12月第4週(12/21〜12/27)(最高3つの*)
メインテーマ: | 「雇用、急激な悪化鮮明」 |
その他のテーマ: | 「月例報告、景気判断「悪化」に」 |
「デフレ、リターンズ?」 | |
「07年の一人当たりGDP,日本19位」 | |
「11月の鉱工業生産指数8.1%低下」 | |
「米金融危機、損失81兆円」 | |
「中国、5回目利下げ」 |
(1)月例報告、景気判断「悪化」に(12/22) ***
政府は、12月の月例経済報告で景気の基調判断を「悪化している」として、前月の「弱まっている」から下方修正した。「悪化」の判断をしたのは、02年2月以来だ。個別項目では、設備投資や生産、雇用など6項目の判断を引き下げた。先行きについても警戒感を示し、景気は「当面悪化が続くとみられる」と厳しい見方を示した。与謝野馨経済財政担当相は、景気について「上ぶれする状況は考えにくく、下ぶれの要素が懸念される状況だ」と述べた。
月例経済の基調判断を下げたのは、今年に入って七回目だ。アメリカで、ITバブルが崩壊した影響で景気後退に陥った01年に並んだ。
世界経済については「欧米に景気は後退し、アジアでも減速している」とし、4ヶ月連続で下方修正した。また、初めて、中国の景気を「減速」と指摘した。7〜9月期に日欧米が同時にマイナス成長に陥った世界的な景気後退が、成長を続けてきた新興国経済も下押ししている。
(1)デフレ、リターンズ?(12/22) **
半年前、原油は猛烈な勢いで、ほかの鉱物資源や食料も後を追うように高騰していた。生鮮食料品を除く消費者物価は、3月から15年ぶりの上げ幅になっていた。ユーロ圏は、5月の消費者物価上昇率がユーロ導入以来の最高の3.7%となり、7月に欧州中央銀行は利上げした。ロシア、ベトナムなど、インフレ率が二ケタの新興国、途上国も少なくなかった。
しかし、今や原油価格はピーク時の三分の一以下だ。真っ青になった石油輸出国機構(OPEC)の国々は、先週の臨時総会で大幅な減産を決めた。この一年の原油価格の値動きの激しさには、言葉を失うほどだ。
先進国では、戦後長らく物価は上昇が続き、デフレは死語になりかけていた。この常識が通らなくなったのは、日本の「失われた十年」あたりからだ。経済のグローバル化が加速し始めたころに重なる。
先月の消費者物価が大幅に下げたアメリカは、連邦準備制度理事会(FRB)がアメリカ史上初のゼロ金利政策に踏み切った。バーナンキ議長のデフレへの宣戦だ。元祖ゼロ金利の日銀も限りなくゼロ金利に回帰し、スイス中央銀行も一足先にゼロとなった。ゼロ金利仲間の広がりは、「世界デフレ」懸念の深まりを反映する。
古代メソポタニア以来の金利の歴史を追った『金利の歴史』(S.ホーナーほか著)という本がある。1963年の初版以来、記録に残る最低の長期金利は1619年にイタリアのジェノバでつけた年1.125%としてきたが、3年前の第四版で2003年の日本が取って代わった。約400年ぶりの異変といえる。
当分は世界デフレなのだろうか。グローバル市場化で、景況を映し物価が上にも下にも過敏すぎるほどに変動する世界になったのが本質ではないか。石油の埋蔵量が増えたわけでもなく、新興国が経済成長をあきらめるとは思えない。再び、インフレが回帰する時期が遠からず来るのではないか。
(1)07年の一人当たりGDP、日本19位(12/26) ***
日本の一人当たり国内総生産(GDP)が、07年に世界19位となり、先進7カ国で最下位となったことが、内閣府の07年度の国民経済計算で分かった。07年はユーロ高だったので欧州各国のGDPが膨らんだ一方、日本はデフレ脱却が遅れて成長率が伸び悩んだためだ。日本の家計の貯蓄率は、2.2%と過去最低になった。低成長で日本の経済競争力が落ちている。
07年の日本の名目GDPは、四兆三千八百五十億ドルだ。世界全体のGDPに占める割合は、24年ぶりに10%を割り込んだ06年の9.0%より0.9%下がり8.1%となった。アメリカに次ぎ世界二位は確保したものの、36年ぶりの低水準で、国際的な存在感の低下は鮮明だ。
一人当たり名目GDPは、三万四千三百二十六億ドルだ。順位を前年より一つ落とし、イタリアに抜かれた。イタリアがユーロ高であった一方、日本は実質成長率が2.4%だったが、デフレの影響で名目1.7%の低成長にとどまったことが背景だ。ただ、08年は大幅な円高になったため、日本の順位が再び上がる可能性がある。
