8月第2週(8/3〜8/9)(最高3つの*)

メインテーマ: 「8月月例報告、景気後退事実上認める」
その他のテーマ: 「政府の月例報告、景気判断弱含みに」
「中国、融資規制を緩和、景気に軸足」
「ポーランド、外資誘致で高成長、中東欧で存在感大きく」

[景気動向]

(1)政府の月例報告、景気判断弱含みに(8/5) **

 内閣府は、8月の月例報告で景気の基調判断を「景気はこのところ弱含んでいる」とする方向で、関係省庁と調整に入った。回復の表現を4年8ヶ月ぶりに削除し景気が後退局面に入った可能性があるとの認識をにじませる。02年2月からの戦後最長の景気回復が終った公算が大きいことを示すもので、政府は景気対策を迫られそうだ。

 景気は、アメリカ経済の減速と原油高により減速し、政府は3月の月例報告で景気が足踏みする踊り場に入ったと判断していた。与謝野経済財政担当相は「昨年暮れから景気後退が始まっていた可能性がある」と指摘しており、民間でも後退局面に入ったとみるエコノミストが増えている。

 政府は、8月の月例報告を、7月の「回復は足踏み状態にあるが、このところ一部に弱い動きが見られる」を下方修正し、「弱含み」と明記する方向で調整する意向だ。「弱含み」の表現は、景気が後退局面にあった01年5月以来、7年3ヶ月ぶりだ。


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(2)8月月例報告、景気後退事実上認める(8/8)***

 政府は、景気の基調判断を「このところ弱含んでいる」とした8月の月例経済報告を決定した。生産や輸出が減少しているのを受け、4年8ヶ月ぶりに回復の表現をなくした。与謝野経済財政担当相は、「後退という言葉は使わないが、弱含みとは日本経済が楽観できない状況に入りつつあることを表現したものだ」と述べ、事実上景気が後退局面入りしたと認めた。アメリカ発の信用不安を背景とする世界的な景気減速を受け、外需に依存する成長を続けてきた日本経済は曲がり角を迎えた。

[8月の月例経済報告で判断を下方修正した項目]
8月 7月
基調判断 景気はこのところ
弱含んでいる
景気回復は足踏み状態にあるが、
このところ一部に弱い動き
輸出 弱含んでいる このところ弱含んでいる
生産 緩やかに減少 このところ弱含んでいる
雇用 厳しさが残る中で
このところ弱含んでいる
厳しさが残る中で
改善に足踏み


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[中国経済]

(1)中国、融資規制を緩和、景気に軸足(8/7)**

 中国政府は、北京五輪後の景気の下ぶれを防ぐため、金融引き締め政策の修正に乗り出した。中国人民銀行(中央銀行)は、昨年秋に強化した銀行融資の総量規制を緩和し、輸出低迷で苦境に立つ企業を支援する。中国政府は、これまでインフレ抑制のため金融引き締めを強化する一方、公共事業の拡大など財政を通じて成長維持を目指してきた。景気重視に軸足を移すことで、インフレ加速を懸念する声も歩出ている。

 中国人民銀行は、昨年10月以来外資系を含む国内の銀行に「窓口指導」と呼ばれる行政指導を通じ、融資残高を一定の枠内に抑えるよう指導してきた。融資の急増により、不動産市場のバブル懸念などの問題が生じてきたためだ。しかし、人民銀は、7月下旬から融資枠の増額に転じた模様である。これは、中小企業を支援するのが狙いで、全国に支店を持つ銀行は5%、中小企業向けの融資が多い地方銀行は10%の融資枠拡大を認める方針だ。沿海部の輸出企業の経営は急速に悪化しており、政権にはこうした企業への支援策を求める圧力が高まっていた。

 今回の融資規制緩和は、金融面での初の支援策となる。ただ、消費者物価は依然高水準である。引き締めの手綱を緩めれば、インフレを制御できなくなるとの懸念も根強い。


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[中東欧経済]

(1)ポーランド、外資誘致で高成長、中東欧で存在感大きく(8/7)***

 ポーランドの直接投資の受入額は、05年までチェコ,ハンガリーと互角だったが、06年以降はポーランドの優位が目立つ。昨年は128億ユーロ(約2兆2千億円)と、チェコ、ハンガリーの2〜3倍を記録した。

 ポーランドの名目国内総生産(GDP)は、欧州連合(EU)に新規加盟した12カ国全体の四割弱を占める。

 人口も4千万人弱と最多で、その存在感は大きい。

 個人消費や外資導入などをテコに、過去2年6%台の成長を記録したポーランドだが、課題もある。強みの労働力は一部で不足が指摘される。賃金も上がり、インフレ率もじりじりと上昇中だ。

