7月第1週(6/29〜7/5)(最高3つの*)

メインテーマ: 「日銀短観、景況感3期連続悪化」
その他のテーマ: 「タクシー参入、再規制へ」
「路線価平均10%上昇、二極化も鮮明」
「欧州0.25%利上げ、ECB4.25%」

[景気動向]

(1)日銀短観、景況感3期連続悪化(7/1) ***

 日本銀行の6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す景況判断指数(DI)は、大企業製造業でプラス五と、3月の前回調査から6ポイント低下した。原油などエネルギー・原材料価格の高騰が響き、三・四半期連続で悪化した。大企業製造業は、今年度の経常利益が7年ぶりに減益になると見込んでいる。設備投資計画は伸びが鈍化し、景気の足取りは一層弱まっている(企業の業況判断DIは、景況感が良いと答えた企業の割合から、悪いと答えた企業の割合を引いた値)。

 大企業非製造業は、プラス10と前回調査から2ポイント低下した。中小企業は、製造業がマイナス10と前回調査から4ポイント低下し、非製造業はマイナス20で景況感の悪化が深刻になっている。

 また、企業収益は、厳しさを増している。今年度の大企業製造業の経常利益見込みは、前年度比9.9%減と7年ぶりの減益となった。背景にあるのは、原油などエネルギー・原材料の高騰だ。販売価格への転嫁の遅れが収益を圧迫している。  企業心理の悪化は、実体経済へと波及している。08年度の大企業製造業の設備投資計画は、前年度比6.7%増と、6月時点での調査としては02年度計画以来の低い水準となった。

[業況判断指数DIの動き]
大企業製造業 5(−6)
大企業非製造業 10(−2)
中小企業製造業 −10(−4)
中小企業非製造業 −20(−5)
(カッコ内は前回比)


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[産業]

(1)タクシー参入、再規制へ(7/2) **

 国土交通省は、タクシーの供給過剰問題で、09年をメドに地域の競争状況に応じた参入や増車の規制に乗り出す方針を固めた。

 国交省は、02年に需給調整規制を撤廃して原則自由に事業者が参入できる仕組みに改めた。新制度は、規制強化となり規制緩和政策に逆行するとの批判を浴びそうだ。

 02年の改革でタクシーの新規参入は原則自由になったが、過当競争を防ぐために緊急調整地域制度を設けた。ただ、この制度は営業収入の減少、車両や事故の増加など適用条件を限定しており、簡単には発動できない。国交省は、緊急調整を発動しやすくする新制度を導入することにした。自由化以前のように全国一律の台数制限はしないものの、地域の状況にあわせた地域指定制度を導入する。競争の激しい地域では、国交省がタクシー会社に減車を呼びかけ、減車したタクシー会社は何らかの特典を受けられるようにする。適用期間は原則として3年間である。競争が深刻でない地域でも、自由な新規参入を維持する条件として、新たに運転手の労働条件など一定基準を設ける。

 タクシー業界の規制を再び強化する背景には、一部地域でタクシーの台数が増えすぎ運転手の賃金が低下したと、与野党などから批判が高まったことがある。しかし、規制緩和以降は、低料金タクシーや介護タクシー、効率的配車システムなどの新サービスなど、利用者にとり選択肢が広がった。政府の規制改革会議は、自由化して健全な競争が広がれば、タクシー台数はいずれ適正化すると主張している。


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[地価]

(1)路線価平均10%上昇、二極化も鮮明(7/2) ***

 国税庁が発表した08年分の路線価(1月1日現在)で、全国の標準宅地の平均路線価は前年比10.0%上昇した。3年連続の上昇で、伸び率は前年より拡大した。ただ、景気の足踏みや資材価格の高騰で、足元の不動産不況は冷え込んでいる。地方の下落が続くのに加え、都心部の伸びも鈍化しており、地価上昇はすでにピークを過ぎたとの指摘も出ている。

 路線価は、東京、神奈川、愛知の三大都市圏の都市部を中心に十四都道府県で上昇した。上昇した県は作年より二つ増えた。都心では、不動産ファンドによる物色に加え、外国ブランド店の活発な出店などが路線価上昇につながった。ただ、東京や大阪などの路線価の最高地点を見ると、前年度からの上昇率が前年を下回るなど変化の兆しも表れている。関東財務局が、6月立川駅北口の合計6.5ヘクタールの国有地を入札で売りに出したが、応札者はいなかった。以前なら購入希望者が殺到した可能性が高い利便との見方が強い。

 都心部でもコスト高を懸念し、分譲マンションなどの新規着工を見送る動きが出てきた。景気の足踏み状態に加え、資材価格の高騰、金融機関の住宅ローンの金利引き上げなどが影響しているという。

 二極化も鮮明で、地方の二十八県では依然、路線価が下落している。島根県の最高地点の路線価は、ピーク時から74%も下落している。若者の県外流出により、全国でもっとも高齢化が進んでおり、3月には県人口が83年ぶりに73万人を割り込んだ。今後の地価動向については、人口流出が続く地方は下落が続きそうであり、路線価は今年がピークで、三大都市圏でも来年以降前年度比上昇率は下落する可能性がある。


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[欧州経済]

(1)欧州0.25%利上げ、ECB4.25%(7/4) ***

 欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏金利15カ国に適用する政策金利を0.25%引き上げ、年4.25%とすることを決めた。利上げは昨年6月以来で、13ヶ月ぶりだ。トリシェ総裁は、「インフレ抑制を図るのが最優先の目標」と述べた。これにより、欧米間の金利差拡大となり、ドル安が市場の懸念要因となる可能性がある。

 トリシェ総裁は、「物価安定が成り立つ水準を超えた」ことが利上げ決定の理由とした。ユーロ圏内の6月の消費者物価上昇率は、前年同月比で4%と99年の通貨統合以来の水準だ。07年9月から、政策目標である2%未満を上回っている。ユーロ圏でも、ガソリン、食品といった生活必需品が値上がりし、個人の購買力が低下するとの懸念が強まっている。

 今後の金融政策については、総裁は、「方向性はない」として、金融市場で浮上する追加利上げには言質を与えなかった。ただ、アメリカを震源とする金融不安の長期化で株式や不動産から逃れた投資マネーが商品相場に流入している。新興国の需要拡大にも支えられ、世界的なエネルギー価格の上昇が早期に収拾する見通しは立たない。

 一方で、1年ぶりに金融引き締めの再開は、ユーロ圏の景気にも影を落とす懸念も出始めている。なお底固い欧州景気も、08年後半から減速する見通しで、ECBも難しい対応が迫られている。


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