9月第3週(9/14〜9/20)(最高3つの*)

メインテーマ: 「基準地価、商業地再び下落」
「アメリカ金融危機ーサブプライムで体力消耗」
その他のテーマ: 「アメリカ金融危機ー財政負担渋るアメリカ政府」
「金融危機ー米銀の余力低下、再編の可能性」
「アメリカ、現代版RTC設立へ。公的資金投入、理解は」
「日米欧中銀、36兆円資金供給」

[景気動向]

(1)9月も景気弱含みー月例経済報告(9/20) ***

 与謝野経済財政相は、景気の基調判断を、二ヶ月連続で「このところ弱含んでいる」とした9月の月例経済報告を提出した。景気後退入りを事実上認めた8月の判断を据え置いたが、さらに下ぶれする要因として、アメリカの金融不安の高まりを新たに盛り込んだ。

 同報告では、世界の景気について「減速の動きに広がりが見られる」として、02年6月から使ってきた「回復」の文言を削除した。輸出は弱含んでいるとの判断を据え置いた。アメリカ金融危機により海外経済が一段と減速すれば、輸出がさらに落ち込み、景気後退が長期化する恐れがある。

 設備投資は「おおむね横ばい」から「弱含んでいる」に下方修正し、国内需要の落ち込みで輸入も「横ばい」から「弱含んでいる」に下方修正した。


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[地価]

(1)基準地価、商業地再び下落(9/19) ***

 国土交通省は、7月1日時点での都道府県地価(基準地価)の調査結果を発表した。三大都市圏の上昇率が、表のとおり大幅に縮小し、昨年16年ぶりに上昇した商業地の全国平均は、前年比マイナス0.8%と再び下落した。住宅地は同1.2%と17年連続で下落し、5年ぶりに下落幅が広がった。05年ごろから持ち直していた地価は、今年1月以降都市部を中心に反落傾向が顕著になっており、同省は「景気減速やオフィス、マンションの需要減退、海外ファンドなどによる不動産投資の縮小が原因」と分析している。また、一連の金融不安で不動産市場が一段と停滞する可能性がある。

[三大都市圏の上昇率](カッコ内は昨年)
商業地 3.3%(10.4%)
住宅地 1.4%(4.0%)

 1月1日時点の公示地価と共通の東京都心の商業地28地点を見ると、昨年7月から今年1月までの半年間は、新宿区の12.5%を筆頭にすべてで上昇したが、今年1月から7月の半年間では21地点でマイナスか横ばいに転じた。

 地方圏では、商業地がマイナス2.5%、住宅地が同2.1%と、下落幅はわずかに縮まったが、下落が続いている。前回調査で2桁の伸びだったサッポロ、仙台、福岡三市の商業地の上昇率も、最高6.7%と鈍化した。


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[アメリカ経済]

(1)アメリカ金融危機ーサブプライムで体力消耗(9/17) ***

 アメリカを大恐慌以来の金融危機が襲っている。サブプライム住宅ローン問題で、損失が拡大し続けてきた証券大手リーマン・ブラザーズが、15日経営破たんした。同じ日に、メリルリンチは大手銀行による電撃買収が決まった。

 破たん前の3日間の協議の焦点は、サブプライム関連などの不良資産で発生する将来の損失を誰の金で穴埋めするのかということであった。しかし、結局、資金のめどが立たず協議は頓挫した。公的資金を突っぱねたのは、政府の方針といえるが、民間が拠出に応じられなかったのは、リーマン以外の金融大手もサブプライムローン問題で体力を蝕まれていたからだ。アメリカのシティグループは6兆3,000億円、スイスのUSBは4兆5,000億円、メリルリンチは4兆2,500億円と、この1年に世界の金融大手が計上したサブプライム関連の損失は、想像を絶する規模に膨らんだ。

 当初は、住宅ローン返済の焦げ付きをきっかけとした関連金融商品の価値下落が、損失の中心だった。しかし、問題の長期化と広がりにより、信用力の高いローン関連やその他の金融商品の価値も下落した。リーマンの経営も急速に悪化し、この1年で関連損失は140億ドルに達した。

 米銀JPモルガン・チェースに救済買収されたベアー・スターンズを含め、アメリカ五大証券のうち三社がわずか半年で表舞台を去ることになった。しかし、市場は、既に、保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)など、損失がとまらない金融大手に警戒の対象を移している。「次はどこだ」との不安が強く、金融危機からの脱出は容易ではなさそうである。


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(2)アメリカ金融危機ー財政負担渋るアメリカ政府(9/18) ***

 政府の姿勢が一貫せず財政負担による公的資金に消極的な理由の一つが、11月に迫った大統領・議会選だ。納税者の負担となる公的資金の投入は、ブッシュ共和党政権のダメージとなり有権者離れを生じさせかねない。

