12月第1週(11/30〜12/6)(最高3つの*)

メインテーマ: 米、昨年12月から景気後退
その他のテーマ: 金融機関十数社資本増強、総額4兆円
日銀の資金繰り対策、銀行経由で間接支援
米、歯止めなき失業増
欧州、同時に大幅利下げ

[金融市場]

(1)金融機関十数社資本増強、総額4兆円(12/2) **

 金融危機を受けて最初に動いたのが、三菱UFJだ。10月末に優先株で3,900億円、普通株で6,000億円の資本増強計画を公表した。9月に米大手証券モルガン・スタンレーに90億ドルの資本支援を打ち出すなど、三菱UFJは資本の出し手だったが、財務戦略を一気に守りへと方向転換した。みずほフィナンシャルグループや三井住友フィナンシャルグループも資本増強で追随した。野村ホールディングスや財務力で見劣りする一部の生保も検討を余儀なくされた。農林中金は、1兆円超の資本を傘下の信用農業協同組合連合会や農協から調達する計画を公表した。

 上場企業にとり、普通株の発行は最低コストの資本調達手段だ。三菱UFJが先に公募増資をすれば、投資家の引き受け余力は小さくなる。他の大手銀行は先を越されたと悔しがり、より高コストの証券の発行を軸に資本増強を検討中だが、将来の収益の重荷になりかねない。


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(2)日銀の資金繰り対策、銀行経由で間接支援(12/3) 

 日本銀行は、企業金融を円滑にするため、社債などを担保にした新たな資金供給策を決めた。金融危機時の98年にとった制度を参考にしたが、当時より資金供給量も拡充し、金利も低くするなどの工夫をした。だが、日銀が資金供給を増やしても、資金繰りの苦しい企業に資金が届かなければ、追加策の検討を迫られる可能性がある。

 今回は、日銀が銀行から担保として受け取る社債やコマーシャルペーパー(CP)、ローン債権など、民間企業債権の格付け条件を緩和した。その担保の範囲で、制限なしに低利に資金を供給する。日銀は今でも社債やCPを担保に認めているが、入札方式の資金供給に限定している。新制度では、原則として希望する銀行すべてに資金を回すので、日銀に社債などを担保として受け取ってもらえる可能性が高まる。その分銀行は企業が発行した社債などを引き受ける余力が増し、企業に資金が渡りやすくなるということだ。金利水準は、政策金利の誘導目標である無担保コール翌日物の0.3%だ。返済期限が最大3ヶ月の資金を翌日物と同じ低い金利水準で調達できるようになる。上昇傾向にある2〜3ヶ月物の金利が落ち着く効果もあると日銀は期待している。

 銀行からは、迫力不足という声も多い。企業の業績は急速に悪化しており、以上の政策を行っても銀行がCPの買い取りや融資を増やす保証はない。銀行関係者は、もう一歩踏み込んで日銀がCPを企業から直接買い取るように求めているが、日銀は慎重だ。

 また、資金繰り支援の対象となるのは、信用力が高い大企業が中心だ。資金繰り悪化が深刻な中小・零細企業への恩恵は、今回の対策では期待しにくい。政府は、中小・零細企業向けの対策としては、第二次補正予算案に信用保証協会による中小企業向け融資保証枠の拡大を盛り込む方針だ。


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[アメリカ経済]

(1)米、昨年12月から景気後退(12/2) ***

 アメリカの景気循環の山と谷の時点を決める全米経済研究所(NBER)が、昨年12月からの景気後退局面入りを認めた。今年はじめから雇用の不振が先行し、深刻化した金融危機が追い打ちをかけた。現在も雇用の大幅減と、金融不安の負の連鎖は止まらない。来年以降、いつ景気が反転するかは不透明だ。

 90年と01年に始まった直近の二回の景気後退は、いずれも8ヶ月だった。今回は、金融危機の深まりと経済活動の縮小が併発している点が特に深刻だ。雇用や所得の不振から、景気後退があと半年続く可能性が高いという意見もある。今回と比較の対象となるのは、16ヶ月にわたった73年と81年を始点とする二回の景気後退だ。ともに、石油危機を伴った。それ以上となると、29年の世界恐慌時の43ヶ月までさかのぼる。

 本来は景気後退に遅れて反応するとされる雇用の指標は、今回景気後退とほぼ足並みをそろえて悪化した。雇用者数は、9,10両月は20万人を超す減少で、11月も、市場予想では33万人の大幅減少である。失業率も、15年ぶりの高水準となる6.8%が見込まれる。企業の動向は、業種を問わず暗いニュースが続く。中でも、5万人を超す人員削減に動くシティグループなど金融業は厳しい。9月末で破綻の懸念のある問題銀行は、全米で171あり、3ヶ月前より5割近く増えた。不良債権を生む悪循環の根にある住宅の値下がりが止まらないためだ。

 今回の景気後退に入る前の73ヶ月の景気拡大は、住宅に絡む新種のローンや証券化などが先導した金融景気の印象が強かった。最近は、金融機能の逆送といえるような信用収縮が激しく、雇用、住宅とも、市況の低迷は来年いっぱい続くとの見方も多い。景気後退は、第二次大戦後最長となる2年も視野に入っている。


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(2)米、歯止めなき失業増(12/6) ***

 アメリカの雇用削減は、金融危機を境に歯止めがかからなくなってきた。アメリカ労働省の雇用統計によると、年初から11月までの雇用者数の減少幅は、累計で191万人に達し、このうち65%は証券大手リーマン・ブラザーズが破綻した9月からの3ヶ月で占める。建設や製造業に加え、金融などサービスの不振も著しい。主要企業の人員削減計画も相次ぎ、08年の雇用者数の減少が200万人を突破するのは確実だ。

 今年の失業者数は、11月まででITバブルの崩壊や同時テロの影響などで176万人の減少となった01年を上回る。11月は、これまでけん引役だったサービス産業が、全体で37万人も減らした。低迷が長引く製造業でも、回復の兆しが全く見えない。


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[欧州経済]

(1)欧州、同時に大幅利下げ(12/5) ***

 欧州の中央銀行が、4日相次いで政策金利を大幅に引き下げた。欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ導入以来最大の0.75%引き下げ、政策金利を2.5%とした。英イングランド銀行は1.0%引き下げ、政策金利を2.0%とした。域内の中央銀行が同時利下げを実施するのは、3ヶ月連続だ。インフレ懸念が大幅に後退したことから、大型の財政出動を本格化した各国政府と足並みをそろえ、景気を下支えする。世界的な景気減速でエネルギー価格が下落したことも、ECBの利下げを後押しした。ユーロ圏の11月の消費者物価指数は前月比で2.1%と、前月に比べ1.1%低下し、インフレ圧力が弱まった。ユーロ圏よりも景気の冷え込みが目立つイギリスでは、政策金利が2.0%となり57年ぶりの過去最低水準を記録した。1694年の創設以来の最低水準に並んだ。イギリスでは、企業向け貸し出しが滞る懸念が強まっている。異例の低金利政策で、金融サービスの機能回復を目指す。

 ECBとイングランド銀行は、10月にFRBと協調利下げを実施した。11月には、スイス国立銀行など欧州の中央銀行と同時利下げに踏み切った。3ヶ月連続の金融緩和で、欧州の各国中央銀行は、金融市場の不安心理の払拭を図る。


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