7月第4週(7/20〜7/26)(最高3つの*)

メインテーマ: 「企業の海外収益5.5兆円,新興国で稼ぐ鮮明」
その他のテーマ: 「11年度の基礎的財政収支の赤字、最小でも3.9兆円」
「消費者物価6月1.9%上昇」

[国際収支]

(1)企業の海外収益5.5兆円、新興国で稼ぐ鮮明(7/21) ***

 海外現地法人からの配当や利子など対外直接投資であげた収益額は、07年度に初めて5兆円を突破した。利回りにあたる収益率も9%強と5年で倍増し、債券などの対外証券利回りを大きく上回る。景気低迷のアメリカでは伸び悩むが、自動車の増産や資源投資が膨らむアジアなどの新興国・資源国で収益率向上が目立つ。

 財務省・日銀の国際収支統計によると、07年度の対外直接投資収益の受取額は、前年度比32.9%増の5兆5,525億円と大幅に伸びた。5年前の02年度比で、3倍強に膨らんだ。財務省の法人企業統計で見た07年度の全産業の経常利益の約57兆円の1割近い。直接投資収益は、海外現法からの配当・利子と現法の内部留保額を合わせた額で、海外事業の投資リターンを示す。

  利回りに相当する直接投資収益率も、大幅に向上している。昨年度末の直接投資残高は、約59兆7,000億円と5年間で1.6倍の伸びにとどまったが、残高から計算した07年度の収益率は9.3%と約2倍に伸びた。収益率は、対外投資で先行する米英の11〜12%に近づきつつある。

 背景には、自動車など国際競争力が高い製造業が拡大していることがある。自動車メーカーの海外生産台数は、1,185万台と5年で1.5倍に伸びた。特に、新興国向けの収益率が高まっており、ホンダの08年3月期のアジアでの利益は861億円と、4年前より8割増加している。トヨタ自動車は、中国だけで前期は172億円と4年前の9倍以上に膨らんだ。また、オーストラリアや中南米にはエネルギーや原材料価格の高騰を受けた資源投資が加速している。07年12月末の鉱工業分野の直接投資残高は、2兆1,104億円と、前年比1.5倍に急増した。資源高は、総合商社の収益を押し上げている。

 約610兆円ある日本の対外資産残高(07年末)のうち、証券投資が5割弱を占め、直接投資は1割にとどまる。証券投資の収益率は5%程度に過ぎないが、企業買収などで直接投資を拡大すれば、日本の所得投資はさらに伸びる余地がある(直接投資を含む国際収支表については、「重要30用語」参照)。


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[財政]

(1)11年度の基礎的財政収支の赤字、最小でも3.9兆円(7/23) **

 政府の経済財政諮問会議は、2011年度までの経済財政に関する内閣府試算を発表した。成長率が想定よりも高くなり、歳出削減を最大限実施しても、国・地方の合計の11年度の基礎的財政収支は約3.9兆円の赤字になるとした。今年1月公表の試算よりも悪化しており、11年度の基礎的財政収支黒字化という政府目標は厳しさを増す。

 約3.9兆円の基礎的財政収支赤字は、名目国内生産比では0.7%の大きさである。11年度の基礎的財政収支黒字化を実現するには、もう一段の成長力強化や歳出削減努力などが欠かせないことが確認された。試算ではあるが、増税を含む今後の税制論議に影響を与える可能性がある。

 小泉政権時代に11年度までに基本的財政収支黒字化を実現する基本方針を策定した。国と地方で11.4兆円から14.3兆円の歳出を削減するとした。黒字化のためには、不足する2〜5兆円は経済成長や増税を含む歳入改革で手当てするとされていた。

 (注)基礎的財政収支:公債発行を除いた歳入から、元利払費を除いた歳出を引いた収支のことである。つまり、政策にかかる経費を新たな借金なしでまかなえるかどうかを示す指標である。

[基礎的財政収支の名目GDP比の見通し]
 成長率の状況
歳出削減幅
(06年比)
名目成長率3%以上 名目成長率1%台半ば
14.3兆円 −0.7%(−3.9兆円) −1.1%(−5.8兆円)
11.4兆円 −1.1%(−6兆円) −1.5%(−7.9兆円)


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[物価]

(1)消費者物価6月1.9%上昇(7/26) ***

 総務省による6月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除くベースで前年同月比1.9%上がり、10年5ヶ月ぶりの上昇となった。原燃料費の高騰により、日常品の値上げが広がってきたためだ。賃金が抑制されているため、1970年代の石油危機のような連鎖的インフレは起きていない。ただ、賃金上昇なき物価高は家計を圧迫し、景気の先行きに影を落としている。

 6月は、CPI統計の調査対象の約580品目のうち6割が前年同月比値上がりし、値下がり品目は3割であった。原材料価格の上昇分を最終製品に価格転嫁する動きがじわじわと進んでいる。特に、値上がりが目立つのは、エネルギー・食料品だ。2〜4割の大幅上昇となった。一方、値下がりしている品目は、パソコン、デジタルカメラ、家電製品などである。

 身近な商品の値上がりで消費者心理が冷え込み、個人消費が落ち込めば、物価高と景気悪化が同時進行するスタグフレーションの様相が強まる可能性もある。

 さて、消費者物価上昇率が、日銀が掲げる物価安定の目安の上限の2%に迫ってきた。7月は2%を突破するとの見方が大勢だ。ただ、賃金上昇が抑制されてるため、日銀も当面は金融引き締めは急がず、賃金など物価・景気情勢を注視する構えだ。


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