11月第5週(11/23〜11/29)(最高3つの*)

メインテーマ: 「米、追加金融対策77兆円」
その他のテーマ: 「設備投資抑制強まる」
「鉱工業生産、前月比3.1%下落」
「地銀27行、最終赤字に」
「求人倍率0.8倍に低下」
「米シティ救済、資産29兆円に政府保証」

[企業部門]

(1)設備投資、抑制強まる(11/24) ***

 日本経済新聞社がまとめた08年度の設備投資動向調査(1,627社)で、全産業の設備投資額は、約29兆6,615億円で、当初計画比で、1.8%減少した。世界景気の急速な冷え込みで、自動車や電機などが下方修正するなど投資抑制の動きが広がり始めた。前年度実績比では2.4%増と6年連続増だが、伸び率は07年度より4.7%低下した。金融危機の実態経済への影響が強まる中、企業は更なる抑制に動いており、最終的には前年度割れとなる可能性もある。

[2008年度設備投資修正計画]
社数 当初計画比増減率
全産業 1,627 −1.8%
 (電力を除く) 1,617 −2.0%
製造業 835 −3.1%
非製造業 792 0.2%

 内閣府が発表した7〜9月期のGDP速報値では、設備投資は前期比1.7%減と三・四半期連続で減少した。日経調査は大企業が中心だが、中小企業を含めれば投資を抑える動きは、一層強まっていると見られる。

 また、半年から9ヶ月先の設備投資動向を占う機械受注統計(船舶・電力を除く)も、7〜9月期は前期比で10.4%減だ。景気後退により経営者のマインドは冷え込んでおり、09年度の設備投資は今年度を下回るのは確実だろう。


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(2)鉱工業生産、前月比3.1%低下(11/28) ***

 経済産業省が発表した10月の鉱工業生産指数は、102.3となり、前月比3.1%低下した。11月以降も生産の低下が続く見通しだ。世界的な景気減速を背景に、自動車などの内外需が急速に減退し、在庫も増えている。生産・在庫調整が長引く可能性が強まってきた。

 業種別には、自動車などの輸送機械、IT関連の電子部品・デバイス、半導体製造装置をはじめとする一般機械の三業種が、全体を押し下げた。

 先行きも減産の動きが続く見通しだ。10〜12月期は前期比8.6%のマイナスとなる見通しだ。四・四半期連続の低下で、暦年ベースでも、08年が02年以来6年ぶりの前年比マイナスとなるのは確実だ。


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[金融情勢]

(1)地銀27行、最終赤字に(11/23) ***

 上場する地方銀行87行・グループの08年9月中間期決算は、連結純利益の合計が約1,200億円にとどまり、前年同期から71.6%減った。約三分の一の27行が最終赤字となった。不動産・建設業向けを中心に不良債権処理損失が増加したほか、金融市場の混乱を受けて株式など保有有価証券にからむ損失も膨らんだ。

 本業の儲けを示す実質業務純利益は、約6,600億円と前年同期比24.5%減少した。上場地銀全体で500億円以上保有していたリーマン・ブラザーズ債や投資信託の減損損失が大きく響いた。新たな収益源と位置づけるリテール業務も不振で、株価下落により金融商品の販売が低迷したため、手数料収入なども約2割減となった。

 本業が苦戦する中で、さらに重荷となったのが不良債権処理だ。融資の焦げ付きに備えて積み増した貸倒引当金など不良債権処理損失は、約4,700億円と前年同期より3割以上増えた。原材料高や地方経済の低迷で、中小企業の倒産が増えたほか、新興不動産企業の経営破たんで大規模な損失を被ったケースも続発した。

 そのうえ有価証券の減損処理が収益の足を引っ張った。保有する株式・債券などの時価が、取得価格に比べて5割以上下落したり、3割以上下落して回復の見込みが立たなかったりする場合は、取得価格との差額を損失計上しなければならない。9月末にかけて株価が大きく下落したのが打撃であった。

 09年3月期決算に向けた先行きも不透明だ。倒産の増加傾向も歯止めがかからない上、株価は10月以降一段と下落している。現在の株価水準が続いた場合、来年3月末にさらなる減損損失の発生は免れない。


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[雇用情勢]

