7月第5週(7/27〜8/2)(最高3つの*)
メインテーマ: | 「6月就業率、前年下回る」 |
その他のテーマ: | 「4〜6月1.9%成長、アメリカ、外需依存強める」 |
「エコノミスト緊急調査、景気は後退局面で一致」 | |
「WTO閣僚会議決裂ー保護主義の恐れも」 |
(1)6月就業率、前年下回る(7/30) ***
雇用情勢の悪化懸念が広がっている。総務省の労動力調査によると、6月の完全失業率は4.1%と06年9月以来の水準に上昇した。就業率(15〜64歳のうち職についている人の割合)は、5年2ヶ月ぶりに前年同月の水準を下回った。資源高の打撃で、運輸業や製造業で就業者数が減っていることが背景にある。
就業率は、この数年景気回復や女性の社会進出を受け、上昇傾向を続けてきた。02年は平均で68.3%だったが07年6月には71.4%まで上昇した。それが、08年6月は失業者が増える中で71.3%に低下し、03年4月以来の前年水準割れとなった。
就業者数は6,451万人で、前年同月比40万人減少し、5ヶ月連続減少した。一方で、完全失業者数は同4万人増え、3ヶ月連続の増加となった。就業者数の変化を主要産業別に見ると、飲食、運輸、製造業などで落ち込みが目立つ。
厚生労働省は、全国の中小企業4,412事業所でのヒアリングの結果を公表した。それによると、原油価格高騰をはじめ資源高が「収益を大きく圧迫している」、「やや圧迫している」と答えた企業は、全体の83.2%にのぼった。特に運輸業では、全体の96.7%が収益を圧迫していると回答した。同省は、資源高による企業収益の圧迫が、雇用情勢の圧迫につながったと見ている。
(1)エコノミスト緊急調査、景気は後退局面で一致(7/31)***
2002年2月から続いた景気回復が途切れ、後退局面に入ったとの観測が広がってきた。経済産業省が発表した4〜6月期の鉱工業生産指数が二・四半期連続で前期比マイナスとなり、景気後退のサインと受け止められている。民間エコノミスト10人に緊急調査したところ、全員が「すでに景気後退に入った」と回答した。踊り場とみる政府の判断も見直しを迫られつつある。
6月の鉱工業生産指数は前月比2.0%低下し、1〜3月期、4〜6月期とも前期比0.7%の低下となった。過去30年では、二・四半期以上続けてマイナスになると例外なく景気後退に入っている。エコノミスト10人のうち、今回の景気拡大のピークの山の時期については、半数の5人が昨年10月ごろと答えている。
景気後退観測の背景には、02年からの景気回復を支えた輸出が鈍ったことがある。アメリカ発の金融不安と原油高などによる世界経済の減速で、日本も6月の輸出額が55ヶ月ぶりに前年割れになった。原材料価格の高騰で企業収益にも下押し圧力がかかり、企業は設備投資にも慎重姿勢に転じている。6月の日銀短観でも、08年度の全産業の設備投資計画は、前年度比2.4%増と6年ぶりの低水準となった。
(1)4〜6月1.9%成長、アメリカ、外需依存強める(8/1)***
アメリカ経済が、外需に頼る構造を強めている。内需の柱である個人消費は力強さに欠け、住宅投資は底打ちの兆しが見えない。ドル安と、中国や産油国の好況による外需の強さが、マイナス成長に陥るのを食い止めている状況だ。
内需の弱さを反映し、雇用情勢が悪化しており、7月の失業率は5.7%と4年4ヶ月ぶりの高水準となった。昨年10〜12月期にマイナス成長に陥ったアメリカ景気は、今年後半も低迷が予想される。
金額 | 増減率(前期比) | |
国内総生産(GDP) | 117,006 | 1.9 |
個人消費支出 | 83,475 | 1.5 |
民間設備投資 | 14,313 | 2.3 |
民間住宅投資 | 3,671 | −15.6 |
