があるという試算もある。2日閉幕した20カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)では、参加国・地域が、10年末までに総額5兆ドルの財政出動に踏み切ることで合意した。10年の世界の実質成長率を、2%まで押し上げるのが目標だ。市場は好感し、日米などの株価が一斉に上昇した。ただ、ゼネラル・モーターズの再建問題という火種は残る。鍵を握るアメリカ経済のファンダメンタル(基礎的条件)が、改善したわけではない。
(1)「優良住宅」優遇、20年に延長(4/6)
政府・与党が、追加経済対策に盛り込む住宅市場の活性化策が明らかになった。住宅金融支援機構の長期固定金利の住宅ローンを利用する際、耐震性などに優れた家なら0.3%の金利優遇期間を20年に延長する。普通の家でも、2011年度末までは、頭金なしでローンを組めるようにする。09年の融資可能個数は、08年の11万個から19万個に拡大する。中小の不動産業者の資金繰りも支援する。
政府・与党は、10日にも追加対策をまとめる。住宅ローンの拡大に加え、住宅金融支援機構に、約5千億円を追加出資する方針だ。
省エネルギー設備、耐震性、バリアフリー設備が一定の基準を満たしている優良住宅を対象に、金利3%で3,000万円のローンを35年の元利金等で組む場合、返済総額は優遇がない場合と比べ、166万円少なくなる計算だ。
11年度末までの限定措置で、長期固定金利ローンの上限を、家の購入額の9割から10割に引き上げる。頭金を不要にして、若年層の住宅購入を促進する。
不動産業者への資金繰り支援策として、「まちづくり融資」の貸し出し条件を、11年度末まで緩和する。建物の面積に占める住宅部分の割合を、「2分の1超」から「4分の1以上」にする。
(1)追加経済対策、景気下支え最大の56兆円(4/11) ***
政府・与党は、急速に悪化する経済情勢を下支えするための追加経済対策を決定した。財政支出は15兆4千億円、事業規模は56兆8千億円で、いずれも過去最大だ。対策は、雇用、環境、金融などのほか、贈与税などの減税措置も盛り込み、政策総動員を印象付ける内容だ。政府は、財源を裏付ける09年度補正予算案と関連法案の27日の国会提出を目指す。
経済対策の財源として、新たに発行する国債は、10兆円を超す。09年度の国債発行額も43兆円超と、過去最大となる見通しだ。麻生首相は、「消費税を含む税制抜本改革は、景気をきちんと立て直すことを前提に必ず実施する」とも述べ、景気回復後の消費税率引き上げに改めて意欲を示した。