10月第2週(10/5〜10/11)(最高3つの*)

メインテーマ: 「世界10中銀、同時利下げ」
その他のテーマ: 「公的資金注入でG7協調」
「アメリカ公的資金策−日本と比べれば3合目」
「欧州金融機関・当局−危機拡大阻止へ対応急ぐ」

[世界経済]

(1)世界10中銀、同時利下げ(10/9) ***

 欧米六中央銀行(表参照)は、8日協調して緊急利下げに踏み切ると発表した。同時株安など金融・資本市場の混乱を抑えるのが狙いだ。政策金利をそれぞれ0.5%下げた。中国など新興国も協調に加わり、欧米とあわせ10カ国・地域による異例の世界同時利下げとなった。日銀は協調利下げには加わらないが、市場への資金供給拡充などで協力する。

 協調利下げを発表した国・地域の六中銀は、表のとおりである。このほか、中国、アラブ首長国連邦も同時間に利下げを発表した。香港、クウェートも、同日その前に発表した。米欧協調下げは同時テロが起きた01年9月以来だが、これだけ広範な中央銀行が一斉利下げに踏み切るのは前例がない。各国の政策新金利と下げ幅は表のとおりだ。主要中央銀行の政策金利の変更は通常0.25%刻みだが、各国とも異例の大幅利下げとなった。

 米欧六中銀と日銀は「金融危機の高まりで成長へのリスクが高まっており、グローバルな金融環境をある程度緩和することが正当化される」との共同声明を発表した。日銀は歓迎の声明を出し、「わが国では、政策金利の水準はきわめて低く、緩和的な金融環境が維持されている」として、切り下げに加わらなかった理由を説明した。日欧米の主要中銀は、9月に総額65兆円規模のドル資金を自国市場に供給する協調策を打ち出したが、短期金融市場では米欧金融機関が資金を調達しにくいマヒ状態が続いていた。アメリカでは金融機関の不良資産を買い取る金融安定家法が成立したが、金融機関の信用不安は収まっていない。

[8日に利下げを実施・発表した国・地域]
国・地域 政策金利
アメリカ   1.5(0.5)
ユーロ圏  3.75(0.5)
イギリス   4.5(0.5)
カナダ   2.5(0.5)
スウェーデン  4.25(0.5)
スイス   2.5(0.5)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中国 6.93(0.27)
アラブ首長国連邦   1.5(0.5)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
香港   2.5(1.0)
クウェート  4.5(1.25)
(単位%、カッコ内は下げ幅)


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(2)公的資金注入でG7協調(10/11) ***

 七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、10日公的資金による資本増強など5項目の異例の行動計画を発表し、閉幕した。主要金融機関の破綻回避へあらゆる手段を活用することで一致した。また、金融機関の流動性確保へ、必要な手段をとることでも一致した。金融危機の克服へ各国が協調して全力を挙げる姿勢を明確にした。

 行動計画は、冒頭で、例外的な行動が必要とし、各国が大胆な政策をためらわないことで合意した。アメリカの公的資金注入については「必要に応じ、公的資金、民間資金の双方により資本を増強することができるよう確保する」として、アメリカを含めて公的資金注入を検討することを確認した。中川財務相は、「日本も万一に備えて公的資金注入の検討を始めたと報告した」と述べた。 市場の金融不安に対しては、金融システム危機に直結する重要な金融機関については「破綻を避けるため、断固たる措置をとり、あらゆる手段を活用する」と強調し、主要金融機関は破綻させない意思を明確にさせた。

 信用不安から資金取引が滞っている短期金融市場の流動性確保についても「すべての必要な手段を講じる」と表明した。


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[アメリカ経済]

(1)アメリカ公的資金策ー日本と比べれば3合目(10/5) ***

 1990年代からの日本の金融危機に例えると、アメリカの公的資金対策はまだ3合目といえる。99年に公的資金を使った不良債権処理の仕組みである整理回収機構ができた。今回のアメリカの仕組みに似ている。だが、取引企業は相手が銀行から回収機構に代わることを嫌がり、銀行もイメージが悪くなるため、不良債権処理はなかなか進まなかった。このときが今のアメリカだとすると、まだ先がある。

 日本では、当時、大型の過剰債務企業の処理は巨額の損失が迫られるため、どの銀行も本格的な処理に及び腰であった。政府は03年に産業再生機構を発足させ懸案だったダイエーなどの処理を進めた。多くの銀行が99年に公的資金による資本注入を申請し、後に自力増資も実施し自己資本を拡充した。巨額損失に耐えられる体力を備えたので、不良債権処理が進んだ。一方で、りそなグループは、処理が遅れ経営悪化で実質国有化された。

 アメリカが日本と同じ道をたどるならば、公的資金の資本注入制度ができる。住宅価格の下落が止まらないと、不良資産がさらに拡大し、新たな公的資金が必要になる。実質国有化銀行が生まれる可能性も皆無ではない。


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[欧州経済]

(1)欧州金融機関・当局、危機拡大阻止へ対応急ぐ(10/6) ***

 経営困難に陥った欧州の金融機関の救済策や経営強化策が、相次いでまとまっている。ベルギー政府は、金融大手フォルティスのベルギー部門などを、仏大手BNPパリバが買収すると発表した。ドイツでは、不動産金融大手ヒポ・レアルエステートに対する最大500億ユーロ(約7兆2千億円)の資金支援が決まった。アメリカ発の金融危機の波及で、欧州各国の政府、金融機関は対応を迫られており、危機拡大阻止に向けた動きが今後も相次ぐ見通しだ。

 欧州の金融機関が経営難に陥っているのは、アメリカの危機が飛び火し、欧州短期金融市場の機能がマヒしていることがある。欧州の銀行は市場からの資金調達に依存する度合いが高く、信用収縮の影響が大きくなっている。サブプライムローンの証券化商品に積極的に投資したところも多く、市場では銀行経営の先行きには警戒感が強まっている。リーマン破綻後に銀行間市場で欧州の銀行に資金を出す米銀が減り、資金繰りが急速に悪化したためだ。

 金融危機の対応を巡り、英仏独など関係国政府は、いずれも破綻を回避する方針で一致している。公的資金投入を含む救済策を打ち出した。市場では、「欧州銀行の破綻リスクを警戒する空気は今後も続く」との見方が多く、金融不安が収まる見通しは見えない。


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