7月第3週(7/13〜7/19)(最高3つの*)
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「夏ボーナス6年ぶり減」 |
(1)日銀、景気見通し大幅修正(7/16) ***
日銀は、4月にまとめた「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」を中間評価し、景気見通しを下方修正し、物価見通しを大幅上方修正した。ガソリンや食料品価格の上昇で堅調だった個人消費も鈍化し、今年度後半から回復するとしたシナリオは遅れる。アメリカの金融システム不安も再燃しており、09年以降の景気見通しにも下ぶれリスクが大きい。白川日銀総裁は、予想を超す国際商品相場の上昇が景気・物価見通しの修正の要因と指摘した。4月の展望レポートで、消費者物価指数(CPI)上昇率を「08年度央までは1%台前半で推移し、その後はやや低下する」と記述していた。しかし、直後の5月のCPIは前年同月比で1.5%上昇し、見通しを上回る水準に達した。原油価格も2ヶ月強で約3割上昇し、1バレル140ドル台と最高値を更新した。ガソリンや食料品の値上げも続く。今年度のCPIの上昇率の見通しを、4月時点から0.7%上方修正せざるを得なくなった。
白川総裁は、景気が設備投資や個人消費の伸びが鈍化するなどさらに減速しているとして、企業、家計の両部門に弱さが見られ、先行きの景気の下ぶれリスクに注意する必要があるとした。今回の中間調査では、08年度の経済成長率見通しを1.2%に下方修正した。1%台半ばから後半とする潜在成長率を下回る水準にとどまるとした。最大の下ぶれ要因は、交易条件のさらなる悪化である。原燃料価格の高騰で所得が海外に流出し、企業の収益や家計の購買力を弱めている。
白川総裁は、景気の姿、物価の姿を想定すると、いま金利水準を調整する必要はないとしている。日銀の政策委員が「中長期的な物価安定」の理解として示す適切な物価上昇率は0〜2%だが、今夏以降上限の2%を超えるとの市場予測もあるが、景気減速懸念が根強く、日銀の早期利上げは困難との見方が大勢だ。物価上昇と景気悪化が重なる中、金融政策は身動きが取れない状態が続いている。
(1)夏ボーナス6年ぶり減(7/15) **
日本経済新聞社による今夏のボーナス調査の最終集計によると、平均支給額は前年比0.30%減で、不況j後の02年夏以来、6年ぶりのマイナスの伸びとなった。原燃料価格の高騰などによる業績悪化を懸念する企業が人件費を抑制し始めた。これまで全体を牽引してきた製造業では、石油や鉄鋼で前年割れし、非製造業は7割の業種がマイナスの伸びであった。
社数 | 税込み支給額 | 07年夏比増減率(%) | |
全体 | 748 | 831,896円 | −0.30 |
製造業 | 563 | 870,303円 | 0.60 |
非製造業 | 185 | 743,302円 | −2.69 |
今年春の労使交渉での賃上げ率(日経集計)は、1.83%と小幅にとどまった。ガソリンや食品などが値上がりする中で、ボーナス支給額の減少は国内消費を一段と冷え込ませかねない。今回の集計企業数は748社で、平均支給額は831,896円で、伸び率は03年から07年まで1〜3%台を維持してきたが、今夏はマイナスに転じた。
(1)FRB議長、インフレへの警戒強める(7/16) ***
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、議会証言で金融安定化に注力する方針を表明した。一方で、アメリカ経済に難題が多いと認めながらも、景気後退懸念が和らいでいるとの判断を印象付けようとした。インフレへの警戒を強めながらも、当面はアメリカ住宅供給公社への資金供給拡大などを通じて市場を落ち着かせ、慎重な金融政策運営を続ける構えだ。
「多くの金融市場と金融機関はまだかなりの緊張感の下にある」と、議長は金融システムが切迫した状況にあるとの厳しい認識の説明に時間を割いた。議長は、2月には景気の下ぶれリスクに対処するため追加の金融緩和に踏み切る意向を示したが、その後は景気の一段の減速よりも大手金融機関の動揺が目立つ。
ポールゾン財務長官も、住宅公社2社への資本注入や融資に応じる緊急権限の期間を18ヶ月設定するなど、具体案を説明した。公社が直ちに利用する計画はないとしながらも、非常時に備えた枠組みが必要と訴えた。FRBも、監督や規制の手当てが遅れていた投資銀行の破綻に備えた枠組み作りなどを急いでいる。
景気では、議長は、住宅価格の値下がり、雇用悪化、原油や食品などの値上がりを悪材料に挙げた。しかし、下ぶれリスクをにらみ金融緩和を示唆した2月と異なり、政策の重点をインフレに移す構えを示した。
08年の成長率予想も4月から引き上げ、マイナス成長に陥る悲観シナリオはひとまず退けた。議長が目先恐れるのは景気の一段の下ぶれより、食品やエネルギー価格の上昇が、賃金や価格設定全般に波及する方向に働く事態だ。国民の長期的なインフレ予想がつりあがるのを修正するため、利上げの選択肢が浮上してこよう。FRBは、インフレ関連の情報に気を配りながら、景気の足腰が利上げに耐えられるほどしっかりしてきているかどうかを見極める考えだ。