12月第3週(12/14〜12/20)(最高3つの*)
メインテーマ: | 「日銀12月短観ー景況感、34年ぶり悪化幅」 |
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「日銀、0.2%下げる」 | |
「米、事実上ゼロ金利」 |
(1)日銀12月短観ー景況感、34年ぶり悪化幅(12/15) ***
日銀がは発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)がマイナス24となり、6年9ヶ月ぶりの低水準となった。9月の前回調査から21ポイント下がり、第一次石油危機直後の75年2月と並ぶ約34年ぶりの悪化幅となった。金融危機により企業の資金繰りが厳しくなっているほか、雇用や設備にも過剰感が広がっている。
企業の業況判断DIは、景況感が良いと答えた企業の割合から、悪いと答えた企業の割合を引いた値である。大企業製造業のDIの悪化は、五・四半期連続だ。低下幅は、石油危機当時の74年8月の26ポイントに次ぐ、過去二番目の大きさとなった。日銀は、18,19日に金融政策決定会合を開くが、利下げや資金供給などの追加策が必要との声が強まる可能性がある。
三ヶ月先の見通しについても、大企業製造業全体は、マイナス36と12ポイント低下する。 大企業非製造業は、マイナス9と前回調査から10ポイント下がった。指数がマイナスに転じるのは、5年ぶりだ。個人消費の不振で、小売りや飲食店・宿泊などが大きく悪化した。中小企業はさらに厳しく、製造業、非製造業とも、マイナス29に落ち込んだ。
企業収益の悪化も鮮明になってきた。大企業製造業の08年度売上高見通しは、前年度比0.9%増にとどまり、輸出は1.5%減とITバブルが崩壊した01年度以来、7年ぶりのマイナスを見込む。ただし、この想定為替相場は、1ドル=101円である。現在はより円高になっており、下ぶれリスクは必然的だ。
金融危機を受け、資金繰りもきつくなっている。金融機関の大企業向けの貸し出し態度は、厳しいとの回答が増え、指数は9年6ヶ月ぶりにマイナスとなった。投資家のリスク回避姿勢も強まっており、コマーシャルペーパー(CP)の発行環境も厳しいとの回答が増えている。
大企業 | 製造業 | −24(−21) |
非製造業 | −9(−10) | |
中堅企業 | 製造業 | −24(−16) |
非製造業 | −21(−9) | |
中小企業 | 製造業 | −29(−12) |
非製造業 | −29(−5) |
(1)「埋蔵金」依存10兆円(12/16) **
政府の08年度第二次補正予算案から10年度予算までの間に、特別会計の剰余金などいわゆる「埋蔵金」に依存する財源が10兆円規模に達することが明らかとなった。定額給付金や国庫負担の財源など、使い道が拡大している。税収不足の穴埋めに、特会の蓄えを取り崩す異例の予算編成となる。
財源の大半は、財政投融資特別会計が金利変動に備えて積み立てている資金を使う。財投特会は、法律上政策経費には使えないため、これまで転用したことはない。財務省は第二次補正予算案に併せて、財投特会の使い道を変更できる特例法案を国会に提出する。
今年度の国債償還に回すはずだった財投特会の余剰資金2.6兆円を,急きょ08年度の第二次補正向けに転用することを決めた。さらに、来年度の同特会の運用益3兆円を当て込んで、積立金から1〜2兆円を取り崩す。
来年度予算編成でも、埋蔵金を活用する。基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げるには、2.5兆円が必要だ。安定財源がないため、少なくとも09,10両年度はつなぎの財源として、財投特会の資金を使う。麻生太郎首相が先週発表した1兆円の「緊急経済対策」や、1兆円規模の地方交付税増額などにも、同特会の積立金を充てる方向で調整が進んでいる。財務省は同特会の資金流用に反対していたが、麻生政権の発足後、与党の歳出増圧力に耐えかねて同省も埋蔵金の容認へ舵を切り、なし崩し的に使途が広がった。
注:「埋蔵金」