家計の貯蓄率は、家計収入から税金や社会保険料を差引いた可処分所得のうち、消費に使わず残った割合だ。低所得の高齢者が増え、日本では低下傾向にある。
1 | ルクセンブルグ | 103,442 |
2 | ノルウェー | 82,549 |
3 | アイスランド | 64,141 |
4 | アイルランド | 59,874 |
5 | スイス | 56,821 |
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | ||
10 | イギリス | 46,121 |
11 | アメリカ | 45,489 |
16 | フランス | 40,738 |
17 | ドイツ | 40,311 |
18 | イタリア | 35,430 |
19 | 日本 | 34,326 |
20 | スペイン | 32,044 |
(1)11月の鉱工業生産8.1%低下(12/27) ***
経済産業省によると、11月の鉱工業生産指数(05年=100)は94.0となり、前月比8.1%低下した。二ヶ月連続の低下で、マイナス幅は統計上さかのぼれる1953年2月以降で最大だ。12月以降も生産の減少が続く見通しで、企業が戦後かつてないスピードで生産調整に向かっている。これまでの最大低下幅は2001年1月の4.3%で、これを大きく超えた。前年同月比は16.2%低下し、75年3月以来の大きな低下幅だ。
(1)雇用、急激な悪化鮮明(12/27) ***
厚生労働省によると、来春までに職を失う非正規労働者は八万五千人と前月調査の三倍近くまで急拡大した。全体の失業率や求人倍率も悪化し、雇用環境が一段と厳しさを増してきた。世界的な景気悪化で企業の生産活動には急ブレーキがかかり、上昇基調にある物価には歯止めがかかるが、一転してデフレ職が強まる見通しだ。後退局面に入った日本経済が、さらに冷え込む展開になってきた。
職を失う非正規労働者のうち、派遣労働者が67.4%、機関労働者を含む契約労働者が18.55、請負労働者が9.3%を占める。一方、来春に高校や大学を卒業する学生の採用内定取り消しは、172事業所、769人にのぼった。
また、同省が発表した11月の有効求人倍率(ハローワークで職を探している人一人当たり何件の求人があるかを示す指標)は、0.76倍と前月を0.04ポイント下回った。前月を下回るのは10ヶ月連続で、04年2月以来の低水準となる。1倍割れの道府県が41まで拡大した。そして、総務省が発表した11月の完全失業率は前月比0.2ポイント上昇の3.9%で3ヶ月ぶりの悪化となった。完全失業者数は、前年同月より10万人増の256万人だ。企業のリストラは正社員にも広がっており、失業率は一段と上昇する可能性が高い。
(1)米金融危機、損失81兆円(12/21) ***
金融危機によりアメリカの金融機関が処理を必要とする損失額は、全体で九千億ドル(約八十一兆円)を超す見通しが強まってきた。金融大手のクレディ・スイスが、11月資産別に推計した。同社によると、民間の自主的な増資額は二千百五十億ドルにとどまり、損失を埋め合わせるにはアメリカ政府が用意する七千億ドルの公的資金を全額注入しても足りない恐れがある。
最も多いのは、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)の関連で、三千九百七十五億ドルだ。二位となった一部の変動金利型の住宅ローンやサブプライムについで信用度が低いローンなどの千八百七十五億ドルを合わせると、損失全体の65%を住宅ローンの関連資産が占める。
クレディ・スイスは、損失の拡大に備えて、公的資金枠の第二弾が必要と見る。米自動車大手への支援を決めたこともあり、現状の七千億ドルの公的資金枠ですべてを賄うのは不可能な状況だ。
(1)中国、5回目利下げ(12/23) **
中国の中国人民銀行(中央銀行)は、商業銀行の基準金利を1年物で0.27%下げ、貸出金利を5.31%、預金金利を2.25%にすると発表した。利下げは、9月半ば以降5度目だ。急ピッチの利下げで景気を下支えし、09年も雇用維持に必要とされる8%成長の維持を目指す。
人民銀行は、市中銀行から吸い上げる資金量の比率を示す預金準備率も0.5%引き下げると発表した。9月半ばに6年7ヶ月ぶりに利下げを実施してから、貸出金利の下げ幅は累計2.16%となった。