6月第2週(6/15〜6/21)(最高3つの*)

メインテーマ: 「高成長維持に黄信号も(インド経済)」
その他のテーマ: 「6月月例報告、景気判断を下方修正」
「銀行、中小向け融資細る」

[景気動向]

(1)6月月例報告、景気判断を下方修正(6/17) ***

 政府は、月例経済報告の関係閣僚会議を開き、景気の基調判断を3ヶ月ぶりに下方修正した。5月の「足踏み状態」から「足踏み状態にあるが、一部に弱い動きが見られる」に修正された。項目別では、輸出、生産、企業収益の企業関連の3つについて判断を引き下げた。政府は、依然景気は横ばい状態にあるとしているが、企業部門を中心に弱さが目立ってきた。

 政府は、個人消費や設備投資など内需が横ばいで推移しているとして、景気は踊り場の状態にあるとの認識を変えていない。ただ、先行きはアメリカの景気後退懸念や、原油高などから、下ぶれリスクが高まっていると指摘した。


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[金融情勢]

(1)銀行、中小向け融資細る(6/18) ***

 銀行の中小企業向け融資が減少している。日銀がまとめた07年度末の国内銀行の中小向け融資残高は、06年度末から1.8%減った。これは、3年ぶりで4月以降も減少が続く。景気減速で中小企業の資金需要が後退したほか、倒産の増加などを受け、銀行が融資条件を厳しくしたためだ。原材料高などに苦しむ中小企業が増えるなか、資金繰りの悪化に融資規制が追い打ちをかける悪循環も懸念される。

 日銀によると、国内銀行の07年度末の中小向け融資は約182兆円、全体の貸出金は404兆円と1.4%増えており、大企業向けが全体の伸びを牽引する中で中小向けの落ち込みが目立つ。メガバンク三行合計の中小向け融資残高も、07年度末で115兆円と06年度比で2.3%減である。三行の中小向け融資残高は、公的資金注入の見返りに拡充を求められた04年度の水準に逆戻りした。

 ここに来て融資が減少傾向となっている最大の理由は、国内景気の減速だ。昨年度の企業倒産は、18%増の1万1,300件となり、銀行は貸し倒れの拡大を懸念して新規融資の審査や融資先企業への目配りを厳しくしている。三井住友フィナンシャルグループは、08年度に貸倒引当金の積み増しを2割多い1,800億円増やす予定である。


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[インド経済]

(1)高成長持続に黄信号も(6/21) ***

 インドのシン首相は、自ら国民向けに発表した石油関連の統制小売価格の見直しは、抑制気味であった。ガソリンと経由は10%程度の引き上げにとどめ、低所得者用の灯油は据え置いた。1年以内に行われる総選挙をにらみ、国民に痛みを強いる施策を回避したいとの思惑がにじむ。特に神経を尖らせているのが、過去に政権与党を敗北に追い込んだインフレだ。物価上昇率が2桁に達する中で、ガソリンなどの統制価格の引き上げは、政府の選択肢にはなかった。

 最近のシン政権は人気取り政策を乱発している。代表例が、今年度の農民の借金減免だ。小規模農家は、政府が全額借金を肩代わりし、それ以外は残高の25%分を補てんする徳政令だ。人口の6割近くを占める農民の支持確保へ,米の政府買入価格を最大で前年比30%引き上げる可能性も示唆している。選挙シフトを鮮明にするシン政権は、原油高にもかかわらず今年度の経済成長が8%台の高水準を確保できると強気だ。確かに、足元の消費は底固い。外国企業の大型投資も相次ぐ。

 ただ、景気の先行きには、一部で黄色信号も点灯し始めている。インド経済の躍進を代表するIT業界の大手三社の1〜3月期は、売り上げの過半を占めるアメリカ企業からの受注鈍化で、それまでの2桁の増益から1桁の小幅増益にとどまった。  インド準備銀行(中央銀行)は、11日インフレ退治へ1年3ヶ月ぶりに利上げを実施した。金融引き締めは、設備投資の足かせになりつつある。

 また、今年度の財政赤字は、対GDP比で4.5〜4.7%に上昇すると予想されている。財政赤字の拡大は、金利の高止まりを招きかねない。

 昨年度まで3年連続で9%台の高成長を達成してきたインド経済は、インフレ対策と成長維持の両立という難題の解決を迫られている。


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