 昨年10月に、自由主義経済を掲げる「市民プラットフォーム」が政権を奪取してから、通貨ズロチは上昇基調を強めている。首相は「信任が高まった証」と歓迎するが、中銀は輸出への影響を警戒し始めた。1989年の民主化後にハイパーインフレーションを体験した反省から、物価安定を最重視する中銀が引き締めを強めれば、投資や個人消費に悪影響が出る可能性が高い。

[4〜6月期のGDP速報値](単位:億ドル、%)
金額 増減率(前期比)
国内総生産(GDP) 117,006 1.9
個人消費支出 83,475 1.5
民間設備投資 14,313 2.3
民間住宅投資 3,671 −15.6
民間在庫投資 −622
純輸出 −3,592
輸出 15,341 9.2
輸入 19,292 −6.6
政府支出 20,563 3.4
GDPデフレーター 1.1

 アメリカ経済は、サブプライムローン問題により厳しさを増したが、実質GDPは1〜3月が0.9%、4〜6月が1.9%と何とかプラス成長を維持している。最大の押し上げ役を果たしているのは、輸出だ。政府 支出も堅調だ。輸出から輸入を差し引いた外需と、政府支出の寄与度を合わせると、1〜3月は1.15%、 4〜6月は3.09%に達し、成長率の大半を稼いでいることがはっきりと浮かび上がる。しかし、裏返せば 民間の内需不振は深刻だ。約12兆ドルのアメリカのGDPのうち、約8兆ドルを占める個人消費の寄与度が 2%を超したのは、昨年1〜3月にまでさかのぼる。成長率に対して、1年以上1%前後の低い貢献が続い ている。

 住宅投資は、減少局面に入った06年初めの時点で約6,000億ドルの規模があった。四半期で2桁減を繰り返し、4〜6月期には3,671億ドルと約4割も減少した。さらに、大幅な値下がりが続き、市況は回復していない。住宅の値下がりは、ローンと引き換えに物件を担保に取っている金融機関の不良債権を膨らませる。今後も、200万人が直面すると予想される差し押さえは、個人の生活を破綻に追い込むだけでなく、地域経済にも深い傷跡を残す。

 アメリカ住宅公社の経営不安など市場の動揺が続き、連邦準備制度理事会(FRB)は、3月に緊急措置として始めた資金供給策を来年1月まで延長する。インフレ圧力が根強い反面、景気の足腰が弱いままなら金融の急速な引き締めにも動きにくい状況だ。


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[WTOとFTA]

(1)WTO閣僚会議決裂−保護主義の恐れも(7/30)***

 農業と鉱工業の貿易自由化ルールを決める世界貿易機関(WTO)閣僚会議が決裂した。大筋合意目前でアメリカとインドの対立が深刻になり、ついに時間切れとなった。中印などの新興国の台頭で、WTO交渉の力学も変わり、合意形成も難しさを増してきた。WTO交渉の漂流で、世界の自由貿易推進の気運もしぼむ恐れが出てきた。

 30日未明、日本の財務省にもジュネーブから交渉決裂の一報が入った。世界経済が減速するなかで、各国で保護主義機運が強まっている。交渉妥結は、保護主義を抑える効果が期待されたが、ジュネーブに集った閣僚たちはそれに失敗した。土壇場で決裂するきっかけとなったのが、アメリカとインドの根深い対立だ。

 争点は、関税削減で輸入が急激に増えた場合、農産品の関税率を引き上げられる特別セーフガード(緊急輸入制限)の扱いだ。インドのナート商工相は、議長調停案で「基準輸入量の140%に達した場合」という発動用件を事実上撤廃し、途上国や新興国の判断で実施できるようにすることなどを求めた。交渉筋によると、アメリカのシュワブ代表は,インドの主張を踏まえた調停案の修正を拒否した。これにより、交渉は決裂に向かった。

 今回の交渉で、アメリカは台頭著しいインド、中国に強硬姿勢で臨んだ。アメリカ交渉団は中印を名指しで批判し、鉱工業品の市場開放で中印に一段の市場開放を迫った。アメリカは、議長提案では分野別関税撤廃は二分野だけでしかも任意となっているだけに、化学や工作機械などアメリカが自由化を期待する分野について,中印の関税撤廃が確実になるように、調停案の書き換えを主張した。中国交渉団は、即座に反発した。アメリカの農業の補助金問題を突き、追加削減を要求した。しかし、実際には食料価格の高騰もあって07年の補助金は、調停案の145億ドル以下の約80億ドルにとどまる。新興国は、アメリカに緊急輸入制限の緩和に加え、補助金の追加削減を求めたが、アメリカは拒否した。


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