(1)求人倍率0.80倍に低下(11/28) ***

 雇用情勢の悪化が鮮明になってきた。厚生労働省による10月の有効求人倍率は0.80倍と、前月を0.04倍下回った。前月比で下がるのは9ヶ月連続で、04年5月以来4年5ヶ月ぶりの低水準となる。

 有効求人倍率は公共職業安定所で職を探している人一人当たりに何件の求人があるかを示す。10月は、有効求職者数が2%増えた一方、企業の求人が2.1%減り、倍率が下がった。有効求人倍率の1倍割れは11ヶ月連続で、1倍割れの道府県も39に拡大した。


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[アメリカ経済]

(1)米シティ救済、資産29兆円に政府保証(11/25) ***

 アメリカ政府は、経営難に陥ったアメリカ銀行大手シティ・グループに対して、金融安定化法による公的資金を使った大規模な救済策を発表した。シティが抱える約3,060億ドル(29兆円)の不良資産について、損失が発生した場合に大半を政府が埋め合わせることを保証するとした。約1兆9千億円の資本注入も追加で実施する。金融危機の深刻化を防ぐため、個別の金融機関としては過去最大の公的資金の投入に踏み切る。ブッシュ大統領は、他の金融機関にも救済策を検討する可能性を示唆した。

 政府保証は、住宅ローンや商業用不動産向けのローンなどで抱える不良資産が対象だ。約3,060億ドルのうち、シティは当初、190億ドルを自ら損失処理するが、その後生まれる損失の10%はシティ、90%は政府が負担する。

 政府は10月、シティに250億ドルの資本注入を実施したばかりだ。今回は別に優先株で200億ドルを注入するほか、シティは損失の埋め合わせの見返りに70億ドルの優先株を発行し、政府が引き受ける。これを含めると、シティの資本注入の総額は520億ドルに達する。優先株の配当は、初回の5%に対して今回は8%と高めにする。シティは公的資金と引き換えに、役員報酬の制限や配当の制限を受け入れる。普通株の配当は今後3年間、一株当たり1セントを超えられず、無配に近い状態が続く。

 シティは生き残りのため、自力増資や再編、人員削減などを検討してきたが、市場は評価せず、株価は先週1週間で60%近くも下落していた。

 一方、米紙によると、シティは本体とは別に投資専門会社などに1兆2,000億ドル程度の簿外資産を持つ。追加の損失もくすぶり、今回の救済策が十分かどうか予断を許さない面もある。


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(2)米、追加金融対策77兆円(11/26) ***

 アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、個人向けの信用収縮を和らげるのを目的に、最大で8,0000億ドル(約77兆円)に上る新たな金融対策を発表した。ローンを裏づけに発行した証券化商品を買い入れるのが柱だ。住宅ローン関連で6,000億ドル、自動車、クレジットカード、学資などの消費者ローンと一部の小企業向けローンで2,000億ドルの資金枠をそれぞれ設定した。金融危機により資金調達に苦しむ個人を支援し、金融機関の経営を安定化させ個人消費や住宅投資のてこ入れを狙う。

 FRBが住宅ローンの関連で買い入れる対象は、9月に政府が管理下に置いた米連邦住宅抵当公社と米連邦住宅貸付抵当公社が持つ債権や保証をつけた住宅ローン担保証券(MBS)が中心だ。住宅ローンなどの債権は1,000億ドル、MBSは5,000億ドルの規模で買い入れる方針だ。

 消費者ローンと一部の小企業向けのローンの関連では、複数のローンをまとめて発行した資産担保証券(ABS)と呼ばれる金融商品の保有銀行に、ニューヨーク連銀が最大で2,000億ドルの貸し出しをできるようにする。政府は当初、公的資金で不良資産を買い取る方針だったが、金融機関の資本注入を優先するため撤回した。公的資金の大半は注入に回るため、FRBは新たにリスクをとり、個人向け金融商品の事実上の保有に踏み切った。

 MBSやABSの市場は、景気の悪化に伴うローンの焦げ付きから格下げされる商品が多く、投資家が敬遠している。市場の機能が低下し、ひいては住宅ローンや生計に関わる融資まで滞る恐れが広がってきた。 今回のFRBの対策は、金融機関向けの公定歩合による直接貸し出し、企業が発行するコマーシャルペーパーの買い入れなどに続く措置だ。銀行、企業、個人とすべての段階で、FRBは市場に介入できる手段を多様化した。


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