民間在庫投資 | −622 | − |
純輸出 | −3,592 | |
輸出 | 15,341 | 9.2 |
輸入 | 19,292 | −6.6 |
政府支出 | 20,563 | 3.4 |
GDPデフレーター | − | 1.1 |
アメリカ経済は、サブプライムローン問題により厳しさを増したが、実質GDPは1〜3月が0.9%、4〜6月が1.9%と何とかプラス成長を維持している。最大の押し上げ役を果たしているのは、輸出だ。政府 支出も堅調だ。輸出から輸入を差し引いた外需と、政府支出の寄与度を合わせると、1〜3月は1.15%、 4〜6月は3.09%に達し、成長率の大半を稼いでいることがはっきりと浮かび上がる。しかし、裏返せば 民間の内需不振は深刻だ。約12兆ドルのアメリカのGDPのうち、約8兆ドルを占める個人消費の寄与度が 2%を超したのは、昨年1〜3月にまでさかのぼる。成長率に対して、1年以上1%前後の低い貢献が続い ている。
住宅投資は、減少局面に入った06年初めの時点で約6,000億ドルの規模があった。四半期で2桁減を繰り返し、4〜6月期には3,671億ドルと約4割も減少した。さらに、大幅な値下がりが続き、市況は回復していない。住宅の値下がりは、ローンと引き換えに物件を担保に取っている金融機関の不良債権を膨らませる。今後も、200万人が直面すると予想される差し押さえは、個人の生活を破綻に追い込むだけでなく、地域経済にも深い傷跡を残す。
アメリカ住宅公社の経営不安など市場の動揺が続き、連邦準備制度理事会(FRB)は、3月に緊急措置として始めた資金供給策を来年1月まで延長する。インフレ圧力が根強い反面、景気の足腰が弱いままなら金融の急速な引き締めにも動きにくい状況だ。
(1)WTO閣僚会議決裂−保護主義の恐れも(7/30)***
農業と鉱工業の貿易自由化ルールを決める世界貿易機関(WTO)閣僚会議が決裂した。大筋合意目前でアメリカとインドの対立が深刻になり、ついに時間切れとなった。中印などの新興国の台頭で、WTO交渉の力学も変わり、合意形成も難しさを増してきた。WTO交渉の漂流で、世界の自由貿易推進の気運もしぼむ恐れが出てきた。
30日未明、日本の財務省にもジュネーブから交渉決裂の一報が入った。世界経済が減速するなかで、各国で保護主義機運が強まっている。交渉妥結は、保護主義を抑える効果が期待されたが、ジュネーブに集った閣僚たちはそれに失敗した。土壇場で決裂するきっかけとなったのが、アメリカとインドの根深い対立だ。
争点は、関税削減で輸入が急激に増えた場合、農産品の関税率を引き上げられる特別セーフガード(緊急輸入制限)の扱いだ。インドのナート商工相は、議長調停案で「基準輸入量の140%に達した場合」という発動用件を事実上撤廃し、途上国や新興国の判断で実施できるようにすることなどを求めた。交渉筋によると、アメリカのシュワブ代表は,インドの主張を踏まえた調停案の修正を拒否した。これにより、交渉は決裂に向かった。
今回の交渉で、アメリカは台頭著しいインド、中国に強硬姿勢で臨んだ。アメリカ交渉団は中印を名指しで批判し、鉱工業品の市場開放で中印に一段の市場開放を迫った。アメリカは、議長提案では分野別関税撤廃は二分野だけでしかも任意となっているだけに、化学や工作機械などアメリカが自由化を期待する分野について,中印の関税撤廃が確実になるように、調停案の書き換えを主張した。中国交渉団は、即座に反発した。アメリカの農業の補助金問題を突き、追加削減を要求した。しかし、実際には食料価格の高騰もあって07年の補助金は、調停案の145億ドル以下の約80億ドルにとどまる。新興国は、アメリカに緊急輸入制限の緩和に加え、補助金の追加削減を求めたが、アメリカは拒否した。