8月第3週(8/17〜8/23)(最高3つの*)

メインテーマ: 「非正社員雇用、頭打ち鮮明」
その他のテーマ: 「日銀「景気停滞」に下方修正」
「主要製造業、4〜6月に新興国で23%稼ぐ」
「国の債務超過277兆円」
「7月貿易統計ー中国最大の輸出先に」

[景気動向]

(1)日銀「景気停滞」に下方修正(8/18) ***

 日本銀行が、19日の金融政策決定会合で、景気判断を下方修正し、政府の8月の月例経済報告に続いて日本経済が景気後退局面にあることを事実上認めた。景気悪化と物価上昇の二つのリスクを前に、金融政策は身動きがとれない状況が当面続きそうだ。

 日銀は景気判断を前月の「さらに減速」から「停滞している」に下方修正した。日銀が景気判断で「停滞」という表現を使ったのは,景気後退局面にあった97〜98年以来10年ぶりである。

 足元の景気判断を下方修正する一方で、先行きについては緩やかな成長経路に戻るとの見通しを基本的に維持した。

 上昇傾向を強めている消費者物価については、「今後は2%台で推移するとの見通しがある。従来はなかったことで、注意が必要だ」と引き続き注視する考えを示した。最近の原油価格の下落については、「経済、物価にどのような影響を及ぼすか考えてみる必要がある」と述べた。

 アメリカのサブプライム問題の表面化から一年が過ぎたことについては、「少しずつ問題の性格が変わってきている」とする。日銀総裁は、昨夏の問題発生当初は、証券化商品の価格下落に伴う流動性危機が問題だったとの認識を示した。その上で、最近は、商業用不動産の下落や消費者ローンの延滞率が上昇するなど、金融システムと実体経済のマイナスの相互作用が懸念されると指摘した。


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[企業部門]

(1)主要製造業、4〜6月新興国で23%稼ぐ(8/18) **

 08年4〜6月期に、わが国の主要製造業が中国など新興国(日米欧以外のアジアや、その他の地域)で利益全体の23%を稼ぎ、米欧の合計19%を逆転したことがわかった(海外全体で41.6%)。かつてはアメリカ市場が柱だったが、中国などに積極的投資した結果、新興国の利益割合は4年足らずでほぼ2倍になった。米欧で景気減速が強まっていることも一因だ。今後は、新興国での経営が一段と重要になる。

 これは、株式時価総額の大きい50社(営業利益は08年3月期の東証一部上場企業全体(金融を除く)の29%)が開示した地域別営業利益から分析した。新興国は、日本や欧米より経済成長スピードが速く、利益割合は上昇を続けてきた。

 ただ、日本の上場企業は、09年3月期に7期ぶりに経常減益となる見通しだ。欧米事業の不振が鮮明なだけに、今後は新興国戦略が収益力を左右しそうだ。


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[財政]

(1)国の債務超過277兆円(8/23) ***

 財務省は、06年度の国の資産と負債の状況を示した貸借対照表を発表した。一般会計と特別会計を合わせて計算した場合、負債が資産を277兆円上回る債務超過である。国債発行残高の増加などで、債務超過は05年比3兆円悪化した。財政再建による借金の抑制と保有資産売却などの債務超過圧縮が急務である。

 06年度の超過額が増えたのは、財政投融資改革により、財務省が資金運用のために政策金融機関や独立行政法人に貸し付ける額が29兆円減ったが、負債は3,000億円増えたためだ。郵貯による預託金(負債)が30兆円ほど減ったが、国債などの発行残高がそれを上回って増加したためだ。財務省は、国が厳しい財政状況にあることを強調し、消費税率の引き上げなどで国債発行を抑えて財政再建を推し進めたい考えだ。しかし、それだけでは十分ではない。

 日本は、政府が所有する金融資産の規模が他の先進国と比べ高水準にある。独立行政法人への貸付金だけで217兆円、出資金も65兆円に上る。民間の経済活動を阻害する要因となっているとの指摘も多い。このため、増税の前に徹底した政府のスリム化を主張する自民党の中川秀直元幹事長らの「上げ潮派」のなかには、国有財産の売却加速や貸付金の証券化、さらに出資金の大幅な圧縮を求める声が根強い。支出を抑制して国債増発など債務の膨張にブレーキをかけなければ、財政再建は一段と遠のく。


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[雇用情勢]

(1)非正社員雇用、頭打ち鮮明(8/21) ***

 拡大が続いてきた派遣人材、パート、アルバイトなど非正社員の雇用に頭打ち感が出てきた。パートも有効求人倍率が6年ぶりの水準に低下し、人材派遣の実稼動者数の伸びも急速に鈍化している。景気後退のなかで、企業は中長期的な人材確保のための正社員採用には積極的な姿勢を維持しているが、当面のコスト低下のために非正社員については絞り込む傾向を強めている。

 6月の完全失業率が4.1%と06年9月以来の高水準になるなど、雇用情勢は悪化し始めている。その詳細を見ると、企業が短期契約の働き手を中心に、雇用を絞り込んでいることがわかる。総務省によると、正社員などの常用雇用が、6月まで3年4ヶ月連続で前年同月実績を上回る一方、日雇いを除く1年以内の有期雇用を示す臨時雇用は、6ヶ月連続でマイナスになった。これは、経営環境の急速な悪化への対応である。昨年10月まで1.4倍台を維持していたパートの有効求人倍率は、この6月に1.25倍へと低下した。依然、求職者を上回る求人があるが、倍率は約6年ぶりの低さとなった。

 固定費の増加を避けたい企業の需要拡大で急成長を続けてきた人材派遣業界は、転機を迎えている。業界最大手のパソナグループは、稼動者数(1ヶ月以上の契約)が08年3〜5月期まで二・四半期連続で前年同期実績を割り込んだ。金融や製造業などで事務系の派遣人員を抑える動きが広がっている。

 企業は中長期をにらんだ人材確保のため、新卒の正社員採用については今のところ増勢を保っている。一方、契約社員やパートなど非正社員雇用については、パートも待遇改善を目指す改正パートタイム労働法の施行や、日雇い派遣の原則禁止といった規制強化の動きも今後の重しとなる。規制を強めすぎれば、長い目で見た雇用全体のパイ縮小を招きかねないと懸念する声もある。

 国内全体の雇用者数に占めるパートなどの非正規雇用の比率は、90年代からほぼ一貫して上昇している。07年には33.5%にまで高まったが、今後はこれが頭打ちになるとの見方も出てきた。


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[国際収支]

(1)7月貿易統計ー中国、最大の輸出先に(8/22) **

 財務省の7月の貿易統計速報では、対中輸出額がアメリカ向けを戦後初めて上回り、中国が日本にとり最大の輸出相手国となった。対中輸出額は、10年前に比べ5倍に拡大しており、二ケタ経済を続ける中国が日本経済の支え役となっている。ただ、北京オリンピック後の中国経済は不透明であり、中国頼みにはリスクも潜んでいる。

 7月の中国向け輸出額は前年同月比16.8%増の1兆2,864億円で、10年前に比べ5.4倍に拡大した。一方、7月のアメリカ向け輸出額は同11.5%減で、中国向けを約100億円下回った。

 中国向け輸出品目は、10年で大きく変わった。繊維製品などの軽工業から、電子部品などの高付加価値の製造業へとシフトが進んでいる。

 今後、人民元が切り上がり、名目賃金も上昇すれば、中国の日本製品に対する購買力はさらに上昇し、輸出は増えると見込まれる。


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