11月第4週(11/16〜11/22)(最高3つの*)
メインテーマ: | 「7〜9月実質GDP年率マイナス0.4%」 |
その他のテーマ: | 「日銀当座預金に金利」 |
「金融サミット、首脳宣言『あらゆる措置』」 | |
「ロシア経済、減速鮮明」 |
(1)7〜9月実質GDP年率マイナス0.4%(11/17) ***
内閣府が発表した7〜9月の国内総生産(GDP)の速報値は、実質で前期比0.1%減、年利換算で0.4%減となった。約7年ぶりに二・四半期連続のマイナス成長を記録した。世界的な金融危機と景気低迷を受けて企業の設備投資が減少し、輸出や個人消費も伸び悩んだ。7〜9月期は、日米欧がいずれもマイナス成長となり、世界同時不況の懸念が広がってきた。
02年2月からの戦後最長の景気回復局面は、昨年末に終ったとの見方が多い。景気の低迷は来年まで続くとの見方が大勢だ。
二・四半期連続の実質マイナス成長は、前回の景気後退局面の01年以来だ。当時は、4〜6月期から三・四半期続けてマイナス成長となった。生活実感に近い名目GDPは、前期比で0.5%減、年率で2.1%減だ。5年半ぶりに二・四半期連続のマイナス成長となった。実質GDP成長率に対する内需の寄与度は0.1%のプラスで、輸出から輸入を引いた外需は0.2%のマイナスで、02年7〜9月期以来の大きなマイナス幅となった。
項目別に見ると、設備投資が前期比1.7%減と、三・四半期連続で減少した。世界的景気後退懸念や収益環境の悪化を受けて、企業が設備投資を抑えている。GDPの五割強を占める個人消費は0.3%増え、二・四半期ぶりの増加に転じた。猛暑でエアコンや衣服の販売が伸び、北京五輪の効果で薄型テレビやDVDレコーダーの売れ行きが好調だった。ただ、4〜6月期の0.6%減からの反発力は弱い。
[08年7〜9月期の前期比GDP 増減率(実質)の内訳] |
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GDP | −0.1% |
(年率換算) | −0.4% |
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | |
個人消費 | 0.3% |
住宅投資 | 4.0% |
設備投資 | −0.7% |
政府消費 | 0.1% |
公共投資 | 0.4% |
輸出 | 0.7% |
輸入 | 1.9% |
(1)日銀、当座預金に金利(11/17) **
日銀は短期金融市場へ大量の資金供給を続けている。新たな預金金利は、短期金利の事実上の下限となるため、コールレートが大きく振れることを回避しつつ、積極的な資金供給を行うことができる。
資金需要が高まる年末に向け、日銀がより潤沢な資金供給に踏み切れば、短期金利が低下して政策金利0.3%の誘導水準を維持できなくなる恐れがあった。このため、10月31日の金融政策決定会合で、09年4月までの臨時措置として新制度の導入を決めた。
民間の銀行や証券会社が日銀に持つ当座預金は無利子だった。預金の引き出しに備えて積み立てを義務付けられている所要準備額を超える部分について、16日から0.1%の金利をつければ、金融機関がこれより低い金利で取り引きする理由がなくなる。
金融機関が担保を差し入れれば、0.5%の金利で自由に資金を借りられる「補完貸付制度」も日銀は活用する。これは、短期金利の事実上の上限となる。無担保コール翌日物金利は、0.1〜0.5%の範囲で動くことになる。
(1)金融サミット、首脳宣言「あらゆる措置」(11/170) ***
日米欧と中国、インドなど新興国の二十カ国・地域(G20)による緊急首脳会合(金融サミット)は、金融安定化に向け、「あらゆる追加的措置をとる」との首脳宣言を採択し、閉幕した。 今回のサミットは、米欧を中心とする金融危機と世界的な景気悪化に歯止めをかけるため、新興国を含めた新たな枠組みで短・中長期の国際政策協調を探るのが狙いだ。首脳宣言とは別に、金融危機の再発防止のための具体的な措置を盛り込んだ行動計画も決め、規制・監督の強化、国際金融改革など5つのテーマに合わせせて五十近い項目を盛り込んだ。項目の多くは来年3月までの短期的な措置とする一方、信用格付け会社への監督強化や、ヘッジファンド規制など各国の意見が対立し、調整が難しいものは、事実上先送りとした。
宣言では、アメリカ発の金融危機の原因について、いくつかの先進国の当局が金融市場のリスクや金融の技術革新についていけなかったと分析した。金融危機による信用収縮などで世界的に景気減速が広がっている実情を踏まえ、一段の協調策が必要と指摘した。具体的には、金融システム安定化のためあらゆる措置をとるほか、協調利下げなどの金融政策や内需刺激のための追加財政政策の必要性にも言及し、協調姿勢をアピールした。
また、新興国、途上国向け支援に国際通貨基金(IMF)や世界銀行の機能や財政力を強化する方針を正式に表明した。日本政府によるIMF向け一千億ドルの資金融通提案が後押しした格好だ。このほか宣言が重点を置いたのは、保護貿易主義の排除だ。金融危機で各国がカネやモノの流れを規制すれば経済がより混迷しかねないためで、参加国が「今後一年は投資やモノとサービスの貿易に新たな障壁を設けない」との異例の文章を盛り込んだ。
(1)ロシア経済、減速鮮明(12/20) ***
ロシア経済の減速が、鮮明になってきた。08年の実質国内総生産(GDP)の伸び率は、当初見通しの7〜8%台から6%台に下方修正され、09年は3%台にとどまる見通しだ。新興国の一角として存在感を高めたロシアは、金融危機と原油価格の下落で転機を向かえている。経済成長を求心力にしてきたメドベージェフ政権にとり、逆風となりそうだ。
ロシア経済発展省は、原油価格の下落を受けて6〜7%と見ていた来年のGDPの伸び率が3.5%になるとの見方を示した。原油価格は、既に50ドルを割った。同省が3.5%成長の条件としている50ドルを下回れば、更なる下方修正もありえる。
世界銀行も同様の見方をしている。さらに、純資本流出は今年の500億ドル(4兆8,000億円)から来年は1,000億ドルに膨らみ、「ロシア売り」が続くとの見方を示した。
財政も揺らぎ始めた。クドリン財務相は、石油価格が1バレル70ドルを下回れば、財政収支は赤字になると試算している。同相は財政支出の削減を求めているが、プーチン首相は、石油輸出代金の一部を積み立ててきた安定化基金を財政赤字の穴埋めに利用する決定をした。残高1,923億ドルのうち、政府系ファンドとして国内・外国株などに投資できる分(611億ドル)を除く1,312億ドルが対象だ。当面手をつけずに
外貨などで運用する方針だった財務省は、転換を余儀なくされた。安定化基金は、ロシア経済を支える最後の砦だ。減り方しだいでは投資家の不振を招き、通貨ルーブル安や株安が加速する懸念もある。