10月第4週(10/19〜10/25)(最高3つの*)

メインテーマ: 「イギリス、10年ぶりマイナス成長」
その他のテーマ: 「10月の月例報告、10年ぶり6項目後退」
「原油価格急落、中東産油国の財政圧迫」
「中国、7〜9月9.0%成長に減速」
「フランス、大手6行に予防注入」

[景気動向]

(1)10月の月例報告、10年半ぶり6項目後退(11/21) ***

 政府は、10月の月例経済報告で、景気の基調判断を「弱まっている」として、前月より引き下げた。輸出、生産、雇用、個人消費、業況判断、倒産の6項目の判断を下方修正した。主要11項目のうち、6項目を下げたのは、98年4月以来10年半ぶりだ。日銀も、公表した10月の地域経済報告で、国内の全九地域の景気判断を下方修正した。世界的な景気後退の懸念が強まる中、日本経済も厳しい局面に入った。

 国内総生産の5割強を占める個人消費は、12ヶ月ぶりに下方修正した。食品やガソリンの値上がりで、消費者心理が悪化し、百貨店などの販売が振るわない。輸出は、アメリカ向けの落ち込みが目立つうえ、アジア向けも弱含んできた。企業は減産に入り、鉱工業生産指数は7〜9月期までV・四半期続けて前期を下回る公算が大きい。景気の先行きも、「下向きの動きが続く」としたうえで、金融市場の混乱などから「さらに厳しいものとなるリスクが存在する」とした。


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[物価]

(1)原油価格急落、中東産油国の財政を圧迫(10/19) **

 原油価格の急落が、中東産油国の財政を圧迫し始めた。アメリカ原油市場で1バレル70ドルを割る価格の急落で、イランで財政赤字が拡大、歳入の八割を原油収入に頼るサウジアラビアでも来年度予算に影響を与える水準に近づきつつある。金融危機に加えて、高成長を支えてきた原油収入の減少は、産油国経済に打撃を与えかねない。

 イランの2008年度予算は、均衡予算となるためには、1バレル90ドル前後が必要だ。アハマディネジャド大統領が、原油高を利用して支持基盤である低所得層向けの補助金政策を拡大してきた結果、原油価格の急落の反動が急速に財政運営を脅かし始めている。

 サウジの原油価格の前提は、08年度は1バレル約50ドルである。過去2年間で1,200億ドル規模に拡大した財政黒字は、経済活況の原動力となってきた。過去最大規模の歳出予算を組んでいる今年度は、上半期の高値に支えられ価格がさらに落ちても、十分な黒字幅を確保する見通しだ。しかし、09年度予算は、1バレル55〜62ドルで検討している。このまま原油価格が60ドルを目指す展開になれば、予算は見直しを迫られる可能性が出てくる。

 戦後復興を急ぐイラクも、790億ドルを見込んでいた今年度の財政黒字は下方修正が避けられない見通しだ。


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[中国経済]

(1)中国、7〜9月9.0%成長に減速(10/20) ***

 中国国家統計局によると、7〜9月期の国内総生産(GDP)が実質で前年同期に比べ9.0%増えたと発表した。今年前半は10%以上の成長を記録していたが、大幅な減速となった。一ケタ台に落ち込んだのは十一・四半期振りとなった。世界経済の停滞で輸出の伸びが鈍化したうえ、投資にも陰りが見え始めたことが主因だ。個人消費は堅調だが、08年通年の成長率が、6年ぶりの一ケタ台になる可能性が高まっている。

 国務院(政府)は、17日の常務会議で、アメリカ発の金融危機が中国経済にも影響を及ぼし始めたとの認識を示した上で、「できるだけ早く適切な財政、金融、貿易などの措置を実施する」との方針を確認した。

 中国の通年のGDP成長率は、07年まで5年連続で二ケタを達成し、今年1〜6月も速報ペースで10.4%だった。1〜9月の成長率は9.9%になっており、08年通年の成長率も6年ぶりに10%割れとなる可能性が高まった。

 成長減速の背景には、高成長を牽引してきた輸出の不振がある。1〜9月の貿易黒字は1,809億ドルで、前年同期比2.6%減った。今後も、世界経済の低迷で、輸出の伸びが大幅に鈍る可能性がある。輸出と並んで牽引してきた固定資産投資(設備投資や建設投資の合計)も、勢いが衰え始めている。1〜9月の都市部の固定資産投資は、前年同期比27.6%増と名目では高水準を保った。しかし、投資財の価格高騰を考慮した実質では、伸びが急速に鈍っているとの見方が多い。


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[EU経済]

(1)フランス、大手6行に予防注入(10/21) ***

 フランスのラガルド財務省は、BNPパリバ、ソシエテ・ジェネラルなど大手6銀行に対し、総額105億ユーロ(1兆4千億円強)の公的資金を注入すると発表した。民間銀行には、年間3〜4%の融資残高の増加を促す。健全行も含めた予防的な一斉注入で、金融システムの混乱を抑え、企業や個人への貸し出しを促すのが狙いだ。

 銀行からの要請を受けず、政府主導で大手行すべてに一斉注入を決めた。フランス政府は、必要と判断すれば来年にもさらに100億ユーロ規模の資本注入を実施する方針だ。同財務省は、「銀行の資本増強により家計や企業、とりわけ中小企業への融資を確保する」と指摘した。

 フィヨン首相は、フランスの民間銀行が年率3〜4%のペースで融資残高を増やすことを約束したと発表した。公的資金を一斉注入する一方で、当面の融資増を確約させた格好だ。政府は今後、経営者の報酬体系を含め、経営全般に関与を強める構えだ。フランス銀行(中央銀行)のノワイエ総裁は「フランスの銀行は資本不足に陥っていないが、実体経済への資金供給を支える必要がある」と述べた。これにより、他の国へも予防的な公的資金投入が広がる可能性がある。

 一方、イギリスは、自力調達だけでは資本が不足する大手3行に集中して370億ポンド(約6兆5千億円)の資本注入を決めた。

 フランス政府の金融危機対策は、総額3,600億ユーロ(約49兆円)で、このうち400億ユーロ(約5兆4千億円)が資本注入枠となる。残りの3,200億ユーロは銀行間取り引きなどへの信用保証に充てる。


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(2)イギリス、16年ぶりマイナス成長(10/25) ***

 イギリス政府が発表した08年7〜9月の実質国内総生産(GDP)の速報値は、前期比0.5%減となり、約16年ぶりの四半期のマイナス成長となった。金融危機が実体経済を直撃し、「景気後退局面に入りつつある」(キング中央銀行総裁)ことを示した。信用収縮の影響は他の欧州諸国でも広がっており、欧州全域で景気停滞が一段と強まりそうだ。

 信用収縮により住宅投資が細り、個人消費が停滞している。景気をけん引してきた金融サービスが0.4%減とマイナスに転落したほか、建設、製造業などほぼすべてで落ち込んだ。鉱工業生産全体は、1.0%減だ。キング中銀総裁は過去1ヶ月について「銀行から実体経済への信用供与がほぼ停止した。これほどの金融システム危機は第一次大戦以来だ」と指摘する。

 イギリスの景気低迷は、長期化するとの見方が多い。「イギリスは主要国の中で金融危機の打撃が最も深刻だ」と国際通貨基金(IMF)は指摘する。イギリスでは、可処分所得に対する家計負債の割合が、00年の約1倍から05年に1.5倍近くまで膨らみ、アメリカより借り入れ依存度が高いためだ。


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