明確な定義はないが、主に国の特別会計の積立金や剰余金のことをさす。しくみが複雑で議会のチェックが行き届きにくいことから「不必要な資金をため込んでいる」との指摘を受けている。10兆円規模の積立金を持つ財政投融資特会や外国為替資金特会が代表例だ。
(1)日銀、0.2%利下げ(12/19) ***
日銀は、金融政策決定会合で、政策金利を年0.3%から0.1%に引き下げることを決めた。利下げは、2ヶ月ぶりである。同時に、コマーシャルペーパー(CP)の買い取りや長期国債の買い入れ増額など、資金供給拡充策も決めた。アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が、事実上のゼロ金利に踏み込んだことも、日銀の決断を後押ししたと見られる。
利下げと同時に、日銀が担保の範囲で自由に貸し出す「補完貸付制度」の適用金利を0.3%に引き下げ、民間銀行が日銀に開く当座預金につける金利は0.1%とした。
日銀は、景気については「悪化している」との認識を示し、従来の「停滞色が強まっている」との判断を下方修正した。先行きも「当面厳しさを増す可能性がある」と警戒を強めた。
企業の資金繰り不安を抑えるため、追加的な資金供給策も決定した。企業が短期資金の調達に使うCPの買い取りを時限的に実施するほか、長期国債の買い入れ額を月1兆2,000億円から1兆4,000億円に増やす。金融機関に、潤沢に資金供給を増やす仕組みだ。
日銀が、15日に発表した企業短期経済観測調査(短観)で、企業の景況感が大幅に悪化した。そして、16日にはFRBが政策金利を0〜0.25%に引き下げると共に、量的緩和策の採用と異例の政策に踏み出した。 日米の政策金利が16年ぶりに逆転したのを受け、円高・ドル安が進み、約13年ぶりに1ドル=87円台をつけた。金利据え置きのままでは、日本経済への向かい風がさらに強まり、株価の重しとなっていた。
(1)米、事実上ゼロ金利(12/17) ***
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、連邦公開市場委員会(FOMC)で、最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、現在の年1.0%から大幅に引き下げ、年0.0〜0.25%にすることを全会一致で決定し、即日実施した。アメリカとして史上初のゼロ金利政策に踏み込む。同時に、長期国債の買い入れ検討も表明した。市場への資金供給量の拡大を金融政策の柱とする量的緩和の導入を正式に決めた。予想以上の金融緩和策の決定を受け、ニューヨーク株式市場では株価が大幅反発した。日米金利の逆転を受け、円相場は一時1ドル=88円63戦まで上昇した。
金融不安と景気後退が連鎖するグローバル危機の克服に向け、アメリカ金融政策は未踏の領域に入った。FF金利の誘導目標は,日銀の政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標(年0.3%前後)を下回った。日米の政策金利の逆転は、約16年ぶりだ。FRBがFF金利の誘導目標に幅を持たせたのは、始めてである。ゼロ金利が近づき、FF金利を一定水準に厳密に日々誘導するのが困難になったと見られる。
量的緩和の手段としては、FRBは、今後数四半期にわたり、多額の政府機関債や住宅ローン担保証券(MBS)を購入すると説明した。また、状況に応じ、さらに拡大する用意があると強調した。住宅ローンの供給を促し、景気後退の震源である住宅市場のテコ入れを目指す。
FOMCの声明では、長期国債の買い入れについても、本格的に視野に入れていることを明らかにした。これは、長期金利の低下要因となる。また、来年始めから自動車ローンや中小企業向けローンなどを裏づけとする資産担保証券(ABS)を担保とする融資を始めることも改めて表明した。金融機関が融資に慎重となる信用収縮対策として、家計や中小企業の資金調達を支援する方針も盛り込んだ。
FRBの利下げは、昨年9月以降10回目だ。民間金融機関向けの貸出金利の公定歩合は、0.75%下げ、年0.5%とした。