 サブプライムローン問題に伴い納税者が負担する金額は9,000億ドル(約95兆円)超に達する可能性があるという。一般的に「企業は利益を株主たちで独占しておいて、損失は国民に押し付ける」という批判がある。政府が財政負担を渋っている分、AIGへの850億ドル(約9兆円)融資をはじめ、連邦準備制度理事会(FRB)へしわ寄せがいっている。

 未曾有の金融混乱が、先行きへの不安感から個人消費や企業への設備投資を落ち込ませるのは不可避だろう。雇用は8ヶ月連続で減少し、アメリカの景気悪化が日本始め世界経済に波及するのは時間の問題だ。


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(3)金融危機ー米銀の余力低下、再編の可能性(9/19) ***

 今年に入り、景気悪化がはっきりしてくると、中小企業への貸し渋りが広がっているという不満が日本の国内各地で広がった。緩めに変化した金融検査の変化は、銀行が中小企業に過度に厳しい姿勢を示さないようにするためと見られる。貸し渋りへの懸念は、アメリカのサブプライムローン問題の影響により、国内金融機関でも損失や不良債権が膨らみかねない状況を反映している。破綻したリーマン・ブラザーズに対し、融資などの債権を持つ国内銀行は約50行だ。地方銀行の債権額は、約600億円に上る。

 サブプライム問題の深刻化で、欧米の金融機関や投資ファンドは日本への投資の余裕を失い、これは不動産や株価の下落につながる。景気悪化による貸倒れも増え、国内銀行は新たな融資先を探す余力低下につながる。

 サブプライム問題は、国内の地方銀行にも影響を与え、経営統合による効率化が焦点となり、体力の弱い地方金融機関の再編が差し迫った課題とならざるを得ない。アメリカでも同様で、欧州勢を巻き込んだ金融界の大型再編は、世界の金融勢力図を塗り替えようとしている。


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(4)アメリカ、現代版RTC設立へ。公的資金投入、理解は(9/20) ***

 アメリカ政府は、金融機関を苦しめているサブプライム住宅ローン関連の不良資産の買い取りを進める方針を正式表明した。過去に同様の目的で設立された整理信託公社(RTC)の現代版設立が念頭にあるとみられる。1989年設立のRTCは、不良債権処理の原動力となったが、最終的には1,000億ドル(約10兆7,000億円)以上の公的資金がつぎこまれた仕組みだ。大統領選を控え、議会や国民の納得を得られるかが実現の鍵を握る。

  アメリカでは、80年代後半住宅ローンを主な業務とする貯蓄貸付組合(S&L)が大量に破綻した。預金を保証する連邦貯蓄貸付保険公社も経営に行き詰まり、破綻したS&Lの受け皿となる政府機関としてRTCが設立された。RTCは、95年までに約750件の破たん処理を断行した。S&Lの不良資産だけを引き継ぎ、徹底した債権回収を行い、債権の回収率は87%と高かった。当時投入された公的資金の内訳は、RTCへの直接の財政支出が738億ドル、資金調達の債券発行が301億ドルであった。

 納税者の理解を得るために、徹底した経営責任の追求が行われた。放漫経営を続けたS&L幹部や、返済の見込みがない多額の融資を受けた借り手に対し、刑事、民事両面からの捜査が行われた。その結果、有罪が確定した約5,500人のうち約3,800人が実刑判決を受けた。

 検討中の現代版RTCは、破綻した金融機関からだけでなく、破たん前に不良資産を買い取る仕組みになるとみられる。アメリカ政府が公的資金の活用を念頭に新たな一歩を踏み出したことを受け、信用不安が解消するとの期待から日米の株式市場は急騰した。だが、議会での承認などに一定に時間が必要で、スピード感のある進展は期待できないのではないかとの見方がある。


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[国際金融]

(1)日米欧中銀、36兆円資金供給(9/17) **

 日米欧の中央銀行は、16日までにアメリカ証券大手リーマン・ブラザーズの経営破たんによる短期金融市場の動揺を抑えるため、計36兆8,000億円の大量資金供給に踏み切った。市場沈静化へ協調姿勢を鮮明にした。

 アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、15,16の両日、公開市場操作を実施し、計1,400億ドルの資金を金融市場に供給した。同時テロの2001年9月に実施して以来の規模だ。欧州中央銀行も、同じ両日ユーロ圏(15カ国)の金融機関に計1,000億ユーロ(約15兆円)の翌日物資金を緊急に提供した。また、イギリスの中央銀行のイングランド銀行も、両日計250億ポンド(約4兆7,000億円)を緊急供給した。また、スイスの中央銀行も資金供給を行った。

 日銀も、16日、足並みをそろえ、短期金融市場に2兆5千億円の資金を供